第19話 7歳3月 ユウキの黙りと先生への信頼と
◆ユウキ視点
速い!
これが俺と先生の差か…。
ステータス値が全てで負けてる訳じゃない。
精神なんかは明らかに俺の方が上だ。
俺の方が1回1回の魔法攻撃によるダメージは明らかに少ない。
それでも、結果的に先生の何倍もダメージを受けている。
原因は明らかだ。
スキルが無いことによる瞬間火力不足。
さらに、先生は速さのステータスが俺より高い。
魔物が1回攻撃してくる間に2回攻撃してしまうことが多い。
しかも、敵が多い時はスキルを使って一撃で倒すから、殲滅速度が俺の比じゃない。
結局はステータスとスキルとのバランスか。
ソロでやっていく以上、スキルで様々な状況に対応できるようにしていく必要がある。
全職業のLVを人並みにしたい。
ただ、それだけなのに、人並みに追い付こうとすればする程、強くなる必要が出てくる。
結局、行き着く先はレベルが低い。
そのせいで、スキルを覚えていないことが最大の問題なのだ。
「ユウキ君、ほら残りはお願いね。」
「はい!」
クソ!
【回復魔法(小)】も覚えたのに、俺はまだまだってことか。
それでも、ここでやっていけるようになれば、レベル上げの効率はさらに上がる。
しかも、ここなら魔物も狩りたい放題だ。
ここで食らい付いていかないと、人並みLVに追い付けはしない。
まずは先生にここで戦う許可をもらわないと。
残り20日で先生を納得させてみせる。
◆レベッカ視点
「で、ユウキ君。
あなたの職業を全て教えてもらえるかしら?」
「………。」
「ねぇ、聞こえてるのかしら?」
「………ハイ。」
ぐっ、イライラする。
さっきから職業の話になると、ユウキは黙りを決め込んで何も話そうとしないのだ。
こっちで把握してるだけでも13の職業がある。
多分、まだ他にもある。
それに何らかの特殊スキルを保持している可能性が高い。
そこまで聞き出したいのに、話が一向に進まない。
あんたの成長の為にやってるのに、なんでそんなに非協力的なのよ!
我慢。我慢よ。レベッカ。
仕方が無いので、1つずつ聞いて書き出していく。
「『植物魔法使い』はお嬢様にLV8って言ってたわね?合ってる?」
「………ハイ。」
「次は『僧侶』ね。LV12になったところね。
その次は…」
学校で公表してる職業3つと『狩人』『盗賊』の2つを書き出し、これで7職業。
「まだあるでしょ?正直に話して。
あなたの育成方針を決めていく為に必要なことなの。」
「こ、これで…全部です。」
ぐっ、ユウキ、コイツ。
人が優しく聞いてあげてるのに。
「そんな訳はないよね?
38階層で『吟遊詩人』のスキルでバフを掛けてたでしょ?」
「いえ、歌っていただけで…ガハッ」
コイツ、まだ言うか!?
イライラが頂点に達し、手が出てしまった。
もういい。身体に直接 聞いた方が話が早い。
「人が優しく聞いてあげれば、嘘ばかり付きやがって…
さっさと吐け!コラ!」
「ヒィッ…」
私の突然の豹変ぶりにユウキが驚いているが関係無い。
ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!
頭を掴んで壁に叩き付ける。
涙目になって鼻血を流しているが、これもコミュニケーションの一環ということにしておこう。
「ゴホン。ねぇ、ユウキ君。少しは思い出してくれたかしら?」
ニッコリ笑って優しく聞き直す。
「ヒィッ…は、はい!思い出しました。
『吟遊詩人』『弓使い』『盾使い』にもなれます。」
へぇぇ、『弓使い』と『盾使い』は知らなかった。
これで15職業は確定した。
「あら、3つも思い出したのね?これで全部かしら?」
「はい…これで全部です。」
この子は嘘を付く時、一瞬、目が上を向く。
はぁぁぁ。
まぁ、まだ、嘘を付いてるのは分かりきってはいるが。
「本当に全部かしら?」
「………ハイ。」
おい!嘘付くなら、せめて、もっと上手くやれよ!
何でそんなに目を反らしながら言うかな。
「はぁぁぁぁ。もういい。」
「え?」
「あなたが可愛いがってるピー助だっけ。
ほら、あの小鳥の魔物よ。
どうやって連れてきたのかしら?」
「す、すいません…。
『魔物使い』を忘れてました。」
「まだあるでしょ?
ねぇ、ユウキ君。私も暇じゃないの。」
「……ハイ。」
「ほら、従者の契約書にも隠し事は致しませんって書いてあるでしょ?」
「実は…『水・風・土魔法使い』にも…。」
へぇぇぇ、風と水は知ってたけど土も使えるんだ。
これでこっちが把握していた物も含めて、下級職ばかり16職業…。
こんなの聞いたことがない。
これだけの職業のレベルが全て25になり、中級職になれば、どんな化け物ができあがるのだろう?
クックックックック
そうなれば、クソみたいな貴族を何人か、ぶっ殺してもらおうかしら。
まぁ、これだけの職業を全て中級職だなんて、不可能に近いんでしょうけど。
まだ、隠していることは分かっているけど、いったんこれでいいか。
「ねぇ、誰にも言わないから。
どうして、こんなに職業を覚えたか、分かってることを教えてくれないかしら?」
「………。」
「ねぇ、ユウキ君。
何か特殊スキルを持ってるんじゃない?」
「………。」
ダメだ。目を瞑って耳を塞ぎ出した。
特殊スキルを持っていると言ってるような物だが、何らかの理由で言いたくないのだろう。
これ以上、強引に聞き出すと今後の関係に響く。
「もういい。ありがとう。
もう聞かないから、今後の話をしましょう。
しばらくは…」
・新しい武器と防具、マジックバックを購入すること。
・ここでお金を稼いでもらわないと、もう私の貯金が尽きること。
・今後の育成方針のこと。
以上、3つについて話し合った。
最初は私を警戒していたが、真剣に向き合おうとしているのを感じ取ってくれたのか
次第にいつものユウキに戻ってくれた。
そして最後に最も大切な事をユウキに伝える。
それは私を信じて欲しいこと。
「ねぇ、ユウキ君。
最後にこれだけは言わせて。
言えない事はもう言わなくていい。」
「………。」
「でも、私のことを信じてくれると嬉しい。
何があっても私はあなたの味方よ。」
「先生…その…ごめんなさい。
いつも僕の為に良くして下さるのに、言えないことばかりで…。」
そう言って、ユウキの瞳からポロポロと涙が溢れだした。
ユウキにも思う所はあったのだろう。
「ふふふ、ユウキ君、おいで。」
泣いている彼を抱きしめ、頭を撫でてあげる。
7歳にしてはステータスが凶悪だから、子供だということを忘れてしまいそうになる。
いつも頑張ってくれて、ありがとう。
それでも、お嬢様の為にあなたには成長してもらわないといけない。
◆ユウキ視点
20日後。
よし!いける。
何とか形になった。
昨日も今日も先生には何もしないように頼んである。
俺がここでやっていけることを証明しないといけないからだ。
装備を魔法耐性と魔法生物特攻が付いた物に変えてもらったのが大きい。
でも、それだけじゃない。
状況を見極め、自分なりに無理せず戦い続けられる状況を作れるようになった。
これでLVが上がれば上がる程、戦える幅も広がり、効率もさらに上がる。
今は魔法生物特攻が付いた武器も短剣と弓しか無いが、ここでお金を稼ぎ続ければ、剣、槍、斧も特攻が付いた武器に買い替えられる。
「ふふふ、ユウキ君。もう私がいなくても大丈夫そうね。」
「はい!これも先生のおかげです。」
「ユウキ君は頑張っていたもの。
これなら安心して見ていられるわ。」
「ユウキ君は運が高いのかしら?
レアドロップがちょこちょこ出るわね。
ここのレアドロップは1つ10~20万Gで売れるから助かるわ。」
「早くお金を返せるように頑張ります。」
「ふふふ、頼もしいわ。
無理して怪我をしないようにね。」
ここで戦えるようになったのは装備や戦い方、中ボスの討伐も含めて、全て先生のおかげと言っていい。
先生、いつも俺の為に…本当に感謝しています。
この人になら、【経験値吸収】のことをいつか話せる日が来るかもしれない。
「何があっても私はあなたの味方よ」
そう言ってくれた先生を信じて付いて行こう。
ハメられ脅されて、リーシャに告白させられたことは忘れ、ユウキはレベッカへ信頼を寄せるようになる。
何を勘違いしたのか、レベッカに母性すら感じるようになっていた。
しかし、2日後。
ユウキの心は粉々に踏みにじられることになる…。
ぐぁぁぁぁぁぁぁ!
どんな…どんな羞恥プレイだよ!
感謝して損した!
「あの女だけは絶対に許さない!」
リーシャが帰ってきたのだ。
それも、婚約者なんて最初から存在しないと言わんばかりに。。。
ステータス
ユウキ 7歳
HP 419/419
MP 385/385
体力 338
力 301
魔力 372
精神 401
速さ 344
器用 324
運 189
吸収 6
職業
戦士 LV8(21.18/800)
火魔法使い LV8(526.82/800)
水魔法使い LV8(368.68/800)
土魔法使い LV8(497.23/800)
風魔法使い LV8(599.65/800)
僧侶 LV12(509.81/1200)
盗賊 LV8(309.66/800)
武道家 LV7(14.54/700)
吟遊詩人 LV9(398.07/900)
植物魔法使い LV8(266.15/800)
付与魔術士 LV7(290.03/700)
剣士 LV6(367.88/600)
盾使い LV6(508.14/600)
狩人 LV8(477.31/800)
薬師 LV8(147.12/800)
魔物使い LV2(127.48/200)
槍使い LV3(35.44/300)
遊び人 LV3(22.98/300)
斧使い LV2(111.36/200)
弓使い LV3(3.65/300)
生活魔法使い LV0(12.54/50)
スキル
経験値吸収 LV6(242.39/600)
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