第17話 バルドーの報告
緊迫した姉妹?の出会いが発生していた。信じられないとリディア(ドラ美)は顔に出て、ハル兵衛はオーク扱いをされて怒っている。
「ほほう、リディアさんにはドラ美と言う名前もあるのですねぇ」
バルドーさんが感心している。
「その名前は封印した。絶対に呼ぶんじゃねぇ!」
確かにあれほど綺麗なのにドラ美は可哀そうだね。
「はて、ドラ美とは聞いたことがあるような……?」
バルドーさんは何か名前に思い当たりがあるようで、何か考えている。
『ドラ美! あんたタケトに付けてもらった名前を封印するなんて、どういうことよ!?』
タケト! 勇者関係者!?
「お姉ちゃんは分かってないんだ! タケトはいい加減にこの名前を付けたとユウコが死ぬときに……」
う~ん、俺もそう思うなぁ。
ドラゴンのドラに美は一応美しいという意味があるが、何となく
転生者は命名がいい加減なのかもしれないなぁ。
「ハルさんの知り合いということは、本当に伝説のドラ美……」
また伝説が出たぁ!
バルドーさんが呆然として呟いた。
なら地図スキルに表示された種族は合ってる!?
なんでファイアードラゴンがミニオークの妹なんだぁーーー!
色々あり過ぎて混乱する。取り敢えず鑑定してみると、やはりファイヤードラゴンの
「おい、テメェ、勝手に乙女の秘密を覗くんじゃねぇーーー!」
鑑定したのがバレたぁ!
『いい加減にしなさい! テンマに手を出したらオークカツ貯金が無くなるじゃない!』
ちょいちょい、ハルさんや、止める理由がそれかい!
「オークカツ貯金? なんだそれは!?」
『サクサクの衣に分厚いオーク肉、噛むとジュワ~と肉汁が口の中に溢れてくる。サクサクジュワ~のオークカツを貯めておけるのよ!』
おいおい、
「ジュルッ、俺が生でオークを食べているのに、お姉ちゃんはそんなものを! グ~」
色々突っ込みたい!
僕っ
生であのオークを!?
見た目は綺麗なのにここで腹が鳴るぅ!
ハル株に絶賛感染中!
「もういい! バルドー頼む、なんか料理して食わせてくれ!」
「えっ、いえ、はい?」
バルドーさんは予想外の攻撃に混乱に拍車がかかっているようだ。
『あら、そういえばお昼ねぇ。昼はオークカツサンドをジジちゃんが作ってくれているはずよ。サクサクジュワ~のオークカツをパンで挟んであって、ソースが掛かっている。そのハーモニーは至高の美味しさよぉ~!』
ハル兵衛は話しながらダラダラと涎を垂らしている。そして
やはりハル株に間違いなく感染しているようだ……。
ハル兵衛的な危険は感じるが……。
「どうだろう、ドラ、リディアさんも一緒に昼飯を食べたら? ハル兵衛の妹ならオークカツ貯金からご馳走してあげよう!」
『なんで私のオークカツ貯金を勝手に使うのよ! ドラ美は妹なんかじゃないわよ!』
「お、お姉ちゃん……」
おうふ、食い物のことになるとハル兵衛は危険だぁ。
「そうなのか? 姉妹の再会なら俺からプリンを提供しようと思ったけど……」
「『プリン!』」
2人、……2頭?が声を揃えた!?
『し、仕方ないわねぇ。妹だから少しだけ食べさせてあげるわ!』
妹<オークカツ<プリンの優先度なのね……。
納得したようなので一緒に『どこでも自宅』行こうとD研を開く。なぜか
「テンマ様、私はもう少しここに残ります」
うん、そうだよねぇ。
バルドーさんは本来の目的を優先するのだろう。俺はハル兵衛たちを連れて『どこでも自宅』に向かうのであった。
◇ ◇ ◇ ◇
バルドーはテンマ達がD研に入るのを見送ると、積み上げられた石の方に振り返る。
「どうですか? 私の主は面白いお方でしょう。あの方と行動するようになってから、次々と信じられないような事ばかりおきますよ」
バルドーは笑顔で積み上げられた石に向かって話しかける。
「まさかこの地が伝説のドラ美殿の住まいとは思いませんでしたなぁ。この地を一緒に離れて、冒険者仲間として行動していたリディアさんが、あのドラ美殿とは信じられませんねぇ」
バルドーは真ん中の積み上げられた石に向かって、さらに話しかける。
「ディーン、あなたの姪であるドロテア様も一緒に冒険者をしていたのですよ。ふふふっ」
そして次に左隣の積み上がった石に向かって話しかける。
「ガル、あなたの甥の息子であるバルガスも一緒に冒険者をしていました。ディーンの姪だからドロテア様を気にかけて様子を見ているうちに、偶然助けたことで冒険者パーティーを組みました。まさか一緒にいたバルガスが、あなたの血族だとは思いもしませんでしたよ」
バルドーは更に右側の積み上がった石に向かって話しかける。
「カーシュ、あなたの親兄弟は見つかりませんでした……。しかし、遠い親戚だという者達は見つけることはできましたよ。その子供の2人はどこかあなたに面影が似ていましてねぇ。今ではカイナとアイナは私の後継者となり王宮で働いています。
あなたに似ていたので気になって後で調べてそれが分かった時には、運命とは凄いと感じましたよ」
まるで運命に導かれるように、自分を守ってくれた人達の血族に、随分と時間が過ぎてから出会えるとは思っていなかったのだ。
「そして今の主に出会い、我々をあんな目に合わせた首謀者に罰を与えることができました……。
そしてその事を報告しに、再びこの地に来られるとは、私も驚いています!」
いつの間にかバルドーは目から涙が溢れ出ていた。しかし、表情は非常に明るかった。
「クククッ、それに母上まで助けていただいて、なんと土地神として復活してしまいましたよ。いやぁ~、嬉しかったのは最初だけで、暴走する母上から逃げ出してしまいましたからねぇ」
バルドーは懐かしい彼らと、報告を兼ねて話続けるのであった。
◇ ◇ ◇ ◇
『どこでも自宅』に入っても、ドラ美(リディア)はキョロキョロと落ち着きなくそこら中を見ながらも、お腹がグーグーとなっている。
「あら、お客様ですか?」
ジジとアンナが驚いた表情で尋ねてくる。
「悪いけど昼飯を一緒に食べるから、オークカツサンドを用意してくれる?」
「はい」
ジジがすぐに返事してくれた。
「ハル兵衛、無制限でオークカツ貯金をおろしても良いけど、姉妹で同じ数を食べてもらうぞ。何食分を貯金から払い出す?」
ハル兵衛は短い腕を組んで考え込んでいる。
たくさん要求すれば貯金がたくさん目減りする。しかし、たくさん食べたい。でも、自分だけの分じゃなくドラ美(リディア)の分も必要になる。
俺はどんな結論を出すのか楽しくて仕方ない。
『3、いや、5食分をお願い!』
クククッ、予想通り、いや、予想以下の数を言ってきたぁ!
俺は10食分位いくと思っていたが、やはりハル株に感染中だからこんなものだろう。
「ジジ、用意できるかい?」
「はい、大丈夫です!」
ジジはそう答えると準備に向かった。
『テンマ、お願いよぉ。久しぶりの姉妹の再会だから、プリンも5食分でお願い!』
うん、ミニオークに上目遣いでお願いされても、俺の心は微動だにしない!
「2個!」『4個!』「2個!」『3個ぉ!』
「わかったよ3個ずつ提供する!」
そう答えると、ハル兵衛はすぐにドラ美(リディア)の方に振り返り、話し始めた。
『私が交渉したのよ! あなたの分を1個ちょうだいよぉ!』
ハルさんや人から奪うのはダメでしょ!
「1個!」
『う、嘘よ! 冗談に決まっているじゃな~い。ドラ美、3個ずつ食べましょうねぇ~!』
油断できないミニオークだと思うのであった。
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