第19話 疑惑そして葬儀
場所はシンバーン国。
ジルアートは書状を直ぐに開いて口から笑みをこぼす。
これで一つ肩の荷が降りたとの事からの安心からだ。
そしてジルアートは第2皇子のクリフへと直ぐに婚姻の事を伝える。
クリフはジルアートの言葉を聞き頷いた。
「それではジルアートよ抜かりなく婚姻の準備をせよ」
「はい、かしこまりました」
これでシンバーン国第2皇子クリフとライラ国第1王女アリシアの婚姻が決定したことになる。
クリフはジルアートが部屋を出て行った後笑顔が止まらなかった。
また新しいおもちゃを買ってもらった子供の様に。
ジルアートにも安定の日々が戻ってきた。
王子の婚姻も決まり国の経済は安定をしており、現在主だった
そんなジルアートの
それはライラ国より早馬にて書状が届いた事からだった。
ジルアートは最初婚姻の日取りの調整の手紙とかなと推測し、ゆったりと自らの書斎に座りお茶を飲みながら
「アリシア王女が死んだだと!」
ジルアートは手紙の内容をざっと速読し直ぐにクリフ王子への部屋へと
そして本来扉をノックして了解を得てから部屋に入出するのが礼儀だが、ジルアートはそれさえも忘れて扉を開けはなった。
クリフはいつものように半裸状態の
そして突然扉を開け入って来たジルアートを見るなり叫んだ。
「ジルアート!礼儀をわすれたか!」
ジルアートはそこで我に返り直ぐに頭を下げて謝罪した。
「申し訳ございません。緊急事態ゆえに我を忘れてしまいました」
クリフはジルアートのこのような
「もう、良い。で、何事だジルアート」
ジルアートはクリフの許しが出た事で頭を上げ直ぐに現状を伝えた。
「はい、今ライラ国より早馬にて書状が届きまして、あっアリシア王女が亡くなったとの事です」
クリフも流石にこの一声にはビックリして目を大きく開き言葉を発した。
「どっどうゆう事だ!」
「はっはい」
ジルアートは書状を見ながらクリフへと説明した。説明を聞くや否やクリフは叫んだ。
「緊急で王族会議を招集しろ!それと書状だと今日がアリシア王女の葬儀となっているだな!」
「はっはい」
「直ぐに文官達と密偵部隊をライラ国へと派遣しろ!」
「はい、直ぐに!」
ジルアートはクリフに頭を下げるのも忘れて部屋から飛び出て行った。
クリフはジルアートが出て行った後椅子にゆっくりと座り思考の海に入った。
『いったいライラ国で何が起こっているのかと』
それから1時間と経たない内に王族会議が招集された。その日は運がよく王、王妃、第1皇子の兄のジョンが城に居たからだ。
第1皇子にして継承権第一位のジョン・シンバーンはクリフと違い冷静沈着で基本的に争い事を好まない男だ。容姿も体形も特に非出る事はないが、逆にそれがジョンを引き立てている。当然二人の婚約者がいる。
「それではライラ国より届いた書状についての王族会議を始めます」
「書状によりますと今から3日前に王女一行はラーラの街へ魔物討伐へと遠征したそうです。そこで護衛達の不手際があり王女が魔物に襲われ命を失う事故が発生したそうです。騎士2名は事の詳細を聞き事件発生後2日目、昨日に城内で処刑が行われたとの事。そして今日ライラ国王城墓地にて葬儀が行われるとの事です」
ジルアートの説明が終わると同時にクリフが声を上げた。
「これは不自然過ぎる!婚姻が決まってから魔物討伐など普通あり得ない!」
これは真っ当な意見である。普通は婚姻準備を
「確かに何か事情があっただろうか、その点についてはどうだ?ジルアート」
兄のジョンが分析をするようにジルアートに問う。
「申し訳ございません。まだそこまでの情報は入っておらず、先ほど今日の葬儀に文官5名とライラ国及びアリシア王女が死亡したとされている、ラーラの街へ密偵部隊を派遣した所です」
「なら、その密偵部隊の情報を待ってからではいいんじゃないか?」
ジョンはゆったりと席の背もたれにもたれながら発言する。
「兄上は甘すぎます!これはライラ国の策略です!すぐに近隣のラファエルを抑えるべきです!」
クリフの言葉に王は眉毛をピクリと動かし背もたれより背を起こした。
これは王が発言すると言う仕草の為、皆王へと視線を集める。
「クリフはアリシア王女が生きていると思っているのだな」
「はい、父上。これはあまりにも茶番が過ぎています。王族による魔物討伐はなくはありません。しかし、一国の王女が出るのに護衛が騎士2名とはあまりにも手薄すぎます」
「確かにクリフの言う事は一理あるな」
そこで一旦沈黙がおと連れた後、王妃が珍しく口を開いた。
「それじゃあ、アリシア王女は何処へいったのでしょうね」
王妃の言葉でピンと来たのか王が命ずる。
「ジルアートよ地図を持ってこい」
「はい、直ちに」
ジルアートはこうなるであろうと思い用意してあった地図を机の上に広げる。
ただ、地図といっても都市のおおまかな位置と道そして大森林が描いてある簡易的な物だ。
地図を皆で見ながら王が口を開いた。
「クリフの予想もまんざら外れていないかもしれんな」
「どうゆう事でしょう父上」
兄のジョンが王に質問する。
「私が策士なら王女を国外に逃がす為に王女死亡説をでっち上げ、大森林を通りグラン王国のキールへ行きそこからラファエルで飛ばせる」
「でも、どうしてそこまで婚姻を断る理由を作るのですか?」
兄のジョンが不思議に思い言葉を発する。
そこで王は険しい顔をし口を開く。
「人質をとられたくない理由があるからか?」
「ちっ父上、なればライラ国は我が国へ向けて進攻すると言うのですか!?」
「落ち着けジョン、これはあくまでも仮説だ。でなければ婚姻を破断にする理由がないだろう」
王とジョンはラルフ王子の周りに対する悪態を特には疑問視していなかったからの発言だ。
しかし王妃だけは。もしかしたらラルフの…とそこまで考えたが、あえて口に出す事はないと沈黙を守った。
そして王は決断した。
「王女アリシアが生きている可能性がある以上、我が国及びグラン王国の首都とキールの街にあるラファエルを監視せよ。あとライラ国進攻がないとは言えぬ、防衛体制を強化せよ」
王の言葉で王会議は決した。
王の言葉を聞いた
*
場所は変わってライラ国の墓地。
ここは王族のみが眠っている王族専用の墓地。そこでアリシア王女の葬儀が
墓地の周りにはライラ国の目印となるライラの国旗が何十本とかかげられていた。国旗の模様は英雄ライラが好んだとされる葉っぱの模様。現代でいうとカナダの国旗によくにている形だ。
葬儀の服装は王族平民特に決まりはないが、服の上から両肩に長い黒帯を垂らすのがしきたりとされている。
一つの墓地の前にライラ国の王や王妃そして国の重鎮が整列し、その後方にシンバーン国より派遣された文官達が並ぶ。
「ここにアリシア・ライラが安らかに眠る事を望む」
大神官が述べると同時に鐘が鳴らされる。
この鐘は通常、
それと同時に棺にゆっくりと上から土が掛けられていき、ある程度土が入れらえた所で葬儀は終了となる。
国葬なのだがとても簡素な葬儀がここに終了する。
王と王妃葬儀の後、シンバーン国より葬儀に参列した文官達と席を共にしていた。
文官達からは王と王妃をいたわる言葉を受けていた。
そして王はゆっくりと口を開いた。
「この度のアリシアの死は私達にも責任がある。魔物を軽く見余っていたからの事故だった。アリシアは定期的にラーラの街で魔物討伐を行っていた。当然今回も同様だとおもったのだが…」
王がここまで話すと隣の王妃は
王は心の中でお前のは演技か本当かわからにくらいだと、いつもの王妃の行動を少し思い出す。
文官達はなんとも言えない雰囲気の中、王が話した言葉を一語一句記憶しようと集中している。
この葬儀が本当かどうかを見極める事も含めて。
シンバーン国より来た文官達は王と王妃の謁見を終えた後、実働部隊である
一応、話のつじつまは合っている。が、どうも喉の奥に骨が引っ掛かったような感じがした。だが、文官達にそれ以上に出来る事がないため、早々にライラ国を後にし残りは隠密部隊に任せることにした。
文官達はシンバーン国に帰国後、葬儀の詳細や王の言葉などを細かく
一方、ラルフ第2皇子はイライラを募らせていた。
王子にとって買ってもらったおもちゃを取り上げられた心境になっていたからだ。正直言えば同じようなおもちゃなら直ぐに手には入る。しかし、一度決まったならやはり”手にしたい”と言うのが心情だからだ。ラルフはどうにか自分の手ゴマでアリシアを見つけられないかと思考したが、逃げた先が
シンバーン国が放った密偵部隊は主にラーラの街で情報収集を行っていた。ラーラの街の住人に3日前にあったアリシア王女死亡時の状況確認が主な任務となっていた。そこで一つの奇妙な事が起こった。
何か爆発音が起きたと思ったら王女が魔物により傷つき死亡したとの流れになった。情報部隊はその爆発についていろいろ調べたが地面に痕跡はなかった。そして死亡した王女の顔は見えなかったとの話も上がっていた。それは二つの仮説を立てる事が出来る。王女自ら魔法を放とうとしたがミスをして自分の顔で爆発した。もしくは刺客に殺された事になる。魔物は自らの体の一部を飛ばす事はあるが魔法攻撃をしてきたとの報告は一度も受けていないからだ。
密偵部隊はこの情報で十分だと確信し急ぎシンバーン国へ帰国した。
そしてこの事をラルフ王子に伝えると再度、王族会議が招集された。
「密偵部隊から上がってきた報告をお伝えします」
ジルアートは詳細を王族の皆に説明した。
「なるほどな、ラルフの言う通り茶番が行われたと言う事だな」
王はジルアートの報告の後にそんな言葉を発した。
「父上それでどうされますか?」
兄のジョンが王に問う。
「まずはアリシア王女を
王の言葉で王会議は決した。
*
場所は
ルイとはぐれてから9日なんとか魔物を
しかし前日から黒い蔭が二人の周りをうろついていた。
アリシアとシーアは知らない間にキラードックの縄張りを侵食していた。
キラードックは大型の黒犬で鼻の先から細長い鋭い角が生えている魔物で、本来この魔物は縄張りなどを持たない。しかし、繁殖期になると何処からか集まって来て群れを形成する。そして、その縄張り内に入った者を攻撃する習性を持っている。冒険者からはキラードックの群れが大型のハンティングベアを襲っているなどの逸話もある。
そして今日を乗り切れば
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