第1話 鳥籠の鏡


俺こと可美河育(かみかわはぐむ)は

ここ、筆些乃病院で働いている医者

ついでにぶっちゃけると、面倒くさがりだ。

「今日も検診か。雨の日だと俺が担当だからなぁ

それにこれもまた商店街の人から貰ったしなぁ。」

ここのところ梅雨にはいり連日雨が降っていた。

病室のドアに着いたので開けてみると

一人の少女がベットの上でぬいぐるみと

にらめっこしていた。

「ねぇ、僕と友達になってくれる?」

「本当?!私、友達が欲しかったんだ!」

「友達になってくれるの?!」

「うんいいよ!」

何と!腹話術で話しているのだ!

ぬいぐるみが喋ってるかのように見えた。

育は偶然、手に持っていたぬいぐるみを少女の隣に置いた。

「あら、また来てくれたの?」

「また、遊びに来たよ、僕も仲間に入れて」

「今日はどんなぬいぐるみかしら?」

実はこのやりとりは数回している。

ちなみに今日のぬいぐるみは猫鳥だ。

猫と鳥をモチーフに合わせたもので

猫の耳とくちばしに羽が生えていて、

猫なのか鳥なのか分からないのか独特な見た目だ。

「まぁ、今日もまた変わったの持ってきたのかしら?ちなみにどんなぬいぐるみですの?」

「猫鳥さんと言って猫と鳥が混ざってるぬいぐるみだよ。」

少女に猫鳥さんを渡して自分の手で触って

色々触り探っていた。

「まぁ、変わっているのですね。きっとかわいいぬいぐるみなのね!」

そう、この少女は病気で眼が見えないのだ。

そのせいで変わってるぬいぐるみの姿であろうと

触らないとはっきりと分からないのだ。

「ねぇ、貴方に一つお願いしてもいい?」

「何かな?僕にできることなら」

少女は横から座る態勢に変えた。

「私、外に歩きたい。ずっと、この部屋から出れなくて小鳥さん達と話したいの」

正直、驚いた。

病人が笑顔で歩きたいといったのもそうだが

まるで外の世界を知らないような新しい世界で探求したい、その表情に凄く驚いた。

「.....懐かしい」

「ん?なんか言った?」

「いや、気にしないで。わかりました。んー僕の判断じゃ下せないから医院長に聞いてみるよ。」

「いいわ、ありがとう。」

育は、医院長の部屋に向かった。

ただ、あの病室は一つ言うなれば、

"鳥籠の中に閉じ込められた鏡"なのだ。


「私の願いが叶えればいいわね」


to be continue....

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