第21話 7歳4月 深みにハマるユウキとそれぞれの成長
朝7時、先生との稽古の時間だ。
もはや何の稽古かも分からなくなってきた…。
「ねぇ、ユウキ君。はい、これ。
お嬢様にプレゼントをお渡ししてくれないかしら?」
「リーシャはもうすぐ来ますし、先生から渡してあげればいいじゃないですか?」
先生から顔面に正拳突きが飛んでくる…。
「グハッ…ぐっ、何するんですか?」
「本当に馬鹿なの?
私が渡しても意味がないでしょう。」
この野郎、また殴りやがって。
人を何だと思ってるんだよ!
「はぁ?」
また、蹴りが飛んできた…。
「ガハッ…」
最近、分かってきたことがある。
先生はリーシャが絡むと人が変わる。。。
普段は頼りになるし優しい人なのに、リーシャの為なら、平気で嘘は付くし、暴力も厭わない。
後で俺に嘘がバレても開き直って終わりだ…。
俺が怒っても返り討ちに合うか、返すことのできない借金を盾に脅される。。。
根っこの部分は悪い人ではないが、それ以外は信じてはならない。
根っこだけ綺麗な花で、根っこより上は食虫植物…。
つまり、食虫植物みたいなもの。
それが俺の出した結論だ。。。
「はぁ?じゃないでしょう。
こっちがはぁ?よ。
最近、私への態度に尊敬が感じられないわ。」
ぐっ、あんたのどこを尊敬したらいいんだよ?
「お嬢様を大切にするって約束したんじゃなかったの?
プレゼントの1つも渡そうとしないから、手伝ってあげてるのに。」
「ケッ…手伝いなんか、頼んでませんし。」
「ねぇ、次に口答えしたら、裸で学校に放り込むわよ?」
「なっ!」
この女なら本当にやりかねない…。
反抗しようにも悔しいが今の俺では全く歯が立たないのだ。
「はぁぁぁぁ。
しょうがないから、婚約指輪か、婚約指輪か、婚約指輪か、髪留めか、どれか選ばせてあげる。」
「えっ…。」
「私のオススメは2つ目の婚約指輪よ。
ふふふ、お嬢様が喜ぶ顔が目に浮かぶわぁ。」
いや、何個、婚約指輪があるんだよ。
おかしいだろ。。。
「すいません、、、髪留めでお願いします。。。」
「本当にヘタレね。」
ヘタレって、まだ俺は7歳だぞ。
将来を誓い合うには早すぎるわ!
「はい、髪留めの方ね。
ちゃんと借金に上乗せしておくからね。」
「えっ!?」
「当たり前でしょ。
あなたのお手伝いなんだから、文句があるなら私に言われる前にやりなさい。」
ぐっ…相変わらず、理不尽の塊みたいな奴だ。
最近、先生は本性を隠さなくなってきた。
「いい?前みたいにあそこの木の下まで手を繋いで、そこで渡すのよ?」
「はぁ…。」
「リーシャの綺麗な髪によく似合うと思ったら、付けてあげたくなったって言って、付けてあげるのよ?」
「え…。」
またこのパターンかよ…
しかも、難易度が上がってる。。。
当初は先生に命令されて、リーシャと付き合うことに忌避感があったが、順調に交際は続いていた。
これには2つ要因がある。
1つ目は先生の指示には、最終的に従うしかないからだ。
先生もリーシャを喜ばせたいだけで、そこさえ理解できれば、その気持ちは分からなくもない。
俺もリーシャのお母様に話を聞くまで、と割り切り、深く考えないようになっていた。
「お兄ちゃん!おはようございます。」
「リーシャ、おはよう。」
「うふふ、お兄ちゃん、聞いてください。」
そして2つ目は、この少女がとにかく可愛いのだ。
ただでさえ可愛いのに、この笑顔でニコッと笑う。
その笑顔に見とれてしまって、また笑顔にしてあげたくなる。
守ってあげたくなってしまう。
そんな魅力をリーシャが持っているからだ。
「もう!お兄ちゃん、聞いてましたか?」
「あぁ、ごめん、リーシャ。
ちょっと考え事をしてて。」
「何かお悩みですか?
リーシャで良ろしければ、お話を聞かせて下さい。」
「ぁぁ、大したことじゃないから。」
「あの…お兄ちゃん。その…手を繋いでも…」
ぁぁ…リーシャ。。。
そんな上目遣いでみないで、可愛い過ぎるから…。
リーシャと手を繋いで、いつもの木の下まで歩く。
そこのベンチに並んで座る。
これがいつものデートコースだ。
「その…リーシャ…」
「どうしました。お兄ちゃん?」
「今日はリーシャにプレゼントがあって…。」
「お兄ちゃん。お気持ちだけで十分です。」
「大丈夫、ダンジョンで少し稼げるようになってきたから。」
これは事実だ。
この1ヶ月で稼いだ金額は325万G。
1日10万G以上の稼ぎだ。
まぁ、全て借金の返済に消えていく訳だが…。
大半はレアドロップによる物だが、魔石も他よりも高く売れる。
魔法生物の魔石は魔力が多く含まれていて、需要が高いらしい。
先生から渡すように指示されたプレゼントをリーシャに渡す。
「うわぁ…可愛い。」
リーシャがうっとりしている。
髪留めよりリーシャの方がよほど可愛い…。
「その…リーシャの綺麗な髪によく似合うかなって…。」
「お兄ちゃん。ありがとうございます。
リーシャはそのお気持ちが…とっても嬉しいです。」
ぁぁ…リーシャの笑顔に癒される…。
プレゼントしてあげて良かったと思ってしまう。
うわ…先生の思う壺じゃないか。。。
「あの…この髪留めを…その…お兄ちゃんに付けて貰っても…よろしいですか?」
ゴクリ…。
緊張して、手が震えてきた。
リーシャの髪に付けようとして、地面に落としてしまった。
「ごめん、リーシャ。
土が付いてしまって…その髪留めは、また明日付けてあげるから。」
「ふふ、お兄ちゃん。
土は払えばいいだけです。
それよりも…今、お兄ちゃんに付けて欲しい…。」
顔を赤くしたリーシャがせがんでくる。
ぁぁ…この顔をされると、何も断れなくなる。。。
こうして、ユウキはリーシャとの関係を深めていく。
「クックックックック、あはははは!」
レベッカは影から笑っていた。
ユウキだって、心のどこかで感じているハズだ。
自分がお嬢様をどう思っているのかを。
少し背中を押してやれば、もうユウキ自ら深みにハマっていく。
正にレベッカの思惑通りだった。
2年生からダンジョン攻略が本格的に始まる。
ダンジョン攻略は1パーティー4人。
これはハヤテ、ジロウ、セリナの3人と俺ですぐに決まった。
俺も異存は無い。
成長した所を見て欲しいと言ってきた。
俺も3人がどれくらい強くなったか楽しみだ。
ダンジョン攻略実習は1階層から順にパーティーメンバーで進めていく。
・前期の期間中に何階層まで進めるか。
・パーティーへの貢献度。
・魔物への理解。
それぞれがチェックされ、点数が付けられる。
2年生前期は11階層までたどり着けば終了。
後は11階層までなら、自由にレベル上げをしていてもいい。
本当なら転移部屋で10階層まで行ってしまいたいが
付き添いの先生と共に10階層まで辿り着き、中ボスを倒さないと転移部屋の使用は認めてもらえない。
既に中ボスを倒していて、戦えない場合は中ボスを倒せるだけの実力があるか確認される。
許可が降りれば、転移部屋の使用を認めてもらえる。
これは特に貴族に多いが、実力もないのに護衛に中ボスを倒させ、10階層への転移はできるが、実力はどうしようもないケースが散見されたからだ。
長期休暇中に努力したのだろう。
3人の成長が見て取れる。
ずっとレベル上げをしていただけあって、連携もしっかり取れるようになっていた。
ジロウはパーティーに足りない回復を重視。
『僧侶』のレベルを重点的に上げているようだ。
MPも順調に増え、今ではパーティーに居なくてはならない存在になっている。
次にセリナ。
『魔導師』のレベルが順調に上がり、手が付けられない。
魔法の威力だけではない。
【MP回復(微)】のスキルを覚え、微妙にではあるがMPが回復するらしい。
アタッカーとしての存在感がさらに増していた。
最後にハヤテ。
職業『盾使い』が増え、『武道家』と『盾使い』のレベル上げを並行して行っている。
ハヤテが後衛を守れるようになってくれれば、俺が自由に動けるようになる。
パーティーとして戦略の幅も広がっていく。
「ハヤテ!そこで【シールドバッシュ】。」
「分かった。」
「ねぇ、何でユウキが『盾使い』のアドバイスをできるの?」
うっ…セリナの突っ込みが妙に鋭い。
実は俺も『盾使い』だからとは言いにくい…。
「その…実家の兄さんが『盾使い』だったから。
ずっと見てたんだよ。」
「ふーん。」
「なんだよ?」
「ユウキって嘘付くとき、目が一瞬、上を向くんだよね。」
ぐっ…セリナに俺の嘘を指摘されるとは。。。
そう言えば、昔、『聖女』ユリアにも同じことを言われた記憶がある。
ふふ、懐かしい。
「ねぇ、ユウキ。
今、別の女のことを考えていたでしょ!
彼女の私に隠さなきゃいけないことなの?」
「彼氏になった記憶は欠片もないわ!」
「この前、抱きしめて告白してくれたじゃない。」
「はぁ?いつ、そんな奇跡が起こったんだよ?」
「一昨日、夢の中で…。」
「目が覚めるようにぶん殴ってやろうか?」
「夢ぐらい見せてくれたっていいじゃない!」
「またユウキとセリナが2人の世界に入ってるよ?
ユウキが入るとペースが落ちるな。」
「おい!その言い方だと、俺が足を引っ張っているみたいに聞こえるぞ!」
とにかく…
3人の成長を間近で見ると気合いが入る。
もっと俺も頑張らないと。
ステータス
ユウキ 7歳
HP 430/430
MP 392/392
体力 347
力 307
魔力 378
精神 413
速さ 350
器用 330
運 192
吸収 6
職業
戦士 LV8(171.18/800)
火魔法使い LV8(619.22/800)
水魔法使い LV8(368.68/800)
土魔法使い LV8(497.23/800)
風魔法使い LV8(599.65/800)
僧侶 LV13(24.97/1300)
盗賊 LV8(609.66/800)
武道家 LV7(135.42/700)
吟遊詩人 LV9(787.88/900)
植物魔法使い LV8(410.53/800)
付与魔術士 LV7(290.03/700)
剣士 LV6(388.19/600)
盾使い LV7(2.31/700)
狩人 LV8(687.31/800)
薬師 LV8(147.12/800)
魔物使い LV2(127.48/200)
槍使い LV3(35.44/300)
遊び人 LV3(142.98/300)
斧使い LV2(111.36/200)
弓使い LV3(93.65/300)
生活魔法使い LV1(78.54/100)
スキル
経験値吸収 LV6(332.58/600)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます