第12話 6歳12月 リーシャの想い出作り

満遍なく全ての職業のLVを上げるのではなく、職業を絞ってレベル上げを行う。


この方針変更が良かったのか、今月は4つの職業でLVが上がった。

LVを上げたかった『僧侶』『盗賊』は惜しくも上がらなかったが、もうすぐその2つもLVは上がる。


このペースでいけば、次の休暇前には『僧侶』のLVは目標の12となる。

そうなれば、さらに初級ダンジョンの攻略を進める。

さっさと初級ダンジョンを終わらせて、俺は中級ダンジョンに行きたいのだ。




朝7時、今日もいつもの公園で先生の稽古を受けていた。


「そう、ユウキ君。

魔物に限らず、敵に囲まれたら、【気配遮断】を使う機会を作りにいくの。

ただ、闇雲に使ってもダメ。

他のスキルと組み合わせたり、道具を使って…」

「うん、だいぶ身体の使い方が良くなってる。

もう少し足で溜めを作って…

あら、少し速さと器用が上がったのかしら?」


先生の指導はとても勉強になる。

的確で分かりやすく、ダンジョンで生き残っていく知識も俺に与えてくれる。


本当にこの人の元に来れて良かった。

心の底からそう思っていた。



先生の指導が終わった後はリーシャと【植物魔法】の練習だ。


最近、リーシャの様子が少しおかしい。

夕食に招待された日以降、リーシャの距離が妙に近いような気がする。。。

今日も手を繋いできた。


「あの…その…お兄ちゃん。

たまにはお兄ちゃんの方から手を繋いで下さっても…」

「えっ…?」

「あの…お兄ちゃんがお嫌でしたら…無理にとは言いませんが…」


そう言って、リーシャが泣きそうな顔をする。


「リーシャ。嫌じゃない。全然嫌じゃない。」

「えへへ、良かった。お兄ちゃん。

たまにで構いませんので、お兄ちゃんからも繋いで下さいね。」


リーシャの顔がパァッと笑顔に変わる。


なにこれ?何なの?

リーシャが可愛い過ぎるんですけど…。


「そうそう。お兄ちゃん。

またお父様とお母様がお兄ちゃんをお連れして欲しいって。

お兄様も稽古を付けてもらいたいと言われておりました。」

「えっ…?」


前回は気楽にお夕食のはずが…。

ご両親にご挨拶することになり

お兄さんのアルノルトさんと模擬戦闘までするはめになった。

しかも、先生が仕えているお宅だ。

粗相は許されない。

今回は断ろう。断固、拒否しよう。


そう思った矢先…


「あの…お兄ちゃん。

もしかして、お嫌でしたか?

またお誘いしてもいいって、お兄ちゃんが…。」


まただ。

リーシャ、お願いだから、そんな泣きそうな顔しないで…。


「いや…そんなことは。

ちょっとLV上げで忙しくて…。」

「それでしたら、お兄ちゃんのレベル上げをレベッカにお手伝いさせましょうか?

レベッカは『アサシン』ですから、きっとお兄ちゃんのお力に。」


先生と言えど、戦うところを見られたくない。

さすがに俺のことをおかしいと気付かれるからだ。


「いや、1人でゆっくり上げられれば…やっぱり大丈夫かな…。」

「エヘヘ、でしたら、お時間作ってもらえそうですね?

お夕飯にお連れするって、お母様にお伝えしますね?」

「はい…。」

「やった!

お兄ちゃん、お日にちなんですが、お母様がここかここでお願いしたいって。」



クックックックック

積極的なリーシャと、年下の女の子に振り回されているユウキを見て、レベッカは笑っていた。


前々からユウキを気に入ってるとは思っていたが

お嬢様の気持ちはどう見ても恋する女の子のものだ。


おませで可愛い私のお嬢様、微力ながら協力してさしあげますね。


あはははは、ねぇ、ユウキ。

あなたにもしっかり協力してもらうからね。



次の日。

「先生。おはようございます。」

「ふふふ、ユウキ君。おはよう。」

「今日もよろしくお願いします。」


「ねえ、ユウキ君。

今日から従者の仕事をお手伝いしてもらえないかしら?」

「はい、先生。喜んでお手伝いします。」

「ふふふ、頼もしいわ。

じゃ、今から言うことを復唱してもらえるかしら?」

「はい!」


「リボンを新しく変えたんだね。

とっても可愛くて、リーシャによく似合ってるよ。

はい、ここまで復唱して。」

「え…?それって…。」

「早く復唱してちょうだい。

喜んでお手伝いしてくれるんじゃなかったの?」


どう考えても従者の仕事と関係あると思えない。


リーシャが俺のことを気に入ってくれてるのは、薄々気付いていた。

だからこそ、そういうことは他人に言われて、言うべきじゃないと思った。


「先生、やっぱりそういうのは良くないと思います…。」

「ユウキ君…。私だってそう思うわ。

だけど…

だけど、1年後には…お嬢様は38歳の貴族の元に婚約者として…。」

「え!?」


先生が涙をこらえている。

俺もショックを受けてしまった。

あのリーシャが、30歳以上も年上の人に嫁ぐなんて…。


「ねぇ、お願い。今だけでいいの。

あの可愛いお嬢様が不憫でならなくて。

最後にここで良い想い出を作ってあげたいの。」

「先生…。」


遂に先生の瞳から涙が溢れだした。


「ごめんね。お嬢様が赤ん坊の時から一緒だから、どうしても、思い入れも強くって。」

「………先生、分かりました。

僕で良ければ協力します。」


尊敬する先生がリーシャの為に涙を流している。

俺もリーシャは好きだ。協力してあげたい。

そんな気持ちになった。


「ありがとう。ユウキ君。

無理なお願いをすることになって…。」

「いえ、大丈夫です。

僕だってリーシャのことは大好きですから。」

「ふふふ、2人でリーシャに良い想い出を作ってあげましょう。

その…お嬢様は婚約者のことは知らないから…」


こうして、リーシャの想い出作りに俺は協力することになった。



「リ、リーシャ、あの…リボンを変えたんだね。

その…と、とっても似合ってるよ。」


ぐわぁぁぁぁぁぁ!

恥ずかしい!

言いなれない俺は噛みまくりだ。。。


「え、お兄ちゃん!

気付いて下さったんですね。嬉しい!」


リーシャが嬉しそうに笑っている。

恥ずかしかったけど、言ってあげて良かった。



「ふふふ、ユウキ君。

噛みまくりだったけど、ありがとう。

お嬢様、あんなに喜んで。」

「変に意識しちゃって、恥ずかしかったんですから…

でも、喜んでもらえて、僕も嬉しいです。」


しかし、先生からの要求はエスカレートしていく。


「ねぇ、どうして、あそこで手を繋いであげなかったのかしら?」

「え…。」

「昨日、お嬢様はユウキ君から手を繋いで欲しいって言ってたわね?

やっぱり、ユウキ君はお嬢様のことなんて…」

「いや、そんなことは!」


こうして、ユウキは泥沼にハマっていく。

レベッカはあの手この手で引きずり込んでくるのだ。

お人好しのユウキがレベッカ相手に勝てるはずもなく…。


おかしい!と気付いた時には、もう抜け出せない所まで泥沼にハマっていた。。。



ステータス

ユウキ 6歳


HP 379/379

MP 357/357

体力 303

力  271

魔力 342

精神 365

速さ 301

器用 284

運  166

吸収 6


職業

戦士 LV7(368.63/700)

火魔法使い LV8(51.14/800)

水魔法使い LV7(604.54/700)

土魔法使い LV8(7.54/800)

風魔法使い LV8(8.39/800)

僧侶 LV10(867.36/1000)

盗賊 LV6(578.44/600)

武道家 LV6(348.30/600)

吟遊詩人 LV8(637.82/800)

植物魔法使い LV7(689.55/700)

付与魔術士 LV7(290.03/700)

剣士 LV6(367.88/600)

盾使い LV6(508.14/600)

狩人 LV7(189.00/700)

薬師 LV8(147.12/800)

魔物使い LV2(127.48/200)

槍使い LV3(35.44/200)

遊び人 LV2(42.98/200)

斧使い LV2(111.36/200)

弓使い LV1(93.65/100)


スキル

経験値吸収 LV6(26.41/600)

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