第34話 7歳11月 セリナのレベル上げと新しい職業
それはある日、突然、訪れた。
「ユウキ、おはよう。」
そう言って、セリナがいつものように俺の腕に抱き付いてきた。
何故か一瞬、セリナが可愛く見えたのだ。。。
「今日は腕を離せって言わないんだね?」
「なっ!分かってるなら、すぐに離せよ。
むしろ、最初からくっつくな!」
やはり、セリナは鬱陶しい。
今、再確認した。
この女が可愛いとかありえない。
視力が低下したんだろうか…。
まぁ、ただの目の錯覚だろう。
そう思っていた。
しかし、次の日…。
まただ、今度は学校の休憩時間中にそれは訪れた。
時間にして3秒くらい、セリナに見とれてしまった。
セリナがキラキラしていたと言えばいいのだろうか?
「ふふ、ユウキ。どうしたの?
そんなに見つめられると恥ずかしいよ。」
「いや…勘違いだ。
おまえを見ると目に悪いし。」
「人を有害物質みたいに言わないでよ!
本当にユウキは素直じゃないんだから。」
うん、セリナは鬱陶しい。
やっぱり気のせいか。
この女は害虫みたいなもんだからな。
さらに次の日…。
嘘だろ?
今、セリナの手が触れた瞬間、確かにドキッとさせられた。
おかしい。
まさか俺はこの女のことを…?
恐る恐る、こちらから、セリナの手を握ってみる。
良かった…。
やっぱり何も感じない。
この女を好きになるなんて、あってはならないことだ。
「ふふふ、ユウキから私の手を握ってくれるなんて初めてだね。」
「なっ…手を離せよ!」
そう言って、セリナの手を振り払った。
「あはは、自分から握っといて離せだなんて、いくらなんでも人としてどうかと思うなぁ?」
「ぐっ…。」
「ほら、謝ってよ。
リーシャにユウキが酷いって相談しようかなぁ。
ほら、セリナさん、ごめんなさいは?」
「ぐぬぬっ…」
「可愛い過ぎて手を握ってしまいましたも、付けてね。」
「ぐっ…調子に乗るなよ、このクソ女が!
セリナが可愛いとかありえないし。」
俺に限って、この女を好きなるなんてありえない…。
出会った時の印象が最悪過ぎて、この女にそういう感情を抱くはずがない。
それなのに…。
俺は一体どうしてしまったんだ。。。
そして、1週間後…。
セリナを好きになったかもしれない…。
毎日のように、セリナに見とれたり、ドキッとする瞬間が訪れる。
その回数も着実に増えてきている。
最初は日に1回だったものが今日はもう3回目だ。
しかも、昨日、遂に言ってしまった。
セリナに見とれた時に、ポロっと言葉に出てしまった。
「セリナ、可愛い…」と。
「ふふふ、ユウキ。
初めて可愛いって言ってくれたね。」
「ゴクリ…」
そう言って、微笑んだセリナをまた可愛いと思ってしまった。
いつもなら、すぐ否定するところなのに、昨日は否定できなかった…。
さらに1週間後…。
「はい、ユウキ。差し入れ。
今日もユウキの為に買ってきたんだよ。
今、ちゃんと飲んでね。」
「セリナ。いつもありがとう。」
「ふふふ、どういたしまして。」
頭がボーっとしてきた。
今日もセリナが可愛い。
優しいし、自慢の彼女だ。
差し入れをもらった後は特にそう感じる。
昔のことは昔のことだ。
いつまでも引きずるのはやめた。
「あはは、ねぇ、ユウキ。
サラさんと私はどっちが良いと思ってるの?」
「いや、その、サラさんも綺麗で可愛いけど、セリナの方が好きっていうか…。
セリナは性格も優しいし。」
「ふふふ、ユウキったら、やっと本音を言ってくれるようになったね。
そんなユウキにお願いがあるんだ…」
ユウキがスキルを付与したリングが欲しいとお願いされた。
これから告白だ。
夜景の見えるお店を予約した。
プレゼントはセリナの為に、同じリングを3つ買って、1番上手くスキルを付与できた物をあげる。
まだ今は【精神上昇(小)】が1番良いスキルだけど、いつかもっと凄いスキルを付けて渡してあげたい。
おまえの為なら俺は頑張れる。
セリナ、喜んでくれるかな。
2人で手を繋いで歩いているとリヒトが道を塞いできた。
「ユウキ君、告白しちゃダメだ!
ユウキ君はセリナさんに魅了されているだけなんだ。」
「ユウキ君。聞いちゃダメだよ!叩きのめして!
リヒト君が嫉妬して、告白をやめさせようとしてるよ。」
「リヒト、男の嫉妬は見苦しいぞ。
やっとセリナの魅力に気付いたのか?」
「くっ、もうそこまで魅了が掛かってるなんて…。
親友として止めさせてもらうよ!ガハッ…。」
あまりにもうるさいから、もう喋れないようにぶちのめしてやった。
ふふ、もうセリナは俺のものだ。
次の日の放課後。
セリナとサラさんが騒いでいる。
声を掛けようと思ったら、2人で俺の話をしてるので聞き耳を立てる。
「うわぁぁ、セリナ!
そのリングって…やっぱりユウキ君に?」
「はい、昨日、ちゃんと告白してくれて。
ずっと大切にするからって。」
「あぁぁぁん、羨ましいなぁ。
ユウキ君、私もリング欲しいよぉぉ。」
「えへへ、いいでしょう?
付与も付けてくれたんですよ。」
「もうそれって、本気のやつじゃない!
いいなぁ、私も『魔女』になりたいよぉ。
ねぇ、やっぱり【魅了魔法】の効果ってあるの?」
え…
『魔女』…【魅了魔法】…?
「はい、面白いんですよ。この魔法!
最初はイタズラのつもりだったんですが、魔法が効いた時に顔がトロンってするのが面白くって。
3日後にはユウキから手を繋いできて。」
「………。」
あの日、恐る恐る手を繋いだ事を思い出した…。
セリナの掛けた夢から目が覚めていく。。。
やっぱり、この女を好きになるなんてあってはならない…。
「あはは、10日後には【魅了魔法】とも知らずに、セリナ、可愛いって。」
このクソ女が!
やっぱりおかしいと思ったんだよ…。
「あはは、セリナったら酷いね。
毎日、何回くらい【魅了魔法】を掛けてるのよ?」
「毎日、80~100回くらいですかね。
おかげで良いレベル上げになりましたよ。」
「うわぁ、ユウキ君。
【魅了魔法】漬けじゃない。」
クソが!俺はおまえのレベル上げに使われたのか…
ぶっ殺してやる!
「サラさんのことも綺麗で可愛いって言ってましたよ。
リングもおねだりしたら、すぐにくれますよ。」
ちょっ!おまっ!それ、本人の前で言うなよ…。
殺してやる!殺してやる!
「ユウキって無駄に精神が高いじゃないですか?
最初は本当に魔法が効かなくって。
最近は差し入れって、精神半減の毒薬を飲ませてます。
ユウキも馬鹿だから、ありがたがって飲んじゃって。」
おまっ!何を飲ませるんだよ…。
えぇ、馬鹿で悪かったですね。
毎日、感謝して飲んでましたよ!
殺してやる!殺してやる!殺してやる!
「それで、【魅了魔法】に気付いたリヒト君が、必死に告白を止めようとしてるのにボコボコにしちゃって。
リヒトがセリナを取ろうとしてるとかなんとか。
本当、リヒト君が可哀想で。」
おまえが言うか!
そう言えば…本気で叩きのめしたような気がする…。
殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!
「このリングも『精神上昇(小)』を付与する為に3つ同じものを買ったとか言って…
あはは、本当にどれだけ私にホレてるのよ。」
おまえが欲しいって言ったんだろうが!
殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!殺してやる!
「あら、ユウキじゃない。
私のお迎えに来てくれたのかな?
今、サラさんとお話してるから、もうちょっと待っててもらっていいかな?」
「よくも…よくも俺をおもちゃにしやがって…
おまえだけは殺してやる!」
「あはは、話を聞いちゃったんだ。
ユウキの為に中級レア職の『魔女』になったんだよ。
感謝して欲しいくらいなのに。」
「じゃかましいわ!
さっさと死ね。このクソ女が!」
「ブフッ…ちょっと!女の子を本気で殴るなんて…
信じられない!」
「黙れ!おまえだけは今ここでトドメをさしてやる!」
「ちょっ!待って!話を!
ねぇ、私はユウキの為を思って…キャァァァァァァ!」
中級レア職『魔女』
状態異常系の魔法や【浮遊魔法】を得意とし、成長すれば、少しではあるが【転移魔法】も覚える。
昔、状態異常を犯罪に使う『魔女』が続出。
『魔女』狩りと称した犯罪者の粛清が行われたらしい。
次の日。
総合順位クラス5位とセリナが対戦する。
今日勝てばセリナが5位になる。
相手は中級職『ランサー』『盾使い』。
攻撃や魔法を盾で防いで、得意の槍で反撃する形を得意とする。
終始、試合は一方的な展開となった。
セリナの【風魔法】に対戦相手は近寄ることすら難しい。
ダメージを受けながら、やっと近寄けたと思ったら、待っていたのは【麻痺魔法】。
後はもう一方的だった。
中級職『魔導師』と『風魔法使い』に『魔女』が加わり、同年代の並みの相手ではもう手が付けられない。
『大魔導師』セイラが天才と称賛する片鱗が早くも見え隠れしていた。
「ねぇ、ユウキ。
見ててくれた?ちゃんと勝ったよ。」
セリナがそう言って、性懲りもなく抱き付いてこようとする。
「触るな!
どさくさに紛れて、また【魅了魔法】を掛けようとしただろ!」
「もう!ちょっとくらい、いいじゃない。
麻痺させて動けなくしてから、ずっと魅了してあげようと思ったのに。」
「よけいタチが悪いわ!」
本当にこの女は…。
こうして、セリナも新しい職業を覚え、順調に強くなっていく。
サラと魔法職が被っていったセリナにとって、『魔女』になれたことは非常に大きかったと言えよう。
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