第17話 7歳2月 対人戦とイザベルの評価
対人戦が始まった。
総合成績に大きく影響するせいか、クラスの雰囲気は一変する。
人並み狙いの俺は適当に勝ち負けを調整する予定だ。
ハヤテとジロウにはもう伝えてある。
「2人がどう思うか分からないけど、俺は2人との対戦の時は学校休むから。」
「いや、ユウキ。さすがにそれは…。」
「あぁ。気を使わず、全力でやってくれ。」
「2人は薄々、気付いてると思うけど…
俺さ、色々あって、あんまり目立ちたくないんだ。
だから、ほどほどに負けるつもりだから。
どうせなら、2人がAクラスに残ってくれた方が嬉しいし。」
「そうか…。
分かった。俺達も残れるように頑張るよ。」
「あぁ、そうしてくれ。」
「ねぇ、ユウキ。私は?私は?」
また、セリナが呼んでもないのに会話に入ってくる。
「セリナは特別だ。
全力で叩きのめしにいくから。」
「あはは、私は特別かぁ…。
って、そんな特別はいやぁぁぁ!」
「もう2度と俺に近付きたくなくなるように、念入りにな。」
「そんな…分かった…。
ユウキの愛の鞭だと思って受け入れるね。
想像したらゾクゾクしてきた。
癖になったら、責任とってくれるよね?」
「ヒィッ…気持ち悪いわ!」
ダメだ…。
セリナを相手にすると、どうも調子が狂う。
後が面倒くさいから、セリナの時も休もう…。
今日の相手は運搬試験で俺達をハメて、途方にくれていた所を笑った奴だ。
現在の総合順位は8位か、こいつは許すつもりはない。
『火魔法使い』LV14 セイヤとか言ったっけ?
LV12から【火魔法(小)】を使えるようになる。
俺が使える【火魔法(微)】がガスバーナーなら
セイヤが使える【火魔法(小)】は火炎放射器くらいの威力と言えば分かりやすいか。
「今日の相手は『遊び人』君か。これは楽勝だな。
大火傷させてやる。」
はいはい。
まぁ、確かに火炎放射器 対 ガスバーナーなら、負ける気はしないんだろうが、試合は炎対決ではない。
叩きのめした方が勝ちだ。
試合が始まった。
一応、俺は『戦士』『火魔法使い』『遊び人』ということになっている。
学校から支給されている木の盾を構えて、ゆっくり近付いていく。
「バカが。そんな盾で防ぐつもりかよ?」
【火魔法(小)】が飛んでくる。
おまえの方こそ、その程度の魔法で俺を倒せるつもりかよ?
俺のスキルはショボくても、ステータスはそうじゃない。
この時のユウキの精神は冒険者中級上位以上、下級中位~上位の魔法を下級中位の魔力で唱えたとて、大して効きはしない。
盾を構えているのはあくまで魔法を防いだフリをする為のものだ。
「バ、バカな…。」
あっさり盾で防がれたことに焦ったのか、もう1度、魔法が飛んでくる。
実際には盾では防ぎきれていない。
精神が高い俺には、盾で炎を軽減すれば、残りの炎ではほとんどダメージが入らないだけだ。
俺はプレッシャーを掛けるようにジワジワ近付いていく。
「この野郎っ!」
何度、魔法を飛ばしても無駄だ。
全て盾で防いだフリをする。
お返しに【火魔法(微)】で炙ってやるか。
セイヤが【火魔法(小)】を飛ばしてきた瞬間、速度を上げて後ろに回り込む。
人をハメて喜んでいるような奴が、俺の速さに対応できるハズがない。
『魔法使い』は攻撃を受けるとすぐ降参する傾向にあるがそうはさせない。
セイヤのすぐ後ろから、【火魔法(微)】で尻を焼いていく。
俺のガスバーナーは魔力361の特別製だ。
「ギャァァァァ!あちちちち!」
尻を押さえているセイヤの足を払い、倒れた所をマウントを取る。
「ヒィ…ま、敗け、ブフッ…」
ほら、すぐに降参しようとする。
何発か殴らないと気が済まない。
このまま、降参なんてさせやしない。
殴る。殴る。殴る。
「もうやめ…グフッ…負け…グハッ…」
人を嵌めようとしたんだ、少しくらい罰を受けてもらわないと。
殴る。殴る。殴る。
「た、たの…ブフッ…もう…カハッ…」
殴る。殴る。殴る。
次、なんかしてきたら、こんなもんじゃ済まさないからな。
いけない。
セイヤがぐったりしている。
俺は立ち上がり、先生を見る。
「勝者 ユウキ。」
しまった、もう少し手加減すべきだったな。
あくまで俺は人並み狙いなんだから。
今の試合で何人かが俺をじっと見ている。
おかしいと気付かれたか?
まぁいい。次の試合は上位の相手だ。
盛大に負ければ、誤魔化せるだろう。
お、ハヤテも勝てたみたいだ。
「みんなのおかげで勝ちを拾えた。ありがとう。」
「あはは、もっと感謝してくれてもいいのよ。」
セリナとハヤテの会話は続いている。
「セリナはどうだった?」
「うーん、私は負けたよ。
まだ、メリッサ相手には勝てないかな。」
メリッサ
総合順位3位の魔法使いだ。
『火魔法使い』LV12『水魔法使い』LV8と自己紹介の時に言っていたが、明らかにそれだけじゃない。
【経験値吸収】を使おうとして、弾かれたことがある。
何か中級以上の職業を隠しているはずだ。
どこかの貴族の娘で、1本10万Gの中級マジックポーションをいつも鞄に入れている。
俺も同じ貴族の子供のはずなのに…どうして、ここまで待遇に差があるんだよ。
「そうか。残念だったな。」
「うん。でも、『魔導師』のレベルが上がれば、良い勝者ができると思うよ。
私の魔法に驚いていたし。」
セリナが手応えを感じていた。
確かにセリナの魔法のセンスは抜群だと思う。
試合内容も悪くなかった。
最後は力押しされて敗れてはいたが。
「ねぇ、ユウキからは何かないの?
私、頑張ったんだよ。」
「知らん。試合も見ていない。」
「へぇぇぇぇ、見てないんだ。
じゃ、ユウキ君は誰を見てたのかな。
あはは、もしかして照れてる?」
「照れとらんわ!本当に忌々しい。」
「ふふ、ユウキったら、可愛いんだから。」
ぐっ、この女は…勝ち誇ったように言ってくる。
俺が見ていたのを知っているから、得意気になっているのだ。
「あはは、相変わらず痴話喧嘩が好きだね。
僕も勝ったよ。」
ジロウも勝ったみたいだ。
おぃ!どこが痴話喧嘩に見える?
ジロウよ、目が腐ってないか?
「そうなの。ユウキが照れちゃって。
素直に私を見てたって言えばいいのに。」
「ぐっ…俺はメリッサが気になっただけだ!」
「はいはい。そういうことにしといてあげる。」
なんで、俺があしらわれてるんだよ!
「ねぇ、ユウキ。
私は素直に見てたよって言ってくれた方が嬉しいな。」
そう言って、セリナが腕に抱きついてきた。
「離せ!」
腕を振りほどこうとしても、ギュッと腕を掴んでセリナは離れない。
「ねぇ、頑張ったの見てたでしょ?
ご褒美に頭を撫でて。」
イラッとした俺はセリナの頭にゲンコツを落とす。
「いったーい!」
「セリナにはこれで十分だ。」
「もう!本当にユウキは素直じゃないんだから。」
「さっきのゲンコツが俺の素直な気持ちだよ!」
「また2人の世界に入ってるよ。
邪魔しちゃ悪いし、ハヤテ行こうか。」
「あぁ。」
「おい!待て!
2人共、何か勘違いしてないか!」
こうして、対人戦は進んでいく。
ハヤテは少し危なかったが、Bクラスへの降格は無く、3人共Aクラス残留を決めた。
特にセリナだ。
総合順位が9位まで上がっていた。
確かに最近の成長は目を見張るものがある。
『魔導師』のレベルが上がれば、もっと上にいくだろう。
2年生でもあの3人と一緒か。
気が付けば、友人と言える存在ができていた。
セリナを評価している人物はもう1人いた。
担任のイザベルである。
やっぱり上位陣は総合順位も順当ね。
アリス、ダイチ、メリッサ、ジーク。
この4人は崩れて来ないか。
ユウキ君が本気を出せば、面白そうなんだけど、あの子やる気ないからなぁ。
あはははは、対人戦の日にお腹痛いって、5回も休む子は初めて見たわ。
みんな、生き残りたくて必死なのに、どうなってんのよ?
Aクラス上位5名が出場する王国選抜選、あの子が出てくれたら面白いのに。
5位に入る気なんか微塵も無さそうだし。
そう言えば、後期からBクラスに上がってきた子、全員残ってるわね。
こんなことは初めてかもしれない。
酷い時は5人全員がそのままBクラスに戻されるのに。
特にセリナ。
あの子はいいわね。
メリッサが努力とお金だとすれば、セリナは才能ね。
これに努力が加われば、さらに伸びる。
可愛いし、男の子から人気が出そうだけど、ユウキ君にべったりだからなぁ。
ふふふ、でも、セリナの才能は嫉妬を買いそう。
ユウキ君、ちゃんとあなたが守ってあげないと潰されかねないわよ。
ステータス
ユウキ 7歳
HP 401/401
MP 376/376
体力 322
力 287
魔力 361
精神 387
速さ 324
器用 306
運 180
吸収 6
職業
戦士 LV7(398.63/700)
火魔法使い LV8(444.74/800)
水魔法使い LV8(295.72/800)
土魔法使い LV8(425.04/800)
風魔法使い LV8(527.04/800)
僧侶 LV11(782.61/1100)
盗賊 LV7(419.66/700)
武道家 LV6(464.54/600)
吟遊詩人 LV9(81.72/900)
植物魔法使い LV8(152.15/800)
付与魔術士 LV7(290.03/700)
剣士 LV6(367.88/600)
盾使い LV6(508.14/600)
狩人 LV8(27.31/800)
薬師 LV8(147.12/800)
魔物使い LV2(127.48/200)
槍使い LV3(35.44/300)
遊び人 LV3(22.98/300)
斧使い LV2(111.36/200)
弓使い LV2(83.65/100)
スキル
経験値吸収 LV6(229.85/600)
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