第21話 新たな発見と問題?

翌日からバルガス達も一緒にダンジョン探索を進める事になった。


別行動するはずだったのに、隠し部屋を1人で独占するのかと問い詰められ、仕方なく一緒に行動することになったのだ。


独占と言われても、俺が一緒じゃなきゃ隠し部屋を見付けられないやないかぁ。


心の中でぼやきながら、隠し部屋を見つけては、大騒ぎをする彼らを見つめるだけだった。


そしてなぜかジュビロと目を合わすと、慌てて目を逸らすようになってしまった。


か、過剰反応するな! 男は心! 男は心だ!


そしてバルガスは全員一致で宝箱を開ける権利は無くなってしまった。

それどころかバルガスが宝箱に触ろうとすると、リリアとミーシャに叱られ、ピピがバルガスの首にミスリルの短剣の刃を突き付けていた。


バルガス、頑張れよ!


順調に進んで10層のボス部屋に到着する。ボスが気の毒になる程あっさりと狐の守り人フォックスガーディアンとピピ、それにシルも参加して倒してしまう。


「テンマ、どうする? このメンバーならもう少し進んでも時間的には大丈夫だと思うが、余裕を持って引き返すか?」


バルガスが尋ねてきたので、戻る予定について思い出す。


あぁ、呪いの館の浄化があると言っていたなぁ。


正直、面倒臭いと思うのだが約束してしまったので仕方ない。それに、このまま攻略を続けるとバルガス達も一緒に行動することになる。


「とりあえず11層に降りて様子を見よう。今日は11層で泊まって明日から戻れば余裕でしょ?」


「そうだな。時間的にもそろそろ野営の時間だし、帰りは隠し部屋もないから余裕で戻れるだろう」


他のみんなも賛成のようなので11層に向かう。


ボス部屋を出てすぐに階段があったのだが、途中の踊り場の所で隠し部屋を発見した。


「ここにも隠し部屋があるみたいだね」


何となく1層にあった最初の隠し部屋と似ている。


「「「本当!」」」


女子が期待した目で集まってくる。


開かない可能性が高いので悪い事をしたと申し訳なく思う。


開かないとなれば、落胆するだろうなぁ。


言わなければ良かったと思いながら壁を開くために魔力を流してみる。


「やったー!」


ピピが跳び上がって喜んだ。扉は1層とは違い呆気なく開いたのだ。


「あれっ、なんか違う?」


リリアが驚いたように言う。


中を見ると部屋の真ん中に水晶のような物が台座の上に乗っていた。床には大きな魔法陣が書かれている。


転送部屋!?


ゲームの中のダンジョンによくある転送部屋を連想させた。


ゆっくりと全員で部屋の中に入るが、魔物がポップすることもない。


少しすると入口の壁が閉まった。


「あっ、閉じ込められた!」


ミーシャがそう言うと全員がパニックになりかけたが、俺はすぐに魔力を流す場所を見つけて魔力を流すと壁が開いた。


全員が落ち着いたのを見て話し始める。


「みんな聞いてくれ!」


俺がみんなに声を掛けると、全員が俺に注目する。


「これは予想だが、1層にも同じような部屋があった。もしかしたら階層を移動できるような転送部屋かもしれない。バルガス、そういう話を聞いたことはないか?」


長年冒険者をしていたバルガスなら、もしかして知っている可能性があると思い尋ねてみる。


「俺は聞いたことはないなぁ。そんなのがあればもっと有名になるはずだぞ?」


逆にバルガスに不思議そうに訊かれてしまった。


まあ、確かにそうだな……。


「んっ、これなに?」


ミーシャが水晶に触れた瞬間に部屋が輝いたような気がして目を瞑るが、閉じた目に光があたる感じがしなかったのですぐに目を開いた。


部屋の様子には特に変化はなかったが、全員驚いた顔をしている。


あぁ~、やっぱり1層にいるわぁ~。


地図スキルで確認すると、1層の開けなかった隠し部屋に居ることがわかった。


「な、なにが起きたんだ!? 全員無事か?」


おっ、バルガスがすぐにみんなの無事を確認するとは……。見習わないとダメだなぁ。


自分はダンジョンの新しい発見に探求心が湧いたのだが、バルガスは仲間の心配をすぐにしたのを見て感心する。


「あ~、みんな聞いてくれ~。やはり転送装置と言うか1層への帰還装置だったみたいだ。ここは1層にある隠し部屋のひとつだ」


俺がそう説明しても誰も信じなかったが、壁を開いて1層に居ることがわかると、やっと信じてくれた。


その後も色々と検証してみる。

最初に転送部屋が開かなかったのは、10層まで攻略していなかったようで、今は魔力を流すと普通に壁が開いて中に入れるようになっていた。


1層の水晶に触れると階層が表示されて、その階層の転移部屋に移動できるようだ。バルガスは30層のボスまで攻略していたので、20層と30層まで選択できた。

しかし、一緒に部屋にいても30層を攻略していない俺達は、その場に残って転送されなかった。


1層以外の転送部屋は1層への帰還ができるだけのようなので、帰還部屋と呼ぶことにする。


「これはダンジョン攻略の方法がまるっきり変わるぞ……」


バルガスが真剣な表情で呟いた。


そして転送部屋の情報をどうするか話し合う。


「転送部屋の情報を秘匿するのは止めよう!」


タクトやジュビロは秘匿して暫くは独占して使う事を提案した。リリアとバスガスは冒険者ギルドと話し合って冒険者から手数料をとり、その一部を受け取るべきだと言い出した。


そして俺は冒険者ギルドに一任することを提案した。

管理は冒険者ギルドがすれば良いし、そのために必要な手数料を取るなら取れば良いと思ったのだ。


「でも、少しは独占しても……」


「どうせ使っていれば誰かに見つかる可能性が高いし、俺達が管理できるわけでもないよ。ギルドには発見者として優先権ぐらい要求すれば良いんじゃないかな?」


「う、うん、それならいいかも……」


「ダンジョンは誰のものでもない。やはりダンジョンの出入りも管理しているギルドに任せよう!」


バルガスも俺の意見に賛成したので、ギルドに報告して後は任せることにしたのだった。



   ◇   ◇   ◇   ◇



エクレアが尋ねてきた翌日も、残りの道路整備に向かうドロテア達であった。


「ドロテア様、私達もお手伝いします!」


「う、うむ」


エクレアの後ろには30人以上の魔術師が勢ぞろいしていた。


ドロテアもエクレアを慕って辞めた魔術師もいると聞いていたが、それは昨日一緒にいた2人だけだと思っていたのだ。


だから気軽に面倒を見ると言ったのだが、まさかこれほどの人数が居るとは思わなかったので、内心ではテンマにどうやって説明するか考えていた。


「これで全員なのかしら?」


マリアの質問にドロテアはギョッとする。そこまで考えていなかったのである。


「あと20人ぐらいはいますが、家族への説明や説得に時間が掛かっているようですわ。たぶんあと10人ぐらいは増えると思います」


エクレアがそう答えると、昨日一緒に尋ねてきた魔術師の一人が話し始める。


「エクレア様、他にも王都にいない者も事情を聞けば、宮廷魔術師を辞める者もいると思います。私の予想では100名~200名ぐらいは増える可能性があります」


(不味いのじゃ~、それは絶対に不味いのじゃ~! テンマも許してくれると思えないし、王宮とも揉めることになるのじゃ~!)


「それはさすがに不味いわねぇ~、王都にいない者の大半は国境の警備に言っている者達よね」


(そうじゃ! 不味いのじゃ~! エクレア止めるのじゃ~!)


「しかし、国境に派遣されて、帰りたくともバルモアが返さず。ずっと家族にも会えない者達ですよ!」


エクレアに話す魔術師も、それを聞いている魔術師達も必死の表情で様子を窺っている。


「……そうね、ドロテア様は我慢する必要はないと言ってくれたし、その人達だけ我慢させるのは良くないわね!」


(我慢させるのじゃーーー!)


「ドロテア様なら絶対に何とかしてくれるはずよ! 安心して!」


「「「おおおっ!」」」


(何とかして欲しいのは私じゃーーー!)


「それならまずは知識の部屋に行って、大賢者テックスの知識を先に勉強するのね。それに色々と秘密があるから先に契約が必要ねぇ………。お姉さん、例の契約内容で良いかしら?」


ドロテアがどうやってこの状況を回避しようかと考えるより早く、マリアが次々と話を進めてしまった。


(終わったのじゃ~。私にはこれを回避することはできないのじゃ~。どうかテンマが怒らない事を祈るしかできないのじゃ~!)


午前中は全員と契約して、知識の部屋を利用させた。


そして、午後からは一緒に道路整備したことで、ドロテア達は、半日で残りの道路整備を終わらせたのであった。


ドロテアは宿に戻りながら、テンマ達の帰ってくる明日までに、この事態をどうするかバルドーに相談しようと考えていた。


すでに宿に一緒に泊まっているエクレアと一緒に宿に向かったドロテアだったが、予定より1日早くテンマ達も戻ってきていることを、この時はドロテアも知らなかった。

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