第16話 7歳2月 ユウキの女性関係と今後の展望
「あー!
あはは、閃いたかも。
あはははは、何だこういうことか。」
ある日、ダンジョン9階層でセリナが何がおかしいのか、急に笑い出した。
遂に頭までおかしくなったのか?
「ねぇ、ユウキ。見ててね。」
そう言って、【風魔法】で魔物に攻撃し始めた。
あれ?いつもより、明らかに威力が上がってる。
「えっ、ウソ!
みんな。私『魔導師』の職業が増えてる!」
「セリナ。良かったな。」
「凄い!セリナ、おめでとう!」
ハヤテとジロウがセリナを祝福している。
中級職『魔導師』、MPや魔力に特化してステータスが上がっていく。
スキル【魔力上昇】を覚える為、『魔法使い』系の職業からは羨望の眼差しで見られる。
前から魔法の使い方が上手いとは思っていたけど、まさか、中級職に目覚めるとは…。
ぐぬぬっ…セリナの癖に…羨ましい。
セリナじゃなかったら、素直に祝福できるのに。。。
「あはは、ユウキくん。
私、このままだと、パーティー組んで欲しいって、みんなからお願いされるかも。
でも…ユウキがどうしてもって言うなら…」
「そう。良かった。
じゃ、セリナと組むのは今日で最後ってことで。
やっとセリナから離れられる。」
「ちょっ!ウソ。お願い。見捨てないで!
ユウキの彼女になってあげてもいいから!」
「こっちからお断りだ。」
セリナは『魔導師』に目覚めたことは内緒にして欲しいと言ってきた。
「ちょっと前まで、誰も私のことなんか見向きもしなかった癖に、急にチヤホヤされるのは嫌なの。」
「チヤホヤされるの好きそうだけど?」
「もう!私を何だと思ってるのよ!?
それにみんなと組んでる方が楽しいし、気を使わないで済むから。
あと…ユウキもいるし…ボソッ」
上目遣いで見てきても、イヤ過ぎるだけだ…。
最後のは聞こえなかったことにして聞き流す。
「ふーん。」
「ちょっ!せっかく乙女がアプローチしてるのに、何か無いわけ?」
「このパーティーに乙女はいないから。」
「じゃ、私は何だっていうのよ?」
「ワガママばかり言うクソ女。」
「いやぁぁぁぁ。
あの時のことは忘れて、あれは私であって、私じゃないの。
ねぇ、生まれ変わった私を見て!」
本当にやかましい。
ハヤテとジロウが生暖かい目でこちらを見ている。
おい!俺をそんな目で見るなよ。
俺は付きまとわれて迷惑してる方だ!
朝7時。
レベッカ先生との稽古の時間だ。
最近ではリーシャの思い出作りばかりしている…。
先生が俺に求める物も次第にエスカレートしてきた。
もう少しで婚約者の元に行くリーシャの為。
俺だってリーシャのことは好きだ。
あの笑顔に何度も癒されてきた。
そう思って協力してきたけど…
そろそろマズイ気がする。
恋愛に疎い、俺の目にも分かる。
この前、リーシャと手を絡めて繋いだ日から、リーシャが俺を見る目が変わった。。。
形として付き合っていないが、もう恋人としての行動を求められている。
手を繋ぐのもそうだ。
手を絡めないと悲しそうにしてくるのだ。
これ以上、踏み込んではいけない。
引き返せなくなる…。
しかし。
公園に着くと先生が泣き始めた。
「先生、どうされました?」
「お嬢様が婚約者の元に行く日が早まったの。
3週間後、子爵領にお戻りになって、そのまま…
もうお嬢様の顔を見れなくなると思うと悲しくて。」
「先生…。」
あと3週間後にはリーシャに会えなくなるのか…。
急な別れに俺も寂しくなった。
「ねぇ、ユウキ君。お願い。
お嬢様の為にあと3週間だけ時間をくれない?」
「はい、もちろんです。」
「ふふふ、ありがとう。ユウキ君。
それでね、今日はお嬢様を抱きしめて、頭を撫でてあげて欲しいの。」
「いや…それはさすがに。」
リーシャには知らされていない婚約者がいる。
そんな子を抱きしめるのは、さすがにダメだと思った。
「お嬢様はユウキ君に抱きしめてもらいたいって…。
ねぇ、ユウキ君、お願い。
お嬢様への恩返しだと思って。」
「でも、婚約者のいるリーシャを抱きしめるなんて…。」
「ねぇ、このままお別れになると、お嬢様にとって私達は悲しい思い出に変わってしまうわ。
良い思い出を残してあげたいの。」
「……分かりました。」
「ふふふ、先生はそう言ってくれると信じてたわ。」
「いい?手を繋いで、あそこの木の下まで歩いてから、抱きしめるのよ?」
「はぁ…。」
「そうそう。リーシャが可愛くて我慢できなかった、って言うのも忘れないようにね。」
「え…?」
「お嬢様が来られたわ。
早く行ってあげて。ほら早くっ!」
「は、はい!」
2人で手を繋いで木の下まで歩く。
先生が遠くから「早く抱きしめろ」と合図を出してくる。
だぁぁぁぁ!分かってる。
分かってるけど…抱きしめるタイミングが掴めない。
俺は意を決して、リーシャを抱きしめた。
「きゃっ、お兄ちゃん…あの…強引です。」
「ご、ごめん、リーシャ。
その…リーシャが可愛くて、我慢できなかった。」
ドキドキ。ドキドキ。
緊張し過ぎて、心臓の鼓動が聞こえる…。
リーシャの頭を震える手でソッと撫でてあげる。
「うふふ、お兄ちゃん。」
「………。」
リーシャの顔がうっとりしている…。
可愛い。。。
「あの…レベッカから聞きましたが
お兄ちゃんのお誕生日に…
その…お兄ちゃんが私に告白して下さるって。」
え!?
な、なにそれ?どういうこと?
「え…?」
「その…突然のお話で信じられなかったのですが…
こうして抱きしめて下さるということは、本当だと信じていいんですね?」
「いや、その…」
「お兄ちゃん。
あと3日、お待ちしてますね。
私は…リーシャは幸せです。」
「ハイ…。」
先生にハメられた!
「レベッカ先生!僕が告白するってどういうことですか!?」
「あら、血相変えて何事かと思ったら
好きです。って言うだけじゃない。
大袈裟なんだから。」
「いや、そういう問題じゃないでしょ。」
さすがに勝手に告白させようとするなんて
先生とはいえ、今日は言わせてもらう。
「ねぇ、ユウキ君はお嬢様の為に何かしてあげたいって思わないの?
そんな冷たい子だと知らなかったわ。」
「いや、でも…。」
急に先生の顔が怖くなった…。
それ、逆ギレじゃ。。。
「ねぇ、あと3週間で2度と会えなくなるのよ。
そんな非協力的とは思ってもみなかった。
私も付き合い方を変えないといけないかしら?」
なんか俺が悪いみたいになってる。。。
「そ、そんなことは…。」
「もういい。見損なった。
従者としての契約は解除ね。
私があなたにしてあげたことを全部返して。
返してもらえない分はお父上に請求しないと。」
「先生、それは…申し訳ございません。」
「私が聞きたいのは謝罪じゃないの。
自分の意志で協力したいか?したくないか?
ねぇ、どっちなの?」
先生にしてもらったことを返しようがない…。
それに請求されるなんて聞いたら、父さんが何て言い出すか。。。
「ねぇ、ユウキ君はお嬢様が好きなの?嫌いなの?」
「それは…好きではありますが…。」
「じゃ、もう答えは決まったような物じゃない。
で、どうするの?自分の意志で決めなさい。」
先生が捲し立てるように追い込んでくる。。。
協力するしか道は残されていない…。
「協力します。。。告白させて下さい…。」
「ふふふ、ユウキ君、えらいわ。
先生はやってくれるって信じてたわ。」
「ハイ…」
「最初から協力するって言ってくれれば
こんなこと言わずに済んだの。
次からは気を付けるのよ?」
「ハイ…」
「あはは、あと3週間。
それだけ頑張ってくれれば、お嬢様も私もあなたも、みんな幸せになれるの。
ね、あと少し頑張りましょう?」
「ハイ…」
こうして、3日後、自分の誕生日にユウキは告白させられることになる。。。
週に2回、セリナ達とパーティーを組みながらも、残り5日は全力でレベル上げに励んだ。
『僧侶』LV12が遂に見えてきた。
最近ではMPはなるべく『僧侶』のレベル上げに重点的に使うようにしている。
LV12になれば、【回復魔法(小)】を覚える。
そうなれば、ダンジョン攻略を再開する予定だ。
先生にそのことを伝えると
38階層まで行けるようになれば、マジックバックを用意すると言ってくれた。
初心者ダンジョン38階層以降に出現する魔物エレメントコアのドロップが剥ぎ取りも必要なく、そこそこの金額で売れるらしいのだ。
この38~39階層は、このエレメントコアと言う魔法生物が主な敵となる。
エレメントコアからの攻撃は、ほぼ魔法攻撃ばかりなうえに、魔法攻撃が効かないらしい。
その為、『戦士』等の精神のステータスが低い職業ではすぐに戦闘不能になりやすい。
また、『魔法使い』は魔法が効かないのでダメージを与えられず倒せない。
別名「戦士殺し・魔術師要らず」
と呼ばれ、狩り場としては全く人気がない。
俺は精神値が400近くあり、中級の域を既に越えている。
『吟遊詩人』のバフで精神を底上げすれば、さらにダメージも軽減するだろう。
物理攻撃も先生に武器を買ってもらった為、そこそこあると言っていい。
スキルは相変わらずショボい為、あくまで、通常攻撃のみの話だが。
それでも、俺との相性は抜群の狩り場だ。
しかし、ここで1つ問題があるのだ。
40階層の中ボスを倒せば、そこから転移できる為、問題無い。
しかし、30階層から向かう場合、マップが広くなった都合上、1日半ぐらい38階層まで時間が掛かる。
この3月の長期休暇を利用して38~39階層で泊まり込みでレベル上げを行い、長期休暇中に中ボスを倒さないと
学校がある期間中は38階層に行きたくてもいけなくなるのだ。
このペースでいくと、『僧侶』LV12は3月上旬か。
リーシャの見送りもある。
時期的には丁度いいだろう。
リーシャの見送り、か。
寂しくなるな…。
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