第8話 6歳 ユウキ目を付けられる

この上級学校は前期と後期に分かれている。

5ヶ月通って1ヶ月の休暇、これを2回繰り返す。


今日は前期の終わり、最後の学力テストが終わり、総合順位の発表とクラスの入れ替わりの告知日だ。

明日の終業式は新しいメンバーで各クラス集まり、顔見せをしてから長期休暇に入る。


惜しい!

総合順位10位を狙っていたのに11位か。

まぁ、こんなもんだろ。


目立ちたくないユウキはこのクラスの人並み狙い。

総合順位が真ん中辺りにくるように調整していた。


これなら父さんから、とやかく言われることもないだろ。


しかし、父さんからは言われなくても、周りが黙ってはいない…。

この日の教室は喜びと嘆きの声で溢れていた。


「良かったぁぁぁ!

ギリギリ、このクラスに残れたよ。

これで父上にお叱りを受けないですんだ。」

「ぁ…ぁぁ…どうしよ。

後期からはBクラスに落ちる…母さんに殺されるかも…。」

「うわぁぁぁん。

どうして?あんなに頑張ったのに。

なんで…なんでダメなの…?」


この学校に仲が良い奴なんて1人もいない。

他人事のように眺めていると

今回、降格が決まった奴に声を掛けられる。


「おまえ、ちょっと来いよ。

落ちこぼれの癖にズルしやがって。」


ズル?

悪いけど、俺のレベルは低いが、誰よりも努力はしているつもりだ。

そんなこと言ってるから降格するんだと思うけど?


もちろん、無視だ。相手にしない。


「低レベルの癖に、なに無視してんだよ?」


え…いつもは自分達が無視してなかったっけ?

都合が良いにも程がある。


「この野郎っ!」


さらに放置していると殴り掛かってきた。


もちろん、避ける。

そんなスローで大振りなパンチが俺に当たる訳がないだろ?


顔面への突きをさらに避ける。

この程度のパンチなら当たっても痛くないか?


今度は避けない。

わざとパンチを受けてみる。


「痛っ。」


やっぱり痛かったか、失敗した。

HPは3減っていた。


100発以上は耐えられる計算か。


「お前のせいで…お前のせいで…うぅ…。」


今度は泣き出すのかよ…。

もう、知ったこっちゃないわ。


周りの視線が冷たい。


いや、俺は殴られた方だからね。。。

むしろ、こっちが謝ってもらわんと割に合わんのに。


もういい、さっさとダンジョンに行こう。

【経験値吸収】で新しく覚えた職業『遊び人』『斧使い』のレベルも上げてしまいたい。


遂に19職目。


この『遊び人』が凄いんだよ。

何が凄いって、下級職で唯一、運が大きく上がる職業な訳で。

運はレアドロップばかりに目が行きがちだけど、実は状態異常の成否や生産職の出来にも影響するステータスで…

ゆくゆくは装備品に付与魔術を使って、スキルを付与したい俺にとって運は超重要で。


泣き崩れるクラスメイトを放置し、ユウキは上機嫌で帰っていく。

新しい職業が増えた分、平均LVは入学前よりも下がっている。

長期休暇中に30層の中ボスをなんとかして、新しい狩場を開拓しないと追い付けない。




「リーシャ、明日から田舎に帰るから、しばらくここには来れなくなるんだ。」

「お兄ちゃん…それは寂しくなります。

いつ頃、お戻りになるんですか?」


リーシャが悲しそうな顔をしてくる。

本当にリーシャは可愛いなぁ。

うちの領地に連れて帰りたいくらいだ。  


「うーん、どうだろ。

3週間くらいで帰ってくるとは思うけど。」

「お兄ちゃん、お待ちしてますね。

お気を付けて。」

「うん、ありがとう。リーシャ。」

「あ、お兄ちゃん。

お戻りになられたら、1度お夕食でもいかがでしょうか?」

「リーシャと?うーん。」


その時間帯はダンジョンにこもっている時間だ。

どうしようかな?迷っていると


「お兄ちゃん…。私とではお嫌ですか?」

「いやいやいや、そんなことないよ。

嬉しい、嬉しいよ。」

「えへへ、やった!

では、お日にちですが…」


まぁ、1日くらいなら、レベル上げを休んでも大丈夫か。


こうして、ユウキはリーシャと夕食を共にすることになった。


これから定期的にリーシャから誘われるようになる。

断ろうと思っても、リーシャの悲しそうな顔を前にすると断りきれないのだ。

この時点で、既にユウキはリーシャの手のひらで転がされていたと言っても過言ではない。

裏で暗躍するレベッカがいるのではあるが…。



「お嬢様。上手くお誘いできましたね。

ありがとうございます。」

「えへへ、レベッカ。ありがとう。

あれでよかったのでしょうか?」

「はい。とても良かったですよ。

私が旦那様にお願いしてるので、私から言っても良かったのですが。」

「ううん。お兄ちゃんとのお夕食は私も楽しみですから。」



レベッカはダンジョンで見掛けた時から、おかしいと思い調査を続けていた。

出身地・職業・交友関係・ダンジョン攻略等、少しずつ洗い出していく。


クックックック

本当に面白い子を見つけたわ。


11階層ではなく、21階層をソロで戦っていると分かった時は驚かされた。


この子が欲しい。

すぐ旦那様にお願いして、手配してもらっている。


金は出すから、従者として確保してくれ、と。

どうせ出した金はユウキ本人に稼がせるんだから。

利子まで付けて返してもらうし。

それより下手に金を出させて、私の育成方針に口を挟ませたくない。

ユウキは私が育てるの。


それに私の可愛いお嬢様もユウキを気に入っている。

まぁ、ただの従者にするつもりなら、渡す気はないけどね。




そして、もう1人。

ユウキの異常なステータスに気付いていた人物がいる。

学校の担任イザベルである。


今年も何人か職業を隠し持っている子もいるけど

総合力で言えば、公爵令嬢のアリス、後はダイチ、メリッサ、ジーク。

この4人は群を抜いてるわね。

本当に末恐ろしい。


隠してるといえば、ユウキ君。

あはははは、何あれ。

どうやったら、あんな風になるのか教えて欲しいわ。

レベルが低いみたいだから、スキルでは遅れを取ってるけど、基礎ステータスが高過ぎて隠しきれてないし。



この学校は社会の縮図だ。

金に物を言わせた特別な教育や、イジメやコネ、金銭での買収も度が過ぎなければ、全て容認している。


貴族と平民が一緒にいる以上、どうしてもいさかいは避けられない。

それも含めて、どれだけの成績を残せるかが大事。

それが学校の方針だ。

目の前で何人も優秀な子が潰れていくのを見てきた。


それにも関わらず、あの子は…。

ユウキ君の家は貴族と言っても、お金が無さそうなんだけど。

いったいどういう教育をしてるのかしら?


ふふふ、後期はもっと大変になるわよ。

ユウキ君、友達いなさそうだし、乗り越えられるかしら?


ステータス

ユウキ 6歳


HP 350/350

MP 331/331

体力 281

力  248

魔力 313

精神 339

速さ 275

器用 260

運  151

吸収 5


職業

戦士 LV7(116.88/700)

火魔法使い LV7(138.97/700)

水魔法使い LV7(28.95/700)

土魔法使い LV7(105.33/700)

風魔法使い LV7(28.68/700)

僧侶 LV9(879.76/900)

盗賊 LV6(149.44/600)

武道家 LV6(192.30/600)

吟遊詩人 LV8(177.02/800)

植物魔法使い LV7(382.35/800)

付与魔術士 LV7(167.39/700)

剣士 LV6(268.88/600)

盾使い LV6(376.14/600)

狩人 LV6(351.00/600)

薬師 LV8(24.48/800)

魔物使い LV2(32.98/200)

槍使い LV2(130.14/200)

遊び人 LV1(3.48/100)

斧使い LV1(31.36/100)

弓使い LV0(21.55/50)


スキル

経験値吸収 LV5(398.56/500)



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る