第9話 6歳 ユウキ馬鹿にされる

久々に領地に帰ってきた。

戻ってくるだけで5日。


母さんと兄さん達は俺を歓迎してくれるが

父さんは行き帰りの馬車代が勿体無いらしい。

あからさまに態度に出ている。


さらに…


「ユウキ、お前、本当にAクラスなのか?

お前のレベルが低いせいで、売り込もうとしても笑われるんだよ。」

「………。」


「もう優秀な人材は次々と買い手が見付かってんのに。それなのに…お前は。」

「………。」


「帰ってくる暇があったら、少しでもレベル上げでもしてろ!」

「………。」


「Aクラスから降格すれば、領地に戻すからな。」

「………。」


「本当にお前は期待外れだな。」

「………。」


「なぁ、ユウキ、聞いてんのか?」

「………ハイ。」


よほど父さんの機嫌が悪かったらしい。

よくもまぁ、ネチネチと。


要約すると、俺が従者として売れそうも無いのが気にいらない。

Aクラスに入れば、高く売れると期待していただけに、その落胆も大きいのだろう。


分かっていたことではあるが…

跡取りの長男アレクとスペアの次男マイクさえいれば、俺のことは商品としか思っていない。


最後に俺が職業『遊び人』に目覚めたことを伝えると

「ダンジョンから出てくるな!」と怒鳴られた。



「はぁぁぁぁぁ。」


俺がここに帰ってくることは、しばらく無いかもしれないな。

もし買い手が見付かれば、自由に帰ってくる事もできないだろうし。


せめて、母さんと兄さんに何かしてあげたい。


毎日、ダンジョンに入る前に森の薬草畑に【植物魔法】を掛けて育成する。

ダンジョンで得たドロップ品と魔石は全て母さんと兄さんに渡した。

いくらかの金にはなるだろう。


10日間の短い滞在ではあったが、帰りだけでも5日間を要する。

別れを告げると、母さんが泣いて見送ってくれた。


母さんの愛情を感じただけでも帰ってきて良かったなぁ。




学生寮に戻ってからはレベル上げに没頭した。

23階層ぐらいまではもう苦戦することも無い。


31階層までいけば、さらにレベル上げの速度は早まる。


今日から30階層にチャレンジだ。

魔物に負けることはない。

しかし、26階層辺りから、戦闘時間が長引きつつあった。

弱いスキルしか覚えていないせいで倒すのに時間が掛かるのだ。

戦闘が長引くせいで、【回復魔法(微)】の使用回数は自然と増えていく。

また【僧侶】のレベルが上がった。


氷属性の魔物を弱点属性の【火炎魔法(微)】で攻撃する。

しかし、魔力が高くても所詮は【火炎魔法(微)】である。

どれだけガスバーナーの性能が良くても、氷の塊相手に大きなダメージが入らない。


魔物の弱点をしっかり突けば、効率良く倒せるのに、26階層以上になると、今のスキルでは火力が足りないのだ。


他にも問題はあった。


装備だ。

剣は昔、ダンジョンで手に入れた武器を使っているが、他は父さんに買ってもらった鉄の槍や弓、短剣だ。

鉄の斧は中古で安く買った。


買い替えたくても、俺が素材の剥ぎ取りをしてこなかったせいもあり、とにかく金が無い。


もちろん、防具もほぼ初期装備に、フードを被って顔を隠している状態。

ワンランク上の敵と戦うには心許ない。


これ以上、上に進むには最低でもスキルか、装備か、仲間のどれかは必要。

しかし、全く当てがない。


壁にぶち当たった。


親に頼もうにも、金が無くて俺を売り出すぐらいだ。

言うだけ無駄だろう。

いつか時間が解決はしてくれるだろう。

ただ、その頃には平均LVは取り返しの付かない程、離されてしまうが。


俺の求める人並みへの道は険しい…。


効率を考えると

しばらくは25階層でレベルを上げるしかないか…。


これからどうすればいい?

ユウキは思い悩んでいた。



そんな時だった。

父から手紙が着た。


「喜べ。契約が決まるかもしれない。

始業式の後、先方がお前とも話がしたいと仰っているから、時間を空けておくように。

お前が望むなら、装備品等への融資も考えてもいいと言って下さっている。」

そう書かれている。


何を喜べばいいのか分からないが

融資を受けられるなら、ダンジョンを進められるかもしれない。

俺も会って話がしたい。

悩んでいた俺は自然と期待してしまう。



始業式、新しいメンバーを迎え、恒例の自己紹介が始まる。


「ケントです。長期休暇でLVが1つ上がって、『戦士』LV13になりました。」

「私もLV14になったよ。」


俺もそうだが、皆も着実にレベルが上がっている。

これでは差は縮まらない。


領地までの往復で時間を取られたのも大きいが

長期休暇で上がった職業は『僧侶』『斧使い』の2つだけ…

特にレベルの上がりにくい『遊び人』に関しては、他よりも時間を掛けた割にレベルは上がらなかった。



実際のところ、この半年でステータスの差は着実に引き離しているのだが、スキルと平均レベルの差は逆に広がっていた。

現在のユウキの職業数は19職。

吸収中の20職目の『弓使い』まで育てようとしたら、さらに経験値は分散される。


いくらダンジョン30階層までいけると言っても、Aクラスのメンバーも強くなろうと必死で頑張っている。

今のやり方を続ける限り、平均レベルは追い付くどころか、離されていきかねない。


彼らの10倍以上の経験値を稼げるのであれば、話しは別だが、そんな訳はない。

むしろ、皆が強いスキルを覚えた分、瞬間火力は縮められてしまった。



「はぁぁぁぁぁ。」


また、自己紹介か…。

まぁ、いい。今回は『遊び人』を覚えた。

驚かせてやるか。


「『戦士』LV7、『火魔法使い』LV7、それと『遊び人』LV1にもなりました。

よろしくお願いします。」


「ぶっっっ、『遊び人』って。

なんで、どや顔で言ってんの?」

「あはははは、もうネタだろ。コイツは。」

「Aクラス11位でこの程度なの?楽勝かも。」


新しくBクラスから上がってきた連中まで、俺をバカにし始めた。


くっ、『遊び人』は下級職で唯一、運のステータスが大きく上がるんだぞ!

おまえら、運の大切さを理解しているのか!?


運はレアアイテムのドロップ率だけでなく、状態異常等の成否、生産職の出来栄えにも関わってくる重要なステータス。


お気に入りの『遊び人』を馬鹿にされ、ユウキは信じられない思いでいっぱいだった。


チッ、もういい。

いつか運の大切さを証明してやる。


クラスの連中とユウキの仲は、またしても改善されることはなかった。

結局、Bクラスから上がってきた新しいメンバーからも相手にされない日々を送ることになる。



ステータス

ユウキ 6歳


HP 359/359

MP 340/340

体力 289

力  255

魔力 322

精神 349

速さ 281

器用 265

運  154

吸収 5


職業

戦士 LV7(179.88/700)

火魔法使い LV7(373.57/700)

水魔法使い LV7(202.35/700)

土魔法使い LV7(288.93/700)

風魔法使い LV7(253.08/700)

僧侶 LV10(151.76/1000)

盗賊 LV6(206.44/600)

武道家 LV6(223.30/600)

吟遊詩人 LV8(330.02/800)

植物魔法使い LV7(484.35/800)

付与魔術士 LV7(248.99/700)

剣士 LV6(298.88/600)

盾使い LV6(427.14/600)

狩人 LV6(420.00/600)

薬師 LV8(106.08/800)

魔物使い LV2(73.48/200)

槍使い LV2(175.44/200)

遊び人 LV1(70.98/100)

斧使い LV2(21.36/200)

弓使い LV0(21.55/50)


スキル

経験値吸収 LV5(398.56/500)

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