第2話 神様らしい彼女と一つ屋根の下

 コンビニに向かっている道中、俺の意識はそらを舞っていた。まるでこの世に存在してない者のようにそれはただぼーっとコンビニに足を進めていた。

 なんの変哲もないこの日常に突然私は神です、時を止めれますなんて言われ実際にそれを目にしてはい信じますなんてそんな人間は絶対に居ない、でもどうだ、どう転んでもあんなの目の当たりにして信じない方がおかしい。仮に手品や化学の類の可能性を考えたとして下校中の声は?鍵のかかったアパートにどうやって?それにあの時を止めたあの現象は?

 考えても考えても平凡な俺では立証不可能な難題ばかり、まさしく神の技としかいう他ない。そんなでコンビニについた俺はもう考えることをやめた。ただ一つわかることはあの神様とやらは空っぽな俺の心を少し埋めてくれるって言ってくれたことだけだ。しかし一年後学校を卒業し、各々が決めた道へと進み始める年代ならば誰でも「自分って何だろう?自分って何も無いな」と思っている奴は他にも居そうなのになぜ俺の元に?

 とりあえず神様(仮)が食べるかもわからないバニラアイスを2つ買い帰路についた。家についてみると俺のベッドにはまだ神様らしい美少女がすやすやと寝息を立てていた。こうして見れば、いや、こうしなくともどこからどうみても美少女なのは分かる、とりあえず買ったアイスを冷凍庫にしまいベッドの脇に肘をつきながら神様(仮)を見ていたらやはり先の今で疲れてしまっていたらしいそのまま意識はまどろみに消えた。






「おーい、起きてー」


 その声で閉じていた目蓋まぶたを開けるとそこには俺の肩を揺すっている美少女がいた。


「やっと起きた!私が目覚めたら君も寝ていたからこのまま見ててもいいのだけれどちゃんとベッドで寝ないと風邪引いちゃうかなと思って」


「・・・そんなことないです、また神様に起こされてしまいましたね。ありがとうございます、ところで神様とやらは帰る家はあるんですか?」


「そんなのあるわけないじゃん、これからはここに私も住まわせてもらうよ」


「えぇ・・・」


「えぇじゃないよ!!拒否権はないよ!!なんたって宿無し金なしなんだからさあ!!」


「でも神様ならば最初みたく実体化しなくてもいいんじゃないですか?」


「いーや違う!!なぜなら今この私の身は完全に受肉している!神の力を行使できても我の体を消すことは出来ない!」


「なんてこった・・」


「だからこの美少女神様と一緒に暮らそ?ね?」


「はぁ・・・もう好きにしてください、幸いにも布団は2つありますからどうぞ」


「えっ!?一緒にベッドじゃだめなのか?なんで?どうして!?」


(俺にとっては急にこんな容姿完璧な美少女と一緒に寝るなんてちょっと免疫てきにキツすぎる、今の俺なら襲う自信しかないから!!)

「文句言わないでくださいよ!!なんで今日知り合った方を家に住まわせてんのにその上急に一緒に寝ましょうだなんて普通無理でしょうよ」


「言われてみればそうだね、てっきりこの年頃の男の子は皆美少女が一緒に寝ようって誘ったら即答でYesしか言わないと思ってたのに、やっぱり君は興味をもって正解だったね」


 神様は屈託のない笑顔でそう言う。考えても仕方のないことだ、なんせ神なのだから。


「ところで思ったのだけれど、その中途半端で他人行儀な言葉使いはやめてくれないかな?せっかくこれから一緒に住むんだ、君が本来しゃべりたい感じでしゃべっておくれよ。そうじゃなきゃ君が疲れてしまうだろう?」


「・・・・・」


 俺は確信を突かれたような気がして黙り込んでしまった。


「だから、いいんだ。私は本当の君が見たくてこの世に現界したのだから、君は君のありのままを私に見せてくれればいい」


「・・・そうか、なら神様、お前と話す時はも一切自分を作るのを止めるとここに約束するよ」


「そう!それでいいの!なら今後、私のこと神様って呼ばずにヨミって呼んでね?今まで私にネコ被ってたんだからこれでおあいこね?」


「わかった、そうさせてもらうよ。じゃあ明日も学校だから今日はこれでおやすみ。ベッドは使ってくれていいから、俺どこでも寝れるし」


「そこは一緒に寝ればいいじゃん!!意外と頑固なんだね君は、まあでもいっか。ありがたくご好意頂戴するね」


 こうして神様もとい、ヨミと(どれぐらいの期間か聞くのを忘れていたが)一緒に住むことになった。

でもまぁなるようになるか、どうせ学校まで一緒に通うわけでもなし。そう思い眠りについた。




 翌朝、ベッドで太々しく寝ているヨミを横目に学校へ向かった。

三年生になりクラス変えもあったせいかクラスに見知った顔は数人程度だった。でもその中でもいつも通り毎朝絡んでくる奴が若干1名いた。


「おっはよー!!神宮寺君!!今年もまた一緒のクラスだね!!昨日の始業式の後のHRのあとすぐに帰っちゃったでしょ?せっかく6年もクラス一緒で長い付き合いなんだからいい加減挨拶しにきてくれてもいいっしょ!?」


「あぁ、おはよう。いつも元気だね九条さんは」


「そうだよ!元気だけが私の取り柄だから!」


「元気ハツラツ学園の人気物で生徒会長でもある九条 かえで様がこの凡人に朝っぱらからなんの御用で?」


「・・・なんか神宮寺君、いつもとしゃべり方違うね。いつもぎこちない敬語なのに、なんかあった?」


(・・そういえば昨日誰かさんに確信つかれてから、言葉遣い意識すんの忘れてた・・)

「いやあ、なんてことないよ!!ちょっとイメチェンしようと思ってたんだ。九条さんとはもう中学からクラス一緒だからさ、もういいんじゃないかって思って!」


「なあんだ!そういうことだったのか!だったら最初からそう言う話し方してくれればよかったのに〜、でもね?私嬉しいよ、神宮寺君がやっと心開いてくれたみたいで!じゃあHR始まっちゃうからまたね!!」



(はぁ・・・新学期早々に墓穴掘っちまった、もうどうにでもなれ)


 やがて担任の教師が現れHR始まった。一通りの1学期の説明を受けたところで担任が放った台詞で一気にクラスがどよめいた。


「それでは、今学期から転入してきた生徒を紹介します、みんな忙しい時期かもしれませんがくれぐれも仲良くするように。それでは入ってきてください神宮寺さん」


(あぁ?いまなんつった?)


 教室の扉がガララ・・と開いたその先には昨日初めて会ったばかりの美少女が、そこにはいた。


「はじましてみなさん、私は神宮寺 ヨミと言います急な転校で僅か一年の間ですがどうかよろしくお願いいたします。因みにそこに座っている神宮寺 碧君とは親戚にあたりますので一緒に居ることも多いかもしれませんがみなさんと仲良くなりたいと思っていますので気軽に話しかけてください。」


 急な美少女(神様)の転校に伴いクラスの漢どもの歓声が響渡り、あとはこんな美少女が神宮寺の親戚にいただなんてと言わんばかりの目線が俺に集中していた。

 (それにしても昨日の今日で学校通い始めるとか書類とかどうしたんだよ!神様パワーとかで片付けられたらたまらんぞ!)

 心の中精一杯の主張をしてみたがあの神様には一切届かない。


「それでは神宮寺 ヨミさん、ちょうど九条さんの席の隣が空いているからそこに座りなさい」


「わかりました。」


「初めまして神宮寺じんぐうじさん!神宮寺君と被っちゃうねヨミさんって呼んでもいいかな?私は九条 楓、これから一年よろしくね!」


「ありがとう!私のことヨミってよんでくれていいよ!よろしくお願いします」


 俺は二人の初対面の挨拶を見ていて思った、こりゃとんでもないことになっていると。なんたって家で静かに待っていると思っていた神様が早速目の前で大暴れしているのだから、さすがにここまでは話に聞いていなかった。

 そんな人の心配を横目に急にクラスメイトの観衆を横目にヨミが立ち上がった。両手を合わせピストルの構えを俺に向けながら言う。


「碧君、これがきっとサプライズって奴かな?」

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