第7話 6歳 唯一の安らぎ

学校が始まる1時間前。

いつもの公園で『植物魔法使い』のLVを上げてから学校に向かう。


2週間ぐらい前、怪我をしていた女の子を回復してあげてから、どうもその子に懐かれている。


「お兄ちゃん、おはようございます。」


そう言って、リーシャはニッコリ笑ってくれる。


「リーシャ、おはよう。」


リーシャは1歳年下の5歳の女の子だ。


学校では無視され、誰にも相手にされない。

1日の会話は、ほぼリーシャだけで終わると言っても過言ではない。

この年下の女の子と話しをする時間が、唯一の安らぎの時間でもあった。


「えへへ、お兄ちゃん、聞いてください。

やっとお兄ちゃんに追い付いて、【植物魔法】のLVが6になったんですよ。」

「あはは、リーシャ、ごめん。

この前、LV7になったから、実は追い付かれてないんだ。」

「もう!やっとお兄ちゃんに追い付いたと思ったのに。」

「まだ、リーシャに追い付かれる訳にはいかないかな。」

「今度こそ追い付きますから、待っててくださいね。」


リーシャはニッコリ笑ってくる。

元勇者の俺は5歳の女の子の笑顔で癒されている。。。


でも…


ありがとう。

いつもリーシャの存在に助けられてるな。


「リーシャ、いつもありがとう。」

「何のお話しですか?」

「あはは、何でもない。こっちの話。」

「もう!お兄ちゃん、分かるように教えて下さい。」


そう言って、リーシャがポカポカ叩いてくる。


あはは、リーシャは本当に可愛いなぁ。

妹がいれば、こんな感じなんだろうか?


離れた場所から、姉妹では無さそうな付き人がいつも見ているから、どこかの良い家の子なんだろうけど。


昨日まで名前も教えてなかった。

学校では【回復魔法】と【植物魔法】が使えることを隠していた俺は名前を言うのを一瞬、躊躇ってしまった。


それを見たリーシャが

「では、私はお兄ちゃんってお呼びしますね。

いつかお名前を教えて下さい。

私のことはリーシャってお呼び下されば。」


そう言われてから、2週間が過ぎた。

毎日、この時間にここで会う。


リーシャのMPの数値は明らかに高い。

『植物魔法使い』LV6のMP量ではないのだ。


何か別の職業があると思い、【経験値吸収】を使おうとしたら弾かれる。

何らかの魔法系の中級職以上を持ってることは間違いないだろう。


MPが多いのはお互い様だから何も聞かないが。


「そう言えば、ユウキお兄ちゃん。

昨日の夕方、初級ダンジョンの転移部屋に入って行かれましたよね?

11階層にはお1人で行かれるのですか?」


なっ、見られてた?

この歳でダンジョンに行ってるのか…


英才教育っていうやつか。

さすがにソロでは無いと思うけど。


落ちこぼれとして追い込まれたユウキは経験値稼ぎの為、実は21階層に転移しているが、それをいちいち言う必要は無い。


フードを被っていたし、人違いだと言おうか迷っているとリーシャは何か察したのか


「あの…お兄ちゃん、ごめんなさい。

言いたく無いことでしたら、もう聞きませんので。」

「あぁ…。リーシャ、ごめんな。

ダンジョンに行ってるのは内緒にしてるんだ。

だから…聞かないでくれると助かる。」

「はい、分かりました。

お1人だと危ないと思います。お気を付けて。」


いつものようにリーシャがニッコリと笑う。

リーシャは優しいな。


「ありがとう。リーシャも気を付けて。」

「えへへ、お兄ちゃん。

いつかご一緒できるといいですね。」

「そうだな。リーシャが強くなったら行こうな。」

「お兄ちゃん。約束ですよ?」

「あぁ、約束。

それじゃ、そろそろ学校行くね。」

「はい。また明日。」


そう言って、リーシャが手を振ってくる。

俺も笑顔で手を振り返した。


はぁぁぁぁ。

本当に学校の奴らにもリーシャを見習って欲しいわ。

なんで、あの学校はあんなにギスギスしてるんだよ。


毎日毎日、レベル、レベルって、聞いててうんざりだわ。

そんなに良いスキルを覚えた奴が偉いのかよ。

そもそも、俺が無視されてても、先生は知らん顔だし。

対人訓練も、俺だけ2人ペアが組めなくてボッチなのに、何で3人でペアを組んでる奴がいるわけ?

普通におかしいだろうが!

俺はどうでもいいってことか?

もう学校に行きたくないんですけど!


ユウキには愚痴る相手もいない。

1人ブツブツと呟いていた。。。



ユウキが去った後、付き人の上級職『アサシン』のレベッカがリーシャに声を掛けた。


「お嬢様。

『植物魔法使い』『僧侶』がダンジョン11階層に1人で入れるとお思いですか?」

「まだ他にも職業があるということですか?」

「えぇ、ほぼ間違いなく。

まぁ、人には言いたくないことの1つや2つはあります。

触れない方がいいかもしれませんが。」

「でしたら、お兄ちゃんは職業が3つ以上あるんですね。凄いなぁ。

お兄ちゃんは私のことも何も聞いてきませんね。

ふふ、一緒にダンジョンに行けるように頑張らなくっちゃ。」


レベッカはユウキの隠し事に一早く気付いていた。

今後、ユウキの秘密はレベッカによって、調べられ、丸裸にされていく。




そして、孤独のユウキにもう一匹、癒しができた。

『魔物使い』に目覚めたことにより、1階層にいる小鳥の魔物を使役するようになった。


もちろん、戦闘では何の役にも立たない。

孤独で寂しかったユウキの話し相手として使役されていた。



「あぁ…ピー助…ごめんな。守ってやれなくて…。」


このピー助と名付けられた可哀想な小鳥は、実は4代目ピー助。

ユウキの寂しさに付き合わされ、今日もダンジョンの奥へと連れ込まれる。

そして、24階層で戦うユウキに着いていけず、また命を落とした。


「俺、ピー助の分まで頑張るからな。」


そう言って、彼はレベル上げを続ける。

ピー助との別れもあったせいか、いつになく気合いが入っていた。


「よし!レベルが上がった。

そろそろ、今日は帰ろうか。」


深夜0時過ぎ、ユウキはダンジョンを後にする。


「ピー助。おまえの名前はピー助だ。よろしくな。」


5代目ピー助の姿もそこにはあったという。。。



ステータス

ユウキ 6歳


HP 334/334

MP 314/314

体力 266

力  234

魔力 298

精神 324

速さ 261

器用 246

運  139

吸収 5


職業

戦士 LV7(83.88/700)

火魔法使い LV7(16.51/700)

水魔法使い LV6(563.01/600)

土魔法使い LV7(11.13/700)

風魔法使い LV6(534.48/600)

僧侶 LV9(50.2.96/900)

盗賊 LV6(122.44/600)

武道家 LV6(163.30/600)

吟遊詩人 LV7(594.42/700)

植物魔法使い LV7(241.05/700)

付与魔術士 LV7(92.03/700)

剣士 LV6(238.88/600)

盾使い LV6(325.14/600)

狩人 LV6(282.00/600)

薬師 LV7(686.80/700)

魔物使い LV1(92.48/100)

槍使い LV2(55.44/100)

遊び人 LV0(31.34/50)

斧使い LV0(47.22/50)


スキル

経験値吸収 LV5(350.73/500)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る