第25話 7歳6月 信用できない友達と約束を破るユウキ

前期の総合順位に大きく影響する個人戦。


目の前で総合順位4位と5位の2人が戦っている。

ハイレベルな2人の戦いに歓声が上がる。


4位のジークの技術は確かに目を見張る物がある。

スキルに頼らない戦闘技術なら、クラスでもトップを争う。

さすがAクラス4位と言ったところか。


しかし、動きが遅いのだ。

そんなスローな攻撃なら、俺にだって同じことができる。

結局、ステータス差がありすぎて、見てても面白くも何ともない。


近頃、ユウキは学校に来るのが苦痛で仕方なかった。

義務教育でなければ、とっくにやめていたかもしれない。


「はぁぁぁぁ。」


俺の試合が終わるまでは帰れない。


まだ試合まで1時間以上もある。

ジロウに出番が近くなったら、起こしてもらえるように頼んだ。

木陰で昼寝でもしよう。



寝ようと思っていたら、突然、声を掛けられた。


「ユウキ君。僕も試合を見てても退屈で。

少しお話しない?」


2年生からAクラスに上がってきたリヒトだ。

自己紹介では『盗賊』『狩人』とか言ってたっけ?

話すのは初めてだ。


「へぇ、珍しい。

みんな対戦相手の研究に忙しいのに。」

「ふふ、僕もあんまり試合には興味が湧かなくって。

それなら、前から興味があったユウキ君とお話ししてみたいと思ってさ。」

「興味があったとは?」

「ふふ、ユウキ君のことは前々からレベッカさんに聞いてて。」


何だこの気配は?

妙に気配が薄いというか…

【気配遮断】だけではない。他にも何かある。

警戒して、少し距離を取る。


「ふふ、警戒しないで。

僕ではどう足掻いてもユウキ君には勝てないから。」

「あの悪魔…先生とはどういう関係だ?」

「あはは、あの悪魔って。

確かにレベッカさんの理不尽は病気みたいなもんだから。

あぁ、僕は昔からの知り合いなだけだよ。」


「あの悪魔の理不尽さが…分かるのか…?」

「うん。あのレベッカさんの従者なんでしょ?

僕がユウキ君なら、きっと人生に絶望してる。」

「そうか…分かってくれる人がいるんだ…。

聞いてくれよ。

あの悪魔ときたら…」

「あはは、それは酷いね。

レベッカさんらしいけど。」

「それなのに、あの女ときたら、バレたら開き直って蹴るわ殴るわ。

最後は俺のせいになってたし!」

「あはは…。

それはエグいね。。。

心の底から同情するよ。」


「ユウキ君。そろそろ試合だから行くよ。

今後は友達ということで、握手してもらってもいいかな?」

「あぁ、よろしくリヒト。」


先生の愚痴を言える人間は他にはいない。

仲良くなれるかもしれない。


そう思った瞬間だった。


チッ、リヒトが何かの魔法を掛けようとしてきた。

精神が高い俺には効かない。レジストする。

何が友達だ!それが友達のすることかよ?


やっぱりあの女の知り合いは信用できない。


お返しにこちらは【経験値吸収】を発動する。


やっと見つけた!ずっと探していた職業。

リヒトはレア職『闇魔法使い』か!?


こうして、リヒトと友達?になった。

ユウキは【経験値吸収】の為に、リヒトは何らかの目的の為に表面上は会話するようになった。

お互い探り合いのような関係が、しばらく続くことになる。




先生にセリナへのイジメの相談をしてから1ヶ月ちょっとが経過した。


ケンタの謝罪後、勢いは衰えていたもののセリナへの嫌がらせは続いてた。

しかし、ここにきて、マリーとその取り巻き達の嫌がらせがピタリと止まったのだ。


先生が裏で何かしてるのかもしれない…。


それどころか、当のマリーが上の空になっていることが多い。

ため息ばかり付いている。

総合順位も少し落ちて9位まで下がっていた。


マリーがイジメをやめれば、先生との約束を守らないといけなくなる。

気が重くて仕方がなかった。


先生との約束。


リーシャのお母さん、リリス様がこちらに来られた際、俺とリーシャの仲睦まじい姿を毎日リリス様にお見せする。

リーシャの幸せそうな所を見てもらい、リリス様を安心させてあげて欲しい。

それだけでいいと言われたのだ。


娘さんを下さい的なことは絶対に言わない。

そこだけは何度も確認して、交換条件でセリナを助けてもらえるようにお願いした。


正直、あの時はそんな約束ぐらいで、セリナとその家族への手出しが無くなるなら、お安いご用だと思っていた。


しかし、あの時と今とでは状況が異なっている。

リーシャが婚約者のように接してくるようになったからだ。


そんな姿をリリス様に見せたら最後、もう型にはめられるのではないか?

そうでなくても、リーシャからの同棲のお誘いは続いている。


気が付けば、逃げ場が次々と無くなっていく。。。

ユウキは気が重くて仕方が無かった。


「はぁぁぁぁぁ。」



ユウキは心の中でマリーに呼び掛けていた。


なぁ、マリー。

お願いだから、少しぐらいはセリナに嫌がらせしてくれよ?

このままだと、先生との約束を守らないといけなくなるんだ…。

リリス様の前で婚約者のように振る舞うなんて、俺には荷が重いって。。。

なぁ、頼むって、マリー。

セリナへの嫌がらせなら俺も手伝うから。

お前だけが頼りなんだよ。



ユウキも大概、自分勝手な奴だ…。

自分が約束から逃れる為にマリーに嫌がらせを頑張ってもらわないと困るのだ。。。


レベッカにセリナを助けてもらっといて

いざ、自分が約束を守らされる番になると、なんとか回避しようと必死なのだ。

少しでも嫌がらせしてくれさえすれば、レベッカに言い逃れができる。


もちろん、逃げ切れる訳はないのだが。。。



そんなユウキの気も知らないで、セリナが今日も抱きついてきた。


「ねぇ、ユウキ、これも預かってもらっていい?」

「嫌だ。」

「あはは、ダメだよ。

また嫌がらせされるかもしれないでしょ?

それに、もう私達2人のマジックバックみたいなものだし。」

「図々しいわ!私達2人じゃない。

俺のマジックバックだ!」

「あはは、ねぇ、ユウキ。

その鞄の中に私の下着も入ってるの。

あの…ユウキが欲しいなら、お礼に1つくらいなら持っていってくれてもいいから…。」


顔を赤くしながら、セリナが言ってくる。。。

恥ずかしいなら言うなよ!


「いるか!そんなもん!」

「あとね、飲み掛けのお茶も入れてるから…。

その…間接キス…なら、してもいいよ。」

「砂漠で干からびて死にそうでも、そのお茶にだけは手を出さんわ!」


本当にこのクソ女だけは…。


この女を助ける為に、先生とあんな約束までしたというのに。。。

1ヶ月前の俺は何が楽しくて、この女の為にあんな約束をしたんだ?

正気に戻るように過去の俺をぶん殴ってやりたい…。



そんなある日。


「ふふふ、ねぇ、ユウキ君。

私との約束は覚えているわよね?

セリナちゃんはもう嫌がらせされてないって聞いてるわ。」


レベッカはもう嫌がらせが無くなったことを複数の筋から確認して話を持ってきていた。

当然、約束を守ってもらうつもりである。


しかし…ユウキは自分可愛さに約束から逃れようとする。

まだ、嫌がらせは終わっていないと言い張ったのだ。


「はい、もちろん覚えています。

ただ残念なことにセリナはまだ嫌がらせされるかもしれないと言い、こうしてセリナの荷物を預かっています。

この状態では約束は守れませんね。」

「あら、エリナさんにも確認してるのよ?

いくら何でも、それは酷いでしょ。」

「そうは言われても、実際、こうしてセリナの荷物を預かってますから。」

「へぇぇぇ、ユウキ君は私への恩も忘れて、そうくるんだ。

ねぇ、逆に聞くけど、いつになったら、約束を守ってもらえるのかしら?」

「さぁ、いつになるかはセリナに聞いてみないと。

長期休暇明けぐらいには大丈夫じゃないですかね?」


リリス様がこちらに来られるのは7月末だと聞いている。

そこまで逃げ切れば、俺の勝ちだ。

リリス様の訪問で、婚約者の真似事はせずに済む。

軽く挨拶した後はダンジョンにこもればいい…。


ユウキは逃げ切るつもりでいた。


「ねぇ、ユウキ君。リリスが来るのが7月末だと知ってて言ってるでしょ?

あはははは、私との約束を反古しようとする人を久しぶりに見たわ。

ふふふふふ、私も舐められたものね。」


ゴクリ…

嫌な予感がする。

約束を破ろうとしてるのに、この悪魔は嬉しそうにしているのだ。

コイツは自分の思いどおりにいかないと滅茶苦茶する。

この件に関しては俺に非があるのも分かっている。


いつもいつも、あんな理不尽な目に合ってるんだ。

少しぐらいこちらがやり返してもいいだろ。


ユウキはそんな軽い気持ちで、レベッカとの約束を突っぱねてしまった。


「もちろん約束は守りますよ。

セリナが安心して荷物を持てるようになれば。」

「クックックックック…えぇ、分かったわ。

約束を守りたくなったら、また教えてちょうだい。

もう私からは何も聞かないわ。」


先生はこの日以来、この件に関して何も言わなくなった。

不気味な態度は心に引っ掛かるが、何も言ってこない。

もう大丈夫だろうと忘れつつあった。


しかし、レベッカに限って、そのまま済ませる訳がない。

数日後、レベッカを甘く見た報いを受けることになる。



ステータス

ユウキ 7歳


HP 449/449

MP 410/410

体力 362

力  321

魔力 396

精神 432

速さ 370

器用 348

運  205

吸収 6


職業

戦士 LV8(427.98/800)

火魔法使い LV9(68.87/900)

水魔法使い LV8(368.68/800)

土魔法使い LV8(497.23/800)

風魔法使い LV8(599.65/800)

僧侶 LV14(291.71/1300)

盗賊 LV9(410.86/900)

武道家 LV7(409.72/700)

吟遊詩人 LV10(601.58/1000)

植物魔法使い LV8(588.95/800)

付与魔術士 LV7(290.03/700)

剣士 LV6(388.19/600)

盾使い LV7(289.50/700)

狩人 LV9(361.31/900)

薬師 LV8(147.12/800)

魔物使い LV2(127.48/200)

槍使い LV3(35.44/300)

遊び人 LV4(160.04/400)

斧使い LV2(111.36/200)

弓使い LV3(273.65/300)

生活魔法使い LV2(137.14/200)

闇魔法使い LV0(21.33/50)


スキル

経験値吸収 LV6(565.60/600)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る