第6話 冒険者ギルド『ライド・ドール』
俺は地球より異世界へと舞い戻ってきた。
黒い壁から出て来た俺は周りを確認してホットしていた。
最初出て来所は大きなアリの巣のような場所だっからだ。
だが今回は少しだけ見覚えのある建物が目の前にあったからだ。
たぶんここは『ライラの宿屋』の裏方向にある路地だと思われる。
ここの場所には入ったことなかったが、たぶん間違いはないだろうと思い表通りへと足を運んだ。
俺の予想通りの場所で目の前に『ライラの宿屋』があった。
空を見るとまだ日が昇ったばかりなのか鐘の音がしていないので正確な時間はわからないが、気温がそれほど高くないので朝だと思われる。
俺はそのまま『ライラの宿屋』へと入っていった。
宿屋へと入ると偶然にもそこには宿屋の女将が居た。
俺の顔を見るなり声を掛けて来た。
「あら、久しぶりだね。元気だったかい?」
はて?少し前に出て行って地球で15分程度しか経っていないが…。
俺は女将に依頼してあった俺が出て行ってからの日にちを聞く事にした。
「ああ元気だよ。それで俺が出て行ってからどの位の日にちがたった?」
「え~と、ちょっとまっておくれよ。毎日石を置いて数えたからね」
女将はそそくさと厨房の方へ入って行って、そして直ぐに俺の元へ戻ってきた。
「きょうで7日目だよ。偉いだろ、ちゃんと数えたんだから」
俺は少し驚いた。
15分で7日も過ぎたのだと。
俺は直ぐに忘れない内に女将にお礼の金銭を払い話を続けた。
「突然だけど実は冒険者になろうと思っているんだけど、女将の知り合いにそんな人はいる?」
女将は俺の唐突の質問に少し驚いたようだが答えを返してきた。
「それなら私の姉の子供が受付をやっている冒険者ギルドに行ってみてはどうかね」
俺はダメ元で言って見るもんだなと苦笑いをした。
「それはここから近い?」
「ああ、歩いてすぐだよ。後、紹介してやったんだか他のギルドに浮気するんじゃないよ」
「他のギルド?」
「なんだ、知らないのかい?この街には5つ程のギルドがあるんだけど、ギルドどうしで売り上げを競っているんだとよ。元締めは同じオーナーなのに変な事をさせてるだろ?まあ、それは置いといて。受付の子の名前はリンカだよ。金色の髪の毛が目印だよ」
そう言うと女将は自分のふんわりとした金色の髪の毛を持ち上げていた。
俺は女将にお礼を言い又来ると言い残して宿屋をあとにした。
冒険者ギルド『ライド・ドール』
建物は洋風な二階建ての建物でかなり大きい。
隣の建物の2倍はある大きさだ。
イメージとしては教会のようなイメージだ。
俺はここでお約束の出来事が起こるんではないだろうかと少し身構える。
よくあるファンタジー小説ではギルドに入るとワイルドな男に絡まれてひと悶着あると言う流れがあるからだ。
俺は少しドキドキしながら冒険者ギルドの扉を開けた。
正面には受付カウンターが4つ程あり、右側は食事とか
人はまばらでそしてワイルドな冒険者に囲まれる事もなかった。
まあ、あんなテンプレはそうは起きないと。
俺は宿屋の女将と同じような金髪の女の子を探した。
そしてそのリンカと言う女性は直ぐに見つかった。
ちょうどそのカウンターに誰も居なかったので俺はそのカウンターで声を掛けた。
「リンカさんですか?」
俺の声を聞いたリンカと思われる女性は俺の顔をキッ!と睨み不機嫌な様子で答えた。
「だったら何?誰かに言われてここに来たの?デートのお誘いなら何回も断ってるんだけど!」
それは凄い剣幕だった。
俺がいきなり名前を出したので他の誰かと勘違いしている様子だ。
ああ、こんな所にテンプレが潜んでいたとは…失敗。
やり直そう。
「ああ、いきなりでごめんなさい。ライラの宿屋の女将からこのギルドを紹介されて来たんだけど」
俺がそう言葉を発した瞬間にリンカはハット口元を抑えてその後少し苦笑いをしてから話出した。
「ごめんなさい。ちょっと他事で立て込んでて」と。
まあ、そうだろうと思ったがあえてそこに突っ込むのをやめて俺は本題に入った。
「実は冒険者になりたいのですが、ここで受付をするのですか?」
「ええ、簡単に受付をできますよ。後、冒険者登録は全てにおいて初めてですか?」
「初めてです。それで全てにおいてとは何ですか?」
「ああ、冒険者カードはギルド毎に違うのでそれでお聞きしたのです」
宿屋の女将が言っていた売り上げを競っているとはこうゆう事か。
「なるほど。大丈夫です」
「はい、それではこの文章を読んで頂き同意していただければ下に名前を書いて下さい。もし名前が書けない場合は指印で大丈夫ですよ」
俺はリンカから文章の紙を受け取った。
この世界の紙は白ではなく薄い茶色の紙だ。
文明が発達すれば日本のような白い紙になるんだろうなと考えながら文章を読んだ。
いろいろ書いてあったが、冒険者にふさわしい行動をしろと言う事らしい。
ふさわしいがどうゆう物かよく理解出来ないが俺は同意の指印を押した。名前が書けないからだ。
俺が紙をリンカへと返却するとリンカは紙を確認して一枚の小さな木のプレートを用意した。
「このプレートが冒険者カードになります。冒険者カードには名前、冒険者ランク、指印を押してもらいます。指印を押されていたので私の方で名前を書きますがよろしいですか?」
「はい、お願いします。名前はタツヤです」
するとリンカは墨のようなペンで俺の名前を記入した。
そして俺にそのプレートを渡してきた。
「それではプレートに先ほどと同じように指印を押してください」
俺は墨に指を付けて指印を押した。
「おめどうございます。これでタツヤ様も冒険者となられました。これから当ギルド『ライド・ドール』をよろしくお願いします」
リンカはそう言うと深々と頭を下げた。
「初めに冒険者のランクは10から始まり最高で1になります。依頼をこなせばランクは勝手に上がります。ですがランクと言うのはあくまでも目安にしか過ぎませんので、あまり気にする必要はないかと思います。あと、初めての方にお勧めしているのが冒険者講習です。今日ですとこの後の
まあいい。この講習でいろいろ教わった方がいいだろうと思い俺は講習を申し込んだ。
リンカ
俺は腹はそう減っていなかったので飲み物を注文したが、もの凄く薄いオレンジジュースが出てきて少しゲンナリしながら冒険者のボードを眺めていた。
ボードには討伐、探し物、掃除、洗濯、デートの同伴…ありとあらゆる依頼や募集が張ってあった。
デートの同伴って誰が行くんだ?と思いきやどうも自分を売り込んだ依頼だった事に気づいて、凄い奴もいるんだなと感心した。
そして
講習部屋はまるで学校の教室の様だった。
俺は後ろの空いている席へと座った。
今回講習を受けるのは俺をふくて8人だ。
人間と獣人が半々といった所だ。
そこへ金色の単発の髪を立たせている40台くらいの体がゴツイ男が入って来て一番前の教壇の上に立った。
「俺の名前はウルド、この冒険者ギルドで副ギルド長をやっている。今から冒険者講習を始める」
男は唐突に名乗りそしていきなり講習が始まった。
「まず最初になぜこのような講習を行うかを説明する。1つ目のは、1クールでの新米冒険者の生存率が半数以下が主な理由だ。少しでもこの講習を受けて生存率を上げる事を目標とする」
聞きなれない言葉が出て来たがとりあえず話に集中する。
「そして2つ目の理由は、冒険者ギルド『ライド・ドール』をひいきにしてもらう為だ。知っての通り冒険者ギルド通しで
俺は話を聞いていて開いた口が塞がらないとはこうゆう事を言うんだなと身を持って知った。
しかしこのギルドだってリンカと言う若くて可愛い受付嬢を置いているじゃないか。まあ、胸の大きさまでは知らないが。よほど『アシアン・ドール』の受付嬢はいいらしいので今度覗きに行く事に俺の中で決定した。
「まあ、余分な話を置いといて皆いろいろ知識はあると思うが今日は空っぽの状態で聞いてほしい」
やっと本題らしい。
「まず冒険者と言えば依頼だ。当ギルドでも食事処の前に大きなボードがありそこたくさんの依頼が張ってある。今からその依頼書の見方を説明する」
キール教官は1枚の依頼書を正面に張った。
「まず、一番上に『討伐』と書いてあるがここが何の依頼なのか人目でわかるようになっている。他には調査とか掃除などいろいろある。次にその直ぐ下に想定ランクがある。この場合だと『5』になっている。この想定ランクはギルドが独自で設定した物なので自分が何処まで対応できるかは個人で判断してもらいたい。次に討伐対象で『ワーウルフ』。次が数で『1』。次が場所と大まかな地図。そして報酬と期限。最後に依頼
俺は少しいいアイデアだと思った。
よくあるファンタジー小説なら1つ上までしか受注出来ないのが通説だが、これなら上に上がりたい人はトントン拍子で上がれるんじゃないかと思った。
「次に新米冒険者がよく命を落とすダンジョンについて説明する」
「まず最初にダンジョンがどうやって作られるのかを説明する」
キール教官は1枚の絵を張り付けた。
その絵は俺がこの世界に来て最初に見た巨大アリだ。
「この魔物は正式名称ブラック・ジャイアント・アントと呼ばれている。この通称黒アリは女王を中心として土の中に巣を作る。だがこの黒アリは大体1クールで巣を放棄し新しい巣を作る習性がある。放棄された巣に魔物が住み着き、ダンジョンになると言うのが一般的なダンジョンが作られる仕組みだ。だが1年なら対した深さでは?と思うだろうが、その通りだ。この黒アリの巣は浅いがこのアントは多種に渡る。その中でもレッドアントは女王が死ぬまで巣を維持するとの報告も上がっていて、400年もの間巣が維持されダンジョンとなった物もある。そしてどうして400年なんて数字が分かるったかと言うと、巣の奥深くに冒険者の死体がありその付近におよそ400年前の硬貨が発見されたからだ。さらに付け加えるなら巣の深さは異常まで深かく、そこに住まう魔物もかなりの強さだったらしい。よってダンジョンが深いほど魔物が強いと言う認識を持ってほしい」
俺が出てきたあの場所は将来ダンジョンになると言う事か。
しかしよく俺は襲われなかったな。
いや、もしかして襲わなかったのかもしれない。
魔物は不思議な生物だ。
「じゃあ、次は魔物だ。そもそも魔物と動物の差は何かと言うと、魔物には第二の心臓と呼ばれる魔石と言う物が体に備わっている。当然動物にはそのような物はない。魔石は魔物の力の根源と呼ばれている。その魔石を1つではなく複数持っている魔物も存在する。それは魔物の強さにも匹敵するので戦闘する際注意すること」
おいおい、さらっとヤバイ事言っていたようだが一応記憶に留めておこう。
「それでは次は冒険に欠かせないのが魔力だ。魔力は全てにおいて必要になってくる。そこで一人一人検査しどの属性が得意そして使えるか。さらに魔力がどの程度あるかを調べようと思う。ただし、ここでの検査が全てではない。人はどんどん成長するので成長したと思った時には受付でも検査はやっているのでよかったら受けて欲しい。当然有料になる」
さらっと営業トークを交えるところが流石だ。
しかし魔力か~もしかしたら神様チートが発動するのでは?期待しよう。
ウルド教官は赤色、水色、緑色、茶色、黒色、白色、無色のガラスのような棒とまん丸い透明な水晶を準備した。
「それでは一人ずつ前の席の人からやってもらう。色とりどりの棒に触れて反応すればその属性が使えると言う意味だ。ただし、使えると使いこなせるは又別だ。あくまでも参考だ。そして水晶は魔力量を
ウルド教官は一番前にいた人間の男性を指をさした。
男性は立ち上がり教壇へと足を進めた。
男性は俺と同じ位の歳で服装も街の住民と変わらない服装だ。
そして男性はまず棒に触れる。
男性が赤い棒に触れた瞬間に赤い棒は赤く反応した。
次に水色は反応しなかったと次々と触り最後に水晶へと手を乗せた。
すると水晶のしたから液体が上がって来て赤色から黄色と液体の色が変化した所で静止した。
「うむ、君は赤、つまり火系統の魔法が得意なようだ。魔力量は12位か少し訓練が必要だろうが魔法の行使には問題ないだろう。そしてギルドからはこの火の魔石を君にプレゼントしよう」
男性はウルド教官から小指の爪ほどの赤い魔石を貰っていた。
「どんなに小さくても魔石は魔石だ。これで魔力の練習をするといい」
男性はウルド教官に礼を言って席に戻った。
そして次々に検査を行った。
魔力量の最大は獣人の女性で猫耳が可愛らしい人だった。
その魔力量数値はウルド教官
かなり高いとウルド教官が褒めていたのが印象深かった。
ただ、得意なのが白色だった為、恐らく回復系じゃないかと思った。
そしてとうとう俺の番が来た。
俺は胸を躍らせて前に出て棒に触る。
皆から動揺が走る。とうぜん教官からも関心した声が上がった。
そう、俺は全ての色が均一に光ったからだ。
チート、キター!
俺は心の中で叫んだ。声には出さなくても恐らくは満面の笑顔をしていただろう。
ただし、喜んだのはここまでだった。
それは水晶に手を置いた瞬間だった。
・・・・・。
反応がほぼなし。
「魔力がなくっちゃ魔法発動しないよな」
そんな切ない言葉が座っている受講生から発せられ俺はどん底へと転がり落ちた。
「まぁなんだ。訓練すればすっ少しは魔力が上がるかもしれんぞ。ほら水の魔石だ」
ウルド教官もどう俺に接していいかわからず目が泳いでいた。
あーーーーーーーー穴があったら入って隠れていたいよぉ~。
神様なんで俺魔力量『1』なんですか!?
そこからの俺は魂の抜けた抜け殻となりウルド教官の言葉は俺の頭に入る事なく講習は終わった。
*
あれ俺どうやって宿屋まで来たのか覚えてない。
ここがどの宿屋かは知っている。
一つしか宿屋は知らないからだ。
どうも俺は既に女将さんに金を払い部屋を取ったとみられる。
この部屋は以前俺が泊まった部屋とほぼ同部屋だと思われる。
その時『カーン!カーン!』と鐘の音が二つ鳴った。
ああ、夕ご飯か。
そう、こうゆう時はやけ食いだ。
俺はよくわからない肉やら野菜を大量に食べ満腹を得たのだ。
腹が膨れると今日あった事は些細な事のように思える。
食事とは偉大だと。
俺は早めに寝ようかと思ったが初めて異世界の風呂を体験する事にした。
まあ、タライにお湯を持って来てもらいタオルで拭くのがこの世界の簡易的な風呂だ。
ある都市では日本のように湯舟につかる事の出来る場所もあると聞いたが、その風呂を体験できるのは後何年かかるかと気の遠くなる話だ。
俺は体を拭き、さあ寝ようと思った瞬間に部屋に眩い光の玉が突然現れた。
俺は瞬時にとうとうこの世界の神が降臨したと確信した。
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