第31話 7歳9月 強くなったユウキと先輩との手合わせ

だぁぁぁぁぁぁ!


来る日も来る日も

朝から晩までダンジョンにこもって!


俺は…俺は一体何をしてるんだ…。


人並みに過ごしたい。


そう思っていただけなのに。。。


6歳にして親に売られ、7歳にして訳アリの婚約者ができ、魔族討伐パーティーにまで加わって…。


挙げ句の果てには借金まで背負わされ、パーティー運営資金まで1人で稼いで来いって…。


人並みとは最も程遠い人生を送っているかもしれない。。。



元々、長期休暇はダンジョンにこもるつもりでいた。

しかし、あの女から課せられたノルマが重すぎて、このペースでも追い付かないのだ。


クソが!

俺の人生はどうなってやがる!?


自分でも分かる。

日に日に心が荒んでいくのが…。

日に日に言葉が汚なくなっていくのが…。



毎月600万G。

長期休暇でしっかり稼ぎ、後期は学校を週2回休めばギリギリいける金額。

逆に言えば、学校を休んでまで稼がないと無理な金額だ。


あの女は俺が小学生だってことを忘れてるんじゃないか?

確か義務教育だったよな?

なぁ、何か間違ってないか…



この劣悪な環境はユウキをさらに追い込む。

心や教育、倫理の問題を無視して、レベル上げだけに焦点を当てれば、理想の環境と言えるだろう。


この長期休暇でユウキは8職業のレベルが上がり、ステータスも一回り成長した。


特に魔法系の職業だ。

ただでさえ、人よりも圧倒的に多いMPがマジックポーションで回復する。

MPを使い切るのに時間が掛かるようになってきていた。


さらに精神が遂に500を越えた。

精神は基本的に魔法防御と回復力に影響するステータスだ。

敵からの魔法攻撃のダメージが目に見えて落ちてきている。


『僧侶』LV15で覚えた【精神上昇(小)】(精神上昇補正+20%)の効果も含めると、ユウキの精神は実質600を越える。

精神だけで見れば、もう完全に上級冒険者のステータスだ。


38階層に初めて来た当初は、敵の範囲魔法で平均23ダメージ受けていた。

装備に助けられている部分もあるが、それが今や平均12ダメージだ。

しかも、【闇魔法】を展開すれば、2回に1回は盾でダメージを軽減できる。

『吟遊詩人』のバフを掛ければ、さらにダメージは減少する。


多少、敵に囲まれた程度では気にもしなくなっていた。


相変わらず攻撃系のスキルが乏しい為、倒すまでに時間が掛かるのは変わってないが。


38階層のエレメントコア相手では、自分が強くなっているのかどうかもよく分からない。

1度、強い魔法使い相手にどこまで自分が通用するのか試してみたい。

ユウキはそう思うようになっていた。



そして、その機会は思っていた以上に早くやってきた。


「ユウキ、師匠が来てもいいって言ってくれたよ。

サラさんが私の彼氏を見てみたいって。

お世話になってるから、ちゃんと挨拶してね。」


サラさんはセリナの師匠の娘さん。

セリナの姉弟子みたいな関係だ。

5年生のAクラス2位だと聞いている。


「まだ彼氏とか言い回ってるのか?」


「あら、未来の旦那様とかの方がいい?」


「おまえと結婚する未来は死んでも訪れんわ!」


「じゃ、彼氏でいいじゃない。

まだ、愛人とかは早いと思うし。」


ぐっ…どうやったら、この女は俺から離れてくれるんだよ。


「はぁぁぁ。もう何でもいいわ。

訂正するのも面倒だから、話だけは合わせといてやる。

絶対、くっつくなよ!」


「何を言ってるの?当たり前じゃない。

師匠の前でそんなことできる訳ないでしょ?」


なっ…なんで俺が指摘されなきゃならんのだ。

おまえにだけは死んでも言われたくないわ!




「ユウキと申します。

本日はよろしくお願い致します。」


「えへへ、師匠。私の彼氏のユウキです。

私なんかよりも全然強いんですよ。」


そう言って、セリナが腕を組んで、肩に顔を乗せてきた。


「おい!離れろよ。」


おまえ、くっつかないって言ってただろうが!

頭が腐ってるのか?


「ふふ、ユウキ君。

レベッカから話は聞いてるわ。

今日はサラにも良い経験になると思うから、よろしくお願いするわね。」


「はい、よろしくお願いします。」


「あなたがセリナの彼氏君?

うわぁぁ、想像してたよりもずっと可愛い。

セリナが嫌になったら、私と付き合わない?」

「え…?」


「ちょっと、サラさん!

ユウキは私の彼氏なんだから、手を出しちゃダメ!」


「あはは、冗談。冗談だから。

しかし、こんな可愛い顔して、大人の冒険者2人を相手にして勝ったんでしょ?

俺の女に手を出すな、だっけ?

それはキュンってしちゃうね。」


「そうなんですよ。

私もあの時にクラっときちゃって…

もうこの人しかいないって。」


「いいなぁ。私もそんな彼氏欲しいなぁ。」


なに…何なのこの会話は…

しかも、話がだいぶ盛られてるし…

俺は戦いに来てるんですけど。。。


「はいはい。ユウキ君が困っているわ。

早速、始めましょうか。

サラ、準備はいいの?」


「はーい。彼氏君、よろしくね。」

「よろしくお願いします。」


装備はダンジョン用の物を装備してきた。

エレメントコアとの強さの違いも比較したかったからだ。


「最初は様子見でいくよー。」

「お願いします。」



◆サラ視点


「サラさん、まだ大丈夫です。

ドンドンお願いします。」


「う…嘘でしょ…?」


私の全力の【火魔法(中)】を受けて、平然としている。

正直、軽く相手にしてあげればいいかと思ってたのに…



最初は和やかな雰囲気で始まったセリナの彼氏君との手合わせ。

でも私はすぐに和やかではいられなくなった。


私の職業は

火系中級職『爆裂魔法使い』

土系中級職『重力魔法使い』

そして、中級職『魔導師』。

この歳で3つの中級職を持つ超エリート。


のはずなのに…


セリナの彼氏君は盾を構えようとすらしない。


それどころか、少し狙いを外して撃てば、自分から当たりにいくのだ。

まるで、私の魔法の威力を確かめるかのように。


「サラさん、遠慮せずにもっとお願いします。」


10m先から、セリナの彼氏君が叫んでくる。


「もっとって…あれじゃ、物足りないと言いたいわけ?」


イラッとした。


私は尊敬する母『大魔導師』セイラの娘。

プライドがある。

ここまで私の魔法をコケにされて黙っていられない。


全力の【火魔法(中)】の3連発。

喰らいなさいっ!

もう泣いても許してあげない。


まただ、盾を構えようともしない…。

私を舐めるのも大概にしなさいよ!


3発が直撃。

やっと彼氏君が盾を構え出した。


ふふ、私を怒らせてから盾を構えても遅いのよ。

もう盾を使わせてすらあげない。


私の【重力魔法】で這いつくばらせてやる。


え?何で?

どうして普通に動いてるの?


ウソよ…。


ウソよ。ウソよ。ウソよ。ウソよ。

私は【爆裂魔法】を連発する。


【爆裂魔法】は範囲魔法だ。

盾を構えても、ダメージを防ぎ切れない。


はぁ…はぁ…はぁ…


しまった!

大人気なかった…

【爆裂魔法(中)】7発は同じAクラスの子でもキツイ。

3つ下の子じゃ、危ないかもしれない。


セリナ、ごめん!

彼氏君の怪我は大丈夫?


えっ…


なんで…

なんで平然と立ってるのよ!


「サラさん、流石ですね。

だいぶダメージを受けてしまいました。

もっと色々混ぜてもらってもいいですか?」


はぁ?本気で言ってるの?


えぇ、分かったわ。

もう大怪我しても知らないから。

お望み通り、土も重力も火も爆裂も全て使ってやる!



あれ何か魔法を使った?

さっきと場の空気が変わった。


何をしたか知らないけど、もう関係ない。

彼氏君が倒れるまで、魔法は止めてあげない。


「う…嘘でしょ…。」


私の魔法の半分ぐらいが盾で防がれている。

まるでどこに何の魔法が来るか、分かっているみたいに。



はぁ…はぁ…はぁ…


私のMPは遂に無くなった。

もう何発撃ったかも覚えてない。


あは…は…、私はもうダメ。

彼氏君も膝を付いている。

だいぶキツそうだ。



そんな…

彼氏君が【回復魔法】を使い、平然と立ち上がった。


ちょ、ちょっと待って。

私のMPはもう残ってないのよ。


まさか…もう普通に動けるの?


あれだけ私の魔法を受けて、なんで今の今まで回復もしてないのよ。

まるで私の魔法が…弱いみたいじゃない。


悔しい…

毎日毎日、これだけ努力してるのに…。


昨日もお母さんに褒めてもらったばかりなのに。

3つも下の子に勝てないなんて…。


お母さん、ごめんなさい。


涙が溢れてきた。


「ヒック…負げまじだ…ヒック…」


彼氏君…いや、ユウキ君って言ってたかな。


次は絶対に負けない。

私が勝ってみせる!


ステータス

ユウキ 7歳


HP 503/503

MP 482/482

体力 407

力  360

魔力 469

精神 510

速さ 416

器用 391

運  236

吸収 7


職業

戦士 LV9(273.58/900)

火魔法使い LV10(301.42/1000)

水魔法使い LV8(576.52/800)

土魔法使い LV8(705.07/800)

風魔法使い LV9(7.49/900)

僧侶 LV15(937.90/1500)

盗賊 LV10(788.56/1000)

武道家 LV8(211.89/800)

吟遊詩人 LV11(510.47/1100)

植物魔法使い LV9(47.33/900)

付与魔術士 LV7(290.03/700)

剣士 LV6(388.19/600)

盾使い LV8(488.58/800)

狩人 LV10(463.31/1000)

薬師 LV8(147.12/800)

魔物使い LV2(127.48/200)

槍使い LV3(35.44/300)

遊び人 LV5(248.74/500)

斧使い LV2(111.36/200)

弓使い LV4(269.75/400)

生活魔法使い LV3(240.64/300)

闇魔法使い LV5(179.86/500)

光魔法使い LV3(35.53/300)


スキル

経験値吸収 LV7(347.49/700)

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