第23話 神敵?使徒?回避?
皇帝は
皇帝はバルドーの存在に警戒していたので、いつもよりは冷静に話をしたつもりだった。
だがバルドーの挑発や、戦闘行為を禁止していたにもかかわらず、護衛の騎士達が先走り、最悪の展開になってしまった。
皇帝の執事はバルドーの能力を知っていたので武器に手をかけることはなかった。だからバルドー達に倒されることはなかったが、それ以上に混乱していた。彼はミーシャやピピの動きに気付くことも反応することもできなかったからだ。
彼は倒された味方より、子供にしか見えないピピが自分より強いと感じて恐怖を感じたのである。
冷静さを失い、混乱したのは執事だけでなく皇帝やノーマンも同じであった。そんな追い詰められた二人に詰め寄ってきたのは、バルドーではなくテンマだった。
皇帝は前日のテンマのことを思い出して、バルドーよりは話が分かると思い不用意な発言して、頬を殴られてしまった。動揺する皇帝にテンマは何度も質問して、勘違いな返答をして皇帝は何度もビンタされたのである。
ノーマンと執事は最初に皇帝が叩かれた段階で、テンマが大賢者テックスだと確信していた。皇帝も三度目に叩かれた段階でテンマが大賢者でないかと気付いていた。しかし、すでに他人から叩かれた事のない皇帝は追い詰められ、子供のように文句を言い返す事しかできなかった。
そして、テンマに敵認定といえる宣言を受け、テンマだけでなくバルドーも含め物騒なことを言い始めたのである。
それを聞いていた皇帝は自分の発言を後悔していた。ノーマンと執事はローゼン帝国を消滅させると楽しそうに話すテンマの仲間を見て、それが脅しではなく、本当に彼らだけで可能なのだろうと感じていた。
絶望的なその状況に、予想外の乱入者が現れる。
皇帝やノーマン達も、見た目が
テンマ達の会話を聞いた皇帝たちは、テンマが触れてはいけない存在だと改めて気付かされていた。
「「「土地神? テラス様!!!!」」」
あまり聞き覚えのない『土地神』という存在。そしてこの世界を創ったといわれる『創造神テラス』の存在が普通に会話されていたのである。
すでに皇帝達は、このまま自分達のことは忘れてほしいと思い始めていた。しかし、バルドーが話を振ってきてしまったのである。
「みなさん、お話は後でゆっくりとしてください! まだこちらの問題が片付いていません!」
(((余計なことを言うなぁーーー!)))
皇帝たちは顔色を変え、心の中でバルドーの行為に絶叫したのである。
「あっ、忘れていた!」
テンマが思い出したように呟いた。
それを聞いて、皇帝達はなおさらバルドーのことを腹立たしく思ったのである。
「何かあったの?」
(((余計なことを説明するなぁーーーーー!)))
皇帝たちの心の絶叫は届くわけもなく、話を聞き終えた
「創造神テラス様のお気に入りであるテンマ君にそんなことをしたのね……、あっ、テラス様の神託がありました」
『テンマ君に敵対する存在は、
それを聞いてテンマは驚いた表情になり、仲間たちは嬉しそうな笑顔になった。
対照的に皇帝達は絶望したような表情になった
彼らは内心では
神託の内容を聞いて、自分達の置かれた状況が最悪だと気付いた。そして
「すべての教会にテラス様が神託を授けると言ってくださいました。準備に時間がかかるから、数日中には神託が下るはずよ!」
皇帝達はさらに絶望する。すべての教会に神託、そこでローゼン帝国が名指しされたら。それこそローゼン帝国は神敵のような存在になるのである。
「待て、待て、待てぇ~い!」
皇帝が焦って言い訳をしようとする前に、テンマが会話に入ってきた。
「そんなこと、絶対にやめるようにテラス様にすぐに伝えてくれ!」
「えっ、なんで? テラス様の神託があれば、テンマ君に愚かなことをしてくる連中はいなくなるし、そこの愚か者たちは神敵になるから国ごと滅ぼしても問題ないから安心よ!」
テンマが神託をやめさせようと話したが、
皇帝達は
神敵となれば魔王と同じようにすべての人々から敵視され、魔王と同じように歴史上でも悪名として語り継がれるのである。
「そ、そんなのはダメだよ。彼らは少し誤解しただけで、話し合えば済む話だよ。それぐらいで神敵に認定されたら可哀想だよ!」
テンマとしては神託で自分の名前を出されたら困ると思っただけであった。
以前ほど自分のことを隠そうとは思っていない。だが神託で名前が使われれば、さすがに平穏に過ごすことも、テンマとして街中に行くこともできないと焦っただけである。
しかし、皇帝達はテンマのことを、自分達の
「え~、本当に神託はやめるのぉ?」
「やめなかったら、二度と俺のHPを吸わせないよ!」
「えっ、ま、待って! すぐにテラス様に話してくる!」
数秒で
「テラス様もこの状況を見ていたようで、神託は保留にしていたわ。でも、話し合いで済まないようなら、すぐに神託をするとテラス様は言っていたわよ!」
「使徒テンマ様、私共の誤解で失礼なことをしてしまい、申し訳ございませんでした!」
「「申し訳ございません!」」
ノーマンや執事まで跪いて謝罪をした。
しかし、テンマは怒りの籠った声で皇帝達に言った。
「誰が使徒ですか。私はただのテンマです! 二度と使徒とか言わないでください!」
皇帝達はテンマの反応に戸惑った。謝罪して、勇者以上の使徒として崇めたのだから喜んでもらえると思ったのである。
「クククッ、あなた達はテンマ様のことを分かっていないようですねぇ」
バルドーが呆れたように話した。
「はぁ~、まあ、勇者関連の誤解は解けたけみたいだけど、別の誤解が生まれた気もするなぁ……」
テンマは溜息まじりで呟いた。皇帝達はどうしたらよいのか分からず、混乱して涙目になっていた。そんな彼らを見てテンマが話す。
「ただの平民の私が皇帝陛下を叩いたことをお許しください」
(((誰がただの平民だぁ!!)))
皇帝達はテンマの話を聞いて心の中で叫んだ。
「許していただけるようであれば、今後のことはバルドーさんと話をしてください」
(((この状況で、許すも許さないもないだろうがぁ!!!!)))
もちろん皇帝達は心の中で叫んだだけであった。
皇帝は今回のことを終わらせるために、テンマの提案にのるのだった。
「悪いのは私共です。今後はバルドー殿に対処法を教えていただきます!」
テンマは少し不満そうな顔をした。対処法と言われたことを気にしたのである。
「はぁ~、そういうことで問題は解決です。
テンマは強引に今回の件を終わらせたのであった。
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