第27話 7歳7月 闇魔法と悪魔の手先

【経験値吸収】により、『闇魔法使い』のLVが1に上がった。


それからだ。

【闇魔法】の気配が明確に分かるようになったのは。

リヒトを中心に魔力が8mほどの円形状に伸びている。


【闇魔法】の1つで、この円形に中にいる物の気配や動き、話し声が明確に分かる効果がある。

【気配遮断】や【気配察知】とかなり相性がいい。

ソロの俺との相性も抜群と言えるだろう。


MPだけは大量にある。

『闇魔法使い』のレベルを一気に上げてみるか。



そして…

誰があの女に情報を流していたのか、ハッキリした。

そう、リヒトだ。


リヒトは俺が誰かと話す時はさりげなく後ろに回り、その【闇魔法】を使ってきた。

気が付けば、俺はリヒトの使う【闇魔法】の範囲の中に入っているのだ。

それも1度や2度の話じゃない。毎回だ。

明らかに俺の会話を拾い集めている。



そういうことか…。


おまえかぁぁ!

あの悪魔に情報を流していたのは。


クソが!

ずっとおかしいと思っていた。

あの女が知るはずも無い情報を何故知っているのか?


よくも!よくもやってくれたな。

この前の裁判もおまえの密告せいか。


なぁ、俺がどんな目にあったか…。

あの絶望がおまえに分かるか…?

何をしても無駄。

心も身体も理不尽の塊にへし折られる、あの気持ちが。。。


何のつもりであの女に情報を流してるか知らないが、悪魔の手先も悪魔と一緒だ。


いつかぶっ殺してやる。



リヒトが白々しく話し掛けてきた。


「やぁ、ユウキ君。

この前、レベッカさんが上機嫌でうちに飲みに来てね。

ユウキ君が約束を破ったから、懲らしめるって楽しそうに…。

だから、その…心配してたんだ。」

「あぁ…酷い目にあったよ…。」


おまえのせいでな!


「あの悪魔が知るはずもない話を何で知ってるのか、濡れ衣まで被せられてさ。

もう死ぬかと思ったよ。」

「それは大変だったね。同情するよ。。。」


どの口が言ってやがる!

人を地獄に突き落としておいて…。


「俺とセリナの2人しか知らないはずの会話を、あの悪魔がどうやって集めてるのか。

何か心当たりないか?」

「うーん、何かのスキルを使ってるのかも知れないね。

あの人もいくつか職業があるみたいだし。」


白々しいヤツめ…。

もうお前の手口まで、こっちは掴んでるんだよ。


「まぁ、あの女の仲間がいれば、ぶっ殺してやろうと思って。

あの女にやられた分、念入りにやり返さないと。

怪しい奴がいれば教えてくれ。」

「あぁ…分かった。僕も協力する。

そういうのは得意なんだ。任せておいてよ。

怪しい人を見かけたら、報告するよ。」


チッ、あくまでも知らぬ存ぜぬか。

まぁ、いい。牽制ぐらいにはなるだろ。


もうこれからはお前の前では油断しない。



【闇魔法】

魔族が得意とする魔法で、人間の使い手はかなり少ない。

攻撃系の魔法も覚えるが、精神攻撃や諜報用の魔法を多く覚える。

成長すると中級職『暗黒魔法使い』→上級職『暗黒魔導師』へと成長していく。



【闇魔法】は現在考えている逃亡計画の切り札になるかもしれない。

絶対にあの女にだけは使えることを知られてはならない。


リヒトが学校にいる以上、学校でも使わない方がいいな。

しばらくはダンジョン内、限定にしとくか。



そう、俺はあの女から逃亡を考えている。

まぁ、正確には自分を買い戻すということになるか。


この先もあの女の元で、従者をやり続けるなんてゾッとする…。

どこかで心が壊れるだろう。。。


最大の問題はもちろんお金だ。


俺個人の借金は先月終わりで約6千万G。

さらに従者の契約解除金が3千万G。

計9千万Gを払えば自由になれる。


逆に言うと、それだけのお金を稼いでから逃げないと、実家に借金の請求がいく。

父さんのことはどうでもいいが、母さんや兄さん達が困るのだ。


あの女は借金が減れば、理由を付けて何か買わせてくる。

この借金は減らないと考えておいた方がいいだろう。


では、どうするのか?


9千万G、こっそりと貯めて一括返済できるようにしなければならない。

しかし、月々の返済もある。

要は今まで通り返済しながら、あの女にバレないように裏で金を貯め続けて返済するしかないのだ。


月々の稼ぎは順調に増えている。

このペースでいけば、今月は430万Gぐらいになりそうだ。

毎月400万G返済して、残りは貯めていけば、少しずつでも金は貯まる。

強くなれば、まだまだ稼ぎは増えるだろう。


学校卒業までに借金を返済して

俺は自由の身になるのだ。

これしか、人並みに過ごす道はない…。



嫌で嫌で仕方ないが、金が貯まるまではあの女の元で生きていくしかないだろう。


リリス様の許可が降りれば、俺はリーシャの屋敷で、あの女と3人で暮らすことになる。


本当に嫌だ。死ぬほど嫌だ。吐き気がする。


リーシャと暮らすのはまだいい。

手を出さなければいいだけの話だ。


問題はあの女だ。

一緒に暮らすとなると、嫌でも顔を合わせる機会が増える。

その分、奴が俺に何をしてくるか、分かったもんじゃない。



そして、もう1つ。セリナだ。

あの女はセリナを高く評価していた。


急にセリナと仲良くなれと言ってきたのだ。

何でも将来、セリナの魔法使いとしての才能が必要になる可能性が高いとかなんとか。


ろくに見たことも無いくせに、セリナの何が分かるんだよ。


一体、何を考えている。

冒険者パーティーでも作るつもりか?

絶対、俺はそのパーティーには参加しないからな。


「あはは、ユウキ。試合見ててくれた?

ねぇ、また勝ったよ。褒めて、褒めて。」


最近、確かにセリナは絶好調だ。

クラスの総合順位は7位にまで上がっていた。


もう5位まで上がるのは時間の問題だろう。

後期に5位までに入れば、王国選抜戦に呼ばれ、王都で戦うことになる。

そうなると、セリナに注目が集まり始める。


あの悪魔は、それまでに男として、セリナを落とせと言ってきた。

要は恋人になって、セリナが他所に行かないようにしろと言いたいのだ。


俺にセリナとの浮気疑惑を掛けてきたくせに、もう言ってることがめちゃくちゃだ。


俺にだって女性を選ぶ権利はある。


あの女はリーシャが1番であれば、リーシャのことは気にしなくていいと言ってきた。

ゆくゆくはリーシャの為になるんだとか。


もちろん、セリナとそういう関係になる気はないが。


「ねぇ、ユウキも頑張ってきてね。

その…勝ったらデートしてあげるから…。」


セリナが顔を赤くして言ってきた。

な、なに照れてるんだよ…。


「勝つけど、デートは頼んでないから。」

「あはは、ダメよ。

私もユウキと行きたいところがあるの。」

「おまえが行きたいだけだろうが!」

「もう!いいじゃない。

乙女が誘ってあげてるんだから。」

「ハヤテかジロウにお願いしろ。」

「あの2人はユウキと行ってこいって。

後で嫉妬されても困るからって。」

「何で俺が嫉妬するんだよ!」


本当にこの女は…。

もういい加減、俺のことは諦めてくれればいいのに。




相変わらず、38階層で戦う日々は続いている。

【闇魔法】を覚えたことにより、さらに効率が上がりそうだ。


【闇魔法】を展開することにより、エレメントコアが魔法を放つタイミングが分かってきたのだ。

範囲魔法で受けるダメージを盾で軽減して、攻撃に移る。

もちろん、まだ全てを軽減できる訳ではない。

それでも、2回~3に1回、軽減できるだけでも全くダメージが違う。


少しずつ各職業の長所が繋がってきている。

さらにレベルが上がり、スキルを覚えれば、もっとやれることの幅が広がっていく。


『勇者』の時のような、圧倒的なステータスやぶっとんだ威力のスキルは無い。

それでも、着実にできることが増えていく。

あの頃とは違った強さを感じることができて楽しかった。


今月はレベルこそ、『弓使い』『生活魔法使い』『闇魔法使い』の3つしか上がらなかったが、得たものはもっと大きいように感じる。

それに、今月レベルが上がらなかった分、来月、再来月に各職業のレベルが上がってくる。


長期休暇が終わる頃には、もう一回り強くなっているはずだ。


いつまでも、あの悪魔のいいようにやられはしない。


ククク…

少しずつ、あの悪魔と戦える目処が立ってきた。

見てろよ。

いつまでも、おまえに搾取され続ける俺じゃないからな。



こうして、ユウキは逃亡計画とレベッカへの復讐を進めていた。


しかし、数日後、逃亡計画を早々に諦め、さらに強くなる道を選ぶことになる。

リリスからリーシャの職業について、聞かされてしまったからだ。



ステータス

ユウキ 7歳


HP 459/459

MP 423/423

体力 369

力  328

魔力 410

精神 445

速さ 380

器用 358

運  209

吸収 7


職業

戦士 LV8(565.38/800)

火魔法使い LV9(194.39/900)

水魔法使い LV8(368.68/800)

土魔法使い LV8(497.23/800)

風魔法使い LV8(599.65/800)

僧侶 LV14(977.14/1300)

盗賊 LV9(711.46/900)

武道家 LV7(558.45/700)

吟遊詩人 LV10(878.33/1000)

植物魔法使い LV8(681.20/800)

付与魔術士 LV7(290.03/700)

剣士 LV6(388.19/600)

盾使い LV7(445.16/700)

狩人 LV9(622.31/900)

薬師 LV8(147.12/800)

魔物使い LV2(127.48/200)

槍使い LV3(35.44/300)

遊び人 LV4(326.92/400)

斧使い LV2(111.36/200)

弓使い LV4(63.65/400)

生活魔法使い LV3(137.14/300)

闇魔法使い LV2(155.66/200)


スキル

経験値吸収 LV7(78.43/700)



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