第15話 遺品捜し②
俺達の目の前には大量の人骨が広がっていた。
人骨を見つけた俺は周辺を土魔術で掘り返すと、次々と折り重なるように人骨が見つかったのである。地図スキルで頭蓋骨が点在していたのは、形が残っているものだけが表示されていたようだ。
バルドーさんは一緒に埋められた壊れた武器や防具などを確認している。
「たぶん我々を襲撃してきた者達が埋められたのでしょう」
金属製の防具や剣なども壊れてさびているが、バルドーさんの仲間のものではないのだろう。それでもひとつずつバルドーさんは確認している。
俺はバルドーさんが確認した場所の人骨や遺品を収納して、改めて埋葬することにする。バルドーさんを襲った相手だとしても、さすがに掘り返して放置する気にはならなかったのだ。
バルドーさんは丁寧に確認して、半分以上確認した時に声を上げる。
「こ、これは!?」
俺はすぐにバルドーさんに近づくと、何か紋章の入った腕輪を見つけたようだ。
「テンマ様、これは母上の兄、私の叔父が付けていた物です。この紋章は母上の実家である男爵家の紋章です!」
バルドーさんは目に涙を浮かべながら、俺に紋章部分を見せてくれた。俺は紋章を地図スキルで意識すると、他にも幾つもの物が見つかる。
場所は比較的近い所にあり、次々と見つけてはバルドーさんに手渡す。
「これらは男爵家の兵士たちの持ち物でしょう……」
折れた剣やナイフ、金属製の装飾品なども見つかった。
「バルドーさん、たぶんこの辺がバルドーさんの仲間が埋葬された場所でしょうね。だけど、何か所か離れて見つかっています。遺骨だけではバルドーさんの仲間と、襲撃者を分けるのは難しいと思います……」
鑑定では人骨としか表示されない。遺骨を正確に分けて埋葬するのは難しい状態だった。
「気にすることはありません。このような状態になって争うのは愚かなことです。一緒に改めて埋葬しましょう」
俺はホッとして遺骨を集め続ける。バルドーさんは紋章のない物も丁寧にひとつずつ確認していた。
途中でバルドーさんが呟くと、その品を俺に見せた。
「やはりホレック公国が……」
見せられたのは、先程の物とは違う紋章のついたものだった。地図スキルで確認すると他にも見つかり、アイテムボックス内に回収していた遺品からも見つかった。
それ以降は目新しい物も見つからず、全て回収すると一部を残して土を埋め戻す。
そして一箇所を丁寧に土魔術で墓穴を作り、その中に人骨を全て納める。バルドーさんは俺が集めた遺品をもう一度確認して、仲間の物以外は全て人骨と一緒に墓に納めていく。
全ての作業が終わったのを確認すると、バルドーさんに声を掛け、墓を土魔術で固め、最後に小さな慰霊碑を建てたのであった。
慰霊碑の前でバルドーさんは暫く何か話しかけていたが、涙を流しながら謝罪の言葉を掛けているようなので、その場を少し離れて様子を見るのだった。
◇ ◇ ◇ ◇
翌日はまた森の奥に進んで行く。俺は定期的に人骨や紋章の類を地図スキルで確認するが見つからなかった。
再び草原に出るとバルドーさんが説明してくれた。
「この付近で二手に別れました。私と仲間はあそこに見える山の麓まで移動しました。母上たちは反対方向のあちらに向かって進んだようです。母上から話は聞きましたが、私は別行動していたので詳細は分かりません」
バルドーさんは残念そうに話した。別行動となった後の話をフリージアさんから聞いたとしても随分昔の話だし、案内できる確信がないのだろう。
「話では森を進んで数日の場所に、今まで見た草原よりも広い草原に出たそうです。そこで襲撃者を待ち構えて母上は魔術を使ったと言ってました。しかし、魔力切れと疲れで母上は気を失っていたそうです。その後のことは覚えていなくて、一緒に行動していた兵士や祖父がどうなったか分からないそうです……」
バルドーさんは説明してくれたが、最後にはまた涙ぐんでいた。
「テンマ様、ここまでありがとうございます。これ以上は場所も正確に分かりません。時間も掛かることになるので、これ以上は必要ありません。計画通り山の麓に向かいましょう」
バルドーさんは悲しそうにしながらも、決意したような表情で話した。
「う~ん、でも、もう少しだけ探索を続けましょう。せめてその草原まで行きましょう」
「ですが母上も予定通り進んでいたのかわかりません。森の中で正確な方向が分からなくなったと言ってました。あまりにも情報が不確かで、徐々に魔物も強くなっています。ここまで探せば十分です。ありがとうございます」
確かにバルドーさんの言う通りだろう。しかし、俺なら簡単に探せるかもしれない。
「では、こうしましょう。俺が空から草原を探します。もちろん地図スキルでも確認もします。しかし、その調査は今日だけにします。見つからなかったら諦めてください」
「しかし、関係ないテンマ様だけに頼むのは……」
「もう関係なくないですよ。フリージアさんと会った時に手抜きしたと思われたらどうします。バルドーさんの未来はどうなりますかねぇ?」
「ぜ、絶対に変なことは言わないで下さい! そんなことになれば、私の聖地が……」
おうふ、本当に聖地を創る気になってるぅ~!
「ということで、私だけで行ってきますね」
そう話すと渋々ではあるが納得してくれた。
いざという時のためにアンナは残していくことにした。アンナならルームがあるので中に避難できるはずだ。
さすがに森の中でD研を開いて離れることはできない。D研は扉を開けば誰でも出入りできるのだ、逃げ込んだとしても俺が一緒に居なければ扉を閉めることもできないからだ。
結局ジジも一緒に残り、アンナのルームで過ごすことになった。最近はジジとアンナは非常に仲が良いのだ。
◇ ◇ ◇ ◇
俺は探索に飛び立つと、少し高い位置まで跳び上がり、探索に向かう方向を確認する。
すると予想以上に近い場所に広そうな草原がある。しかし、真ん中付近に池のような場所もあり、バルドーさんから聞いた話と少し違った。
他にも草原は見つかったが、今いる場所と同じぐらいか狭かった。森の中なので草原が森に飲み込まれても変ではない。
取り敢えず近かったこともあり、池のある草原を確認しに向かう。近いと言っても今日移動してきた距離とほとんど変わらない。話では数日後に草原で襲撃されたと聞いていたので違うだろうと思いながら飛んで行く。
しかし、近づくと男爵家の紋章に地図スキルが反応する。
草原を上から見ると真ん中付近の池は比較的綺麗な楕円型になっていた。何となくドロテアさんが池を作った時のことを思い出した。
フリージアさんの魔術で穴ができて、そこに水が溜まって池になったのか!?
紋章は池の中と、草原の奥側の森にあった。それに人骨が池の中に表示されている。
先に森の中に行くと、大きな木の中から反応がある。魔術で木を削ると短剣や紋章のついた装飾品が見つかった。想像だがこれらを隠すように根元に埋めたけど、木の成長と共に木の中に埋もれたのではないかと思った。
そして池に行くと結界を使って水中に入る。池の底の付近を掘り起こすと人骨が幾つも出てきた。その中に紋章のついた指輪も見つかった。
何となくだが、フリージアさんが魔術で作った穴に、死体を放り込んで埋葬としたのではと思った。
人骨や遺品の数は昨日よりも少なかった。時間も掛からずアイテムボックスに収納した。
俺はすぐにバルドーさんの所に戻ると、発見した物を見せた。
「……祖父の遺品です。ウグッ」
バルドーさんはそう話すと、遺品を抱えて泣き出してしまった。
バルドーさんが泣き止むのを待って今後の相談をする。
「もうすぐ暗くなるので、明日にでも現場に行きましょう」
まだ埋葬も済んでいないので、埋葬もその時にすることにするのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます