心のかくれんぼ(月の逆位置)
月は不思議と私を魅了してくる。吸い込まれるように月を見上げ、そのままじっと見つめてしまう。
「今日も何気なく見ちゃったな……なんでなんだろ、不思議……」
理由は分からないが、何処か呼ばれているような気がして見上げてしまうのだろうか……そんな事をぼーっと考えていると、雲が月を覆い隠すように現れ、見えなくなってしまった。
「あ……月が隠れちゃった。恥ずかしくなったのかな?」
「ふふふ、ふふふ」
「……ルネさん?」
誰かの笑い声がしたと思い、振り返るとそこにはルネさんこと、『月』の逆位置さんが笑っていた。主な意味は『雲隠れ・未解決・消えない思い』など。彼女はいつも不敵に笑って登場するので、今ではすっかり見慣れた光景である。
「こんばんは、ルネさん。月隠れちゃったわね……」
「隠れた隠れた……心が隠れた……ふふふ」
「心が隠れた……?」
「心のかくれんぼ、誰にも見せたくないものを隠して、平静としてるの。表向きだけ見せて、裏側は隠れる……ふふふ」
ルネさんはそう言ってまた不敵に笑った。月は心の鏡だが、それを覆い隠してしまう雲がある。雲は何時もどこからかやって来て、月を隠してしまう。こうなると不安な気持ちでいっぱいになってしまい、どうすればいいのか分からなくなってしまう。
「怖い……」
「ふふふ、ふふふ。心が隠れた隠れた、隠れた心を探すのは、自分だけ。惑わされたら見えないまま、雲を払うのも自分だけ」
「自分が……払う……」
「雲を必要とするかしないかは、自分次第。隠したい時は隠せばいい、見せたい時は払えばいい。ただそれだけのこと」
ルネさんはそう言って、私の心臓を指差した。何となくモヤが晴れたような感覚になって、さっきまでの不安は吹き飛んだ。
「やっぱり……不思議だなぁ。でも、心を隠すのって案外よくやってしまっているのかもしれないな……ありがとう、ルネさん」
「?」
「今、払ってくれたんでしょう? ほら、月が顔を出してきた」
ルネさんと二人、月を見上げると隙間から月が顔を出しており、こちらを見ているかのようだった。心は臆病者だから、時々隠れたくなるんだろうなと、何となく納得したのだった。
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