色彩のカルテ

希@縫いぐるみ使い

プロローグ

 多分、自分の古き記憶。


 ベットに横たわっているのは分かってる。

そして今触れてるのは布地ではない、抱き心地や触り心地が布団と違った、多分ぬいぐるみだろうと分かる。

「今日で何回目何だろうか....」

ザーザーと病室内に鳴り響く、この日は雨だった。

「雨は嫌いだ。僕の心を騒がす」

そう呟いた後に、カツンと足音が鳴り響く。

この歩幅にこの足音は....

「よぉ、少年!元気していたか?ん?」

「紅さんか、雨の音が嫌で仕方ないのに、それにまた仕事を抜け出して来たのかよ?鮎澤さんにチクるぞ」

「そりや勘弁してくれよ。ほら、新しい家族だぞ!」

何かを置いたことは分かる、うーん....大体予想がつくけど一応、触ることにする。

細長いようでツノのような形状ということは。

「....今日のはまさか、カブトムシとトンボのぬいぐるみとかじゃないだろうな...?」

「おっ!!よく分かったな!!そうだぞ!カブトンボ君だぞ!!可愛いだろ!」

「んー.....触り心地は悪くないけど、絶対気持ち悪そう」

「わがままだなぁ....うーん、可愛いと思ったけどなぁ....ところで少年は何で雨が嫌いなんだ?」

「雨は僕の心を騒がす、それが怖いから嫌い。」

「そうか。とまぁ、話変わるけど少年。お前のドナーが見つかったぞ。」

「...ってことは、治るのか?」

「あぁ....だから紅先生に任せな。」

それ以降から、

僕はぼんやりとして覚えていなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る