第7話 ドロテア株再び!

ミーシャはこの緊迫した状況をまったく理解していないのか、ニコニコと笑顔を見せて俺の返事を待っている。


みんなの注目に冷や汗を流しながら、俺はミーシャに挨拶を返す。


「ひ、久しぶりミーシャ、随分と実力を付けたのが分かったよ」


まさか隠密スキルを見破られるとは思わなかった。ミーシャがたった数ヶ月で、これほど能力が上がったのは驚きでしかない。


しかし、今はそれよりも先にすることがある。何とかのじゃ嵐をやり過ごさなければならないのだ。


「うん、もうすぐA級冒険者になれる。これはテンマの取り分!」


いやいや、ミーシャちゃんや、今はそれどころでは……。


ミーシャは収納から革袋に入ったお金のようなものを出して手渡してきた。なんで俺の取り分なのか分からないが受け取ると想像以上に重たい。何となくだが、金貨が百枚ぐらいは入っていると感じた。


なんで俺の取り分が発生するんだ?


理由が分からず、念のために袋の中を確認するとやはり金貨が百枚ぐらい入っていた。疑問に感じてミーシャの顔を見ると、また革袋を収納から出して渡そうとする。


「ちょ、ちょっと俺の取り分って、なんの?」


焦って革袋を受け取る前にミーシャに尋ねた。


「んっ、私の稼ぎはテンマのお陰。稼いだお金は全部テンマに渡す?」


何でそうなるぅ~!


相変わらずミーシャの発想と行動は意味不明な部分が多い。


「テンマ! お、お主は女に稼がしておるのか!?」


おうふ、なんでそんな話になるぅ!


エアルが目を見開いて盛大な勘違いをしている。


待て、待てぇ~、なんでミーシャは次々と革袋を出しているんだぁ!


すでに十袋以上出して、まだ次々に出し続けている。


「ミ、ミーシャ、こんな所で出すのは止めてくれ!」


「んっ、わかった。後で渡す!」


後で渡さなくていいからぁ!


「テンマさん、それが昔の女なの?」


え~と、どっち? エアルは微妙に服が違うが、エリスとエリカは全く同じだから分からない。


いや、今はそんなことはどうでも良い!


「ミーシャはテンマの最初の女じゃ。見た通り昔ではなく、今も深い関係なのじゃ。そして、私もミーシャと同じで、今もテンマの女じゃ!」


勝手に女になるなぁーーーーー!


「「「そ、そんなぁ……」」」


3姉妹もそんな嘘の話にショックを受けました的な顔をしないでくれぇ!


エアル「昨日の晩あれほど楽しく過ごしたのに……」

エリス「あんなのは初めてだったのに……」

エリカ「優しく抱いて寝所まで……」


変な言い方をするなぁーーー!


一緒に俺が作った双六をして、3人共途中で寝たから仕方なくベッドまで運んだだけじゃないかぁ。


「ピピもいっしょで、たのしかったぁ~!」


うん、ピピも一緒だったよ……。


俺としては子供達と楽しく遊んだんだよ……。


だからお願い! マリアさんまで軽蔑の眼差しで俺を見ないでぇ。


「みんな一緒に遊、」


「テンミャァーーー! お前はいつから不埒な生活をするようになったのじゃぁ!」


うん、収拾がつかなくなった。なんでドロテアさんが居るとこうなるかなぁ?


ドロテアさんが魔力をまた練り始めてしまった。なぜかエアル3姉妹も魔力を練り始めて、全員が俺の方を見ている。


はいはい、俺に魔法を放つのは止めようね。


『『『頭痛(中)』』』


『『『ぎゃぁーーーーー!』』』


3姉妹に渡した魔道具にも設定しておいて良かったよ。


まあ、3姉妹はドロテア臭がしていたからな……。


おっ、ドロテアさんは(中)くらいでは復活が早くなった!?


砂浜で転げまわっていたドロテアさんだったが、驚くほど早く立ち直って叫んだ。


「テンミャァーーー! 久しぶりなのじゃ~!」


えっ、なんで喜んでいるのぉ!


「これがテンマの愛情表現なのじゃーーー!」


え~と、どういうことぉ?


愛情表現ではなく罰なんだけど……。


「「「これがテンマの愛!?」」」


3姉妹も違うから~!


3姉妹も転げまわるのをいつの間にか止めて、変なことに感心している。


「テンマさん、誤魔化すのに、それはいくらなんでも酷い仕打ちです! それに、まさかピピちゃんにまで……」


マリアさんまで……、誤解ですぅ!


それまで他人事のように、距離をとって様子を見ていたバルドーさんが、ようやく間に入って説明してくれた。


マリアさんはバルドーさんに昨晩の様子を聞いて、誤解を解いてくれたようだ。


しかし、のじゃのじゃ4姉妹は間違った方向に……。


ドロテア「あれが照れ屋のテンマの愛情表現なのじゃ」

エリカ「あれが愛情表現……、ポッ」

エリス「愛情より子種が欲しいわ……」

ドロテア「なんじゃ、それなら私と一緒ではないか!」

エアル「黒耳長族は人族のような愛情はないのじゃ。子種を貰えば落ち着くのじゃ!」

エリス「愛情はジジちゃんで問題無いでしょうねぇ」

ドロテア「なんじゃ、それなら仲良くやれそうじゃ!」


嵐は治まりそうだが、ドロテア株の猛威という危険が始まった気がする……。



   ◇   ◇   ◇   ◇



島に建てた屋敷のリビングに、みんなで戻ってきた。バルドーさんだけは、状況が落ち着いたので、王妃一行を呼びに小型魔導船で港に行ってしまった。


しかし、リビングはカオスとしか言えない状況になっている。


ミーシャはピピと一緒に、シルをモフりまくっている。その光景はほのぼのとして、微笑ましいと言えるだろう。


マリアさんの横にはリディアが座り、予想外の会話をしてた。


「マリア、また大きくなったんじゃないか?」


「ああん、そうやってすぐに胸を、あん、触るのは止めて。んふっ、昔から何度も言っているでしょう!」


なんか会話を聞くだけで興奮してしまう。リディアは同性?ということで、遠慮なく触り、揉みまくっている。マリアさんも多少は抵抗しているが、諦めたようにリディアの好きにさせている。


う、羨ましぃーーー!


優勝杯オッパイを好きに揉み、……ゲフン、自由にできるとは……。


「あの弱いバルガスと結婚したのか? 俺のご主人様の方が良かったのになぁ~」


「あん、私だって先にテンマさんに会ってたら、あっ、そこはダメぇ」


なんですとぉーーー!


もっと早く転生していたら……。くぅ~、優勝杯オッパイがぁ……!


「今からでも乗り換えたらどうだ?」


「くふぅ~、娘がいるから、ああん、簡単には、あん、もう、いい加減にしなさい! それよりも、あなたこそテンマさんの従魔とはどういうことよ?」


マリアさんはさすがに話ができないのか、怒ってリディアの手を払いのけた。


あれほど触りまくれば、怒って当たり前だよね。羨ましいけど……。


「どうせここに居ればバレるから教えてもいいかぁ。実はなぁ、俺はドラゴンで人化けしているのがこの姿なんだ。ご主人様にドラゴン姿でも叩きのめされて、気付いたら従魔になっていたんだよ。おっ!」


リディアの話にマリアさんは固まったようになり、それを見てまたリディアが胸を……。


抵抗しないからといってそんなに……。う、羨ましぃーーー!


「これでも俺は有名なんだぞ。ドラ美様とか呼ばれるからな」


「ドラ美様……、伝説の……」


マリアさ~ん、リディアが調子に乗って、やりたい放題でーーーす!


見ているこちらが変な気分になるぅ!


しかし、のじゃのじゃ4姉妹から危険な会話が聞こえてくる。そちらに視線を向けると何故かピョン吉が泣いているように見えた。


ピョン吉を挟んでドロテアさんと3姉妹が会話しているのだが、ドロテアさんはピョン吉の上に乗りかかって両手を組んでその上に顎を乗せて話している。3姉妹はピョン吉の体に張り付くように乗っかりながら話をしている。


4姉妹は微妙に体を揺すってピョン吉のプニプニの体を堪能しながら会話しているのだ。


ドロテア「テンマはジジと関係は進んでいるのか?」

エリカ「少し進んだ気はしますが……」

エアル「お主もジジとの関係が進まないと、子種を貰えないと思っているのじゃな?」

ドロテア「正妻が先じゃないと色々と問題があるのじゃ……」

エリス「長命な私達ならいくらでも……」


おいおい、ドロテア株を発症させるんじゃない!


ワクチンの存在しないドロテア株の感染者には、隔離が必要ではないかと真剣に考え始めるのであった。

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