第五十九話ー奪還作戦の果てに




 爆発と黒煙によって騒がしくなった隊列の中、ヘルメスは騒がしくなっている後方へ視線を向けた。


「中佐殿、ここは一旦この場を残して引き揚げましょう。この距離なら市ヶ谷の援軍を要請するのも造作もないでしょう?先程、護衛は放ちましたから暫くは足止めできるかと」


「そうだな。一先ず巣穴へ撤退して体制を立て直そう」


 ヘルメスの提案に応じて宗像は車やトラックをその場に留め起き、その身だけで市ヶ谷の陸軍省へ向けて移動を開始する。

 宗像や他の士官達、湯崎と共に移動を初めながらヘルメスは口元に不敵な笑みを刻んだ。

 先程の光が何かは分からないが、欠けていたピースが揃いつつあるのは間違いない。

 この五年の間に準備してきた事がようやく報われるのだと思うと、胸が高鳴った。


「司教様」


 前方から士官達に指示を出していたソルが鮫島と共に合流する。


「ソル、貴方は無事ですね」


「司教様、このまま私を後方へ行かせてください。我が対が」


 騒ぎの起こった五台目と六台目のトラックの付近には、ユピテルとアプロディーテに任せている南天がいる。

 その身が危険に晒されていると感じたソルは、いつになく冷静さを欠いた容貌でヘルメスへ進言した。

 真っ直ぐにソルの仮面を見つめてからヘルメスは、沈痛な面持ちで首を横に振った。


「何故…」


「ソル、機会はあります。恐らくこの襲撃は貴方の対を奪還するためのモノ」


「ならば、奴等の手に渡してはなりません。またあのような暗い場所に我が対を閉じ込めるなど」


 焦燥感に駆られてまくし立てるソルの肩にヘルメスはそっと手を置いた。

 真っ直ぐにソルの仮面の奥にある瞳を覗き込み、諭すようにヘルメスは言葉を掛ける。


「大丈夫。ソル、貴方の愛しの対は必ず我々の手に取り戻しましょう。この状況を民衆に知られては些か面倒です。機を見て、行動を起こすのです」


「司教様……」


「まずは我々が無事でいなくては。そうでしょう?」


 ソルの頬に触れ、ヘルメスは優しく頬を撫でながらソルへと言い聞かせる。その手の動きと優しい声音に、それまで気の高ぶっていたソルはいつもの平静さを取り戻し、深く頷いた。


「承知しました」


「よろしい」


 我が子にするようにヘルメスはソルの頭を撫でると、神父らしい穏やかに微笑んだ。

 自身の職務を思い出したソルは、ヘルメスと宗像を護りながら、一先ず陸軍省のある方向へと歩き出す。

 後ろ髪を引かれるように、一瞬だけソルは肩越しに背後を振り返った。

 後方では風に煽られて薄れた黒煙が引いて行く。その中で激しい戦闘の音が響いていた。


(ルーナ…)


 脳裏に南天の容貌を思い起こしながら、ソルは唇を噛み締めて上司達に従事した。





 桜哉がアプロディーテと交戦する中、大翔は地面に投げ出された南天の下へと駆けつけた。


「南天君」


 聞き慣れた声に匍匐前進を止めて振り返ると、南天の身体はゆっくりと抱き起された。

 南天の身体を抱き起こした大翔は、南天の口に嚙まされていた猿轡代わりの布を外すと、安否を確認するように南天の顔を覗き込んだ。


「南天君、良かった、無事で」


「…大翔さん……」


 ホッと安堵の表情を浮かべている大翔を南天は大きく目を見開いて凝視した。


「真澄さんの代わりに君を安全なところまで誘導するから。歩ける?あ、ごめん、足も拘束されているんだね…」


 南天の全身を確認した大翔は南天の拘束が手だけでなく足にもある事に気づき、一瞬困惑した。

 足首に嵌められた鉄製の足枷を前に大翔は一瞬逡巡する。

 だが、ここでぐずぐずはしていられないと大翔は覚悟を決めて南天に自身の考えを告げた。


「南天君、僕が君を支えるから、出来る範囲で歩いて」


「え…あ、はい」


 体格差の変わらない南天に大翔は自分に寄り掛かるように告げる。それに少しだけ戸惑いながら南天は拘束された手を大翔の首に回して抱き着くような姿勢で立ち上がった。


「行くよ」


 二人三脚の要領で大翔は南天の腰に腕を回して支え、ゆっくりと歩き出す。

 拘束のせいで可動域の狭い歩幅を意識しながら南天は自分を支えている大翔に合わせて歩き出した。

 身を隠す先は日枝神社の鎮守の森。茂みの中へ身を潜ませれば、恐らくこの暗闇の中なら見つからない。


(後は、儀式とやらを終えた鬼灯さん達が合流すれば…)


 先程天に昇って目映い白銀の光を放っていた柱はいつの間にかその光量を落し、夜の闇に溶けるようにして消えていた。

 恐らく、儀式は終了したのだ。成功したかどうかは分からないが。


 南天の足取りを気にしながら大翔は繁みに向かって歩く。

 大翔に身を預け歩いていた南天は背後に現れた気配に、咄嗟に大翔を突き飛ばした。


「南天君っ!?」


 突然突き飛ばされた事に驚いて大翔が南天の方を向くと、そこには羊の頭をした二足歩行の黒い影が振り上げた拳を地面へ下ろす瞬間が目に飛び込んで来た。

 丁度、ついさっきまで自分達が歩いていた場所である。

 左右に別れるように地面に転がった南天と大翔は、自分達が先程まで歩いていた大地が穿たれているのに息を飲んだ。


 手近にあった石を拾い上げ、南天は怪夷目掛けて投げつける。

 怪夷の腰辺りに石が命中し、怪夷は緩慢に首を動かして石が飛んできた方角へ視線を向けた。


「逃げてっ!早く!」


 自分に注意を向けながら南天は必死の声量で大翔に警告を叫ぶ。

 南天の鋭い叫び声に大翔は身を起こして後退る。だが、南天に向いていた筈の怪夷の視線は標的を代えて大翔の方へと向きを変えた。

 巨体をゆらりと揺らして立ち上がり、羊頭の怪夷は標的を大翔に定め、足で地面を軽く削ると、一気に突進を開始した。


「くっ」


 コートの袖から札を取り出し、咄嗟に呪文を唱えて大翔は札を怪夷目掛けて放つ。

 バチンと音を立てて怪夷の額付近で札が火花を散らして爆ぜた。

 獣の毛に火が移り、羊頭の怪夷は蹄の付いた両手で額を焦がす火を消そうと藻掻く。

 その隙に大翔は南天の傍へと駆け寄る為に駈け出した。


「逃げてっ」


 此方に走ってくる大翔を必死に止めながら南天は更に怪夷の背中目掛けて石を投げつける。


 拘束さえ外れれば怪夷一体くらい倒せるのに。悲痛な思いが南天の中で巡り、必死に怪夷の横を駆け抜けようとする大翔を援護しようと南天は幾つも石を投げつける。


 だが、札で起こされた火の影響も直ぐに消え、怪夷は首を横に激しく振って大翔を探して身体を反転させた。


「わっ」


 怪夷の横を走り抜けた直後、大翔のコートの襟が怪夷によって掴まれる。


「大翔さんっ」


「わっこのっ」


 バタバタと足をバタつかせ大翔は怪夷の手から逃れようと必死に抵抗をする。

 だが、がっちりと爪を引っ掛けて掴まれた襟は、後ろに引かれる事で締まり、大翔の喉を圧迫した。


「ぐ…あ…」


 引き寄せた小柄な身体に腕を回し、怪夷は強い力で締め上げていく。

 ミシミシと全身の骨が軋む音と締められることによって生じる痛みと苦しさに大翔は顔を歪めた。

 圧迫され、呼吸が出来なくなる。顔が蒼白になり、酸素を求めてパクパクと口を大翔は口を開けた。


 目の前で苦しむ大翔に姿に南天は再立ち上がった傍に駆け寄ろうとする。しかし足首に付けられた枷によって、その願いは阻まれた。


「大翔さん!」


 自分ではどうにもできない現実に打ちひしがれ、初めて己の無力さを南天が味わった時。

 目の前に颯爽と人影が舞い降りた。


「あ……」


 長身痩躯のすらりとした背中に南天は大きく目を見張る。

 肩越しに振り返った人影が、力強く頷いたのに南天はこの上ない安堵感を覚えた。


「う…あ…」


 全身を締め付ける圧力に意識が飛びそうになった刹那、頭上でミシリと骨の砕ける音が響いた気がして、大翔は目線だけを頭上に上げた。


「あ……」


 それまで全身に掛かっていた圧力が抜けていく。と、地面から離なされていた大翔の身体は滑り落ちるようにして怪夷の腕から離れた。

 地面に大翔が尻餅をつくのと、頭を潰された怪夷が地面に仰向けに倒れて行くのはほぼ同時だった。


 倒れ行く怪夷の向こう側に、拳を握り締めた短髪の青年の姿を見つけ、大翔はキョトンと目を見張った。


「無事ですね」


 拳一つで怪夷の頭を潰したと思しき青年は、地面に座り込む大翔を見つめ、肩を落として握った拳から力を抜いた。


「貴方は……?」


 突如現れた青年に大翔は臆する事無く問いかける。

 その問いに答えようと青年が唇を持ち上げるより早く、後方から鬼灯と清白が駆けつけた。


「良かった、無事ですね」


「南天っ」


 地面に倒れた南天に駆け寄り清白は必死に抱き起す。

 その傍にしゃがみ込んで鬼灯は南天と大翔を交互に見遣り、ホッと胸を撫で下ろした。


「鬼灯さん、この人は?」


 新たに現れた青年を示しながら大翔は駆けつけてきた鬼灯へ問いかける。


「わたくし達の最後の仲間です。さ、まずはここから安全な所へ移りましょう」


 南天を抱き上げ鬼灯は青年と清白へ目配せをすると、大翔に声を掛けた。


「隊長達がまだ敵と交戦しています、助けないと」


「鈴蘭が援護に行っています。心配しなくとも、九頭竜隊長達なら大丈夫です。貴方と南天をまずは安全な場所へ送るのが先です」


「僕も?」


「ええ、怪夷戦ならともかく、長居すれば人戦になります。宮陣さんはあまり戦闘は得意ではないでしょう?」


 鬼灯の指摘に大翔は悔し気に唇を噛み締めた。異形や妖、人ならざるモノとの対戦なら大翔は抜群の戦いを見せるだろう。だが、肉弾戦ともなればその能力は特夷隊の中では誰よりも劣る。

 それは、この奪還作戦において足手まといになるという事だ。


「分かりました」


「大丈夫。貴方には感謝しています。南天を護ってくれてありがとうございました」


 ニコリと微笑み、悄然としている大翔に労いの言葉を掛けてから鬼灯は新たに呼んだ仲間と視線を交わした。

 鬼灯のそれに頷き、青年は大翔の肩に手を添えて、その場からの移動を促した。


「さて、後は任せますよ」


 日枝神社の鎮守の森に逃げ込みながら鬼灯は真澄や朝月達に声援を送った。




 完全に煙幕が消え去り、視界が開けた中で真澄はユピテルと、桜哉はアプロディーテと一対一の攻防戦を繰り広げていた。


 南天を大翔が保護で来た事が分かれば後はこの場を離脱するタイミングを考えるだけである。

 だが、目前に立ち塞がるユピテルは自分よりも二回りも大柄な上、腕力もあってかその圧力を防ぐのがやっとだった。


「はあ、はあ…」


 上がった息を整えて真澄は再び軍刀を構える。稽古や怪夷戦でも一人で長い時間剣を振るう事はない。今回はかなりの持久戦を余儀なくされていた。


 もう少し長引けば此方にとって分が悪い。

 チラリと横で戦闘を続けている桜哉を見遣るが、彼女も慣れない武器を使う相手に翻弄されているのか、思うような力を出せていなかった。


(もう少し人相手の戦い方も訓練しないとまずいかもな)


 柄を握り直しながら、そんな呑気な事が脳裏を過る。これはまずいなと内心で苦笑しながら真澄は再び大きく踏み込んだ。

 左程大きさのある訳ではない普通の剣が、異様な重量を纏って真澄の上に振り下ろされる。それを横に薙いで躱し、真澄は身をかがめてユピテルの懐へ踏み込み、駆け抜け様にその脇腹へ一太刀を浴びせた。


「くっ」


 相手が纏う制服の布ごと、皮膚が裂けて鮮血が飛び散る。そのまま背後に駆け抜けて真澄は上段に振り上げた刃をユピテルの背中に目掛け、袈裟懸けに振り下ろした。


「ぐあっ」


 ユピテルの口から籠った呻き声が響く。だが、筋肉質な体躯には致命傷を与える事は出来なかった。

 ゆらりとよろめきユピテルは脇腹の傷口を押さえながら真澄を振り返る。


「なかなかやるな…」


「どうも、指導してくれたお師匠様がスパルタだったからな」


 二か所も傷を負わされたにも関わらず、何処か楽しげにしているユピテルの称賛に真澄は、悪戯っ子のような顔で応じた。


 剣を握り直し、再び交戦の構えをユピテルが取った時、耳に付けていた無線機から大翔の声が聴こえてきた。


『隊長、対象の保護が完了しました。鬼灯さん達も合流済みです』


 大翔の声を聴いて安堵しつつ、真澄は目線だけで桜哉を追った。

 舞うように桜哉を追い詰める尼僧服の女をどうにかしない限り、この場は切り抜けられない。

 ユピテルの動向を警戒しながら逡巡をしていると、状況は思わぬ形で好転した。



 円状の刃がクルクルと回転しながら桜哉の周囲を旋回する。

 それを弾き落として刀の軌道を変えると、目の前に踏み込んで来たアプロディーテが迫っている。


「くつ」


 横にどうか跳んで踏み込んできたアプロディーテを避けて桜哉は相手から距離を取るが、ブーメランの要領で戻って来た円状の刃を避ける為、着地地点が思うように定まらなかった。


(こんな戦い方…どうしたら…)


 剣の腕は特夷隊の中で恐らく最強である桜哉だが、それは対怪夷戦や刀同士の対戦に基づくものである。

 目の前の相手の踊るように変化する動きの相手と対峙した経験などこれまでほぼ皆無な桜哉にとって、アプロディーテは未知の相手だった。


「あらあら、最初の勢いはどこに行ってしまったのかしら?」


 頬に手を添え、余裕の笑みを浮かべているアプロディーテに桜哉はギリリと奥歯を噛み締めた。


「まだ、終わりじゃありません」


 柄を握る手に、自然と力が籠る。今回の作戦は桜哉に取っても思いの深いものだった。

 あの日、南天が攫われたのは自分を庇った直後。もし自分が怪夷をきちんと相手に出来ていたら、南天を拐かされることなどなかっただろう。


 鬼灯は真澄との喧嘩が要因だと言っていたが、もっともの原因は自分にある。

 その自責の念こそが、桜哉が今回の作戦で南天救出班へ志願した理由だった。


 アプロディーテが繰り出す円状の刃によって、桜哉が纏う潜入用の黒い制服はあちこちが破れ、覗いた皮膚からは鮮血が滲みだしていた。


 他者を動きで翻弄しながらじわじわと傷を付けて追い詰めるアプロディーテの戦い方は正攻法を信条とする桜哉とは相性が悪かった。

 まるで、狩りの獲物にされているような気分に桜哉は生来の負けず嫌いから闘志を燃やしていた。


 数度目の踏み込み、左右から円状の刃が桜哉に襲い掛かる。

 一本は弾いたが二本目が肩を掠め、皮膚と肉を切る。

 痛みの腕を下ろしそうになるが、桜哉はそのまま一気にアプロディーテの間合いに踏み込んでいく。


「貴方みたいなのを猪武者っていうのかしら」


 やらやれと肩を竦めるアプロディーテに桜哉は気合の声を上げながら踏み込んだ。

 だが、ひらりと回るように横へ流されて桜哉はそのまま直進する。


「ふふ、残念でした」


 ひらりと後方へ跳びながらアプロディーテは桜哉の背中目掛けて円状の刃を二本、投げつける。

 勢いのまま切り返しが遅れた桜哉の背中に円状の刃が迫る中、二人の間に人影が舞い降りた。


「はああっ」


 背丈度もある大剣を振り下ろし、剣圧と長い刃で円状の刃が地面へと叩きつけられる。


「よくも私の桜哉ちゃんを痛めつけてくれましたわね」


 豪奢な金髪を揺らし、憤慨した表情でアプロディーテの前に立ち塞がった人物に、桜哉は目を輝かせた。


「鈴蘭さん!」


「遅くなってごめんなさい。でも、私が来たからにはもう指一本触れさせませんわ」


 歓喜に胸を高鳴らせる桜哉に片目を瞑って笑いかけ、鈴蘭はユピテルを牽制している真澄に声を掛けた。


「九頭竜隊長、離脱しますわよ」


 懐から筒状の物を取り出した鈴蘭は桜哉が自分の背後に来たのを確認するなり、それをアプロディーテとの間に投げ落とした。

 地面に付いた瞬間、激しい閃光が迸り、更に黒煙が立ち上ってユピテルとアプロディーテの視界が塞がれる。


 その隙に真澄と鈴蘭、桜哉はその場から離脱した。






 真澄達特夷隊による襲撃騒ぎから一時間後。


 市ヶ谷の陸軍所から援軍を呼んで戻って来た鮫島とソルは、街道に広がった状況に眉を顰めた。

 積み荷や人員に左程の被害は出ていなかったが、護身用に用意していた怪夷は三体とも倒され、無残な姿を晒していた。


「残骸は回収しろ」


 連れて来た兵士達に指示をだし、ソルは各トラックの状況を確認する為に現場を歩き回る。

 襲撃の現場である五台目と六台目のトラックの間でソルは地面に座り込んだユピテルと疲れた様子でトラックに寄り掛かるアプロディーテと再会した。


「二人とも、無事だな」


「ソル。申し訳ない。例の少年を奪還されてしまった」


 ソルの姿を見つけるなり、腰を上げて歩み寄ってきたユピテルをソルはじっと見つめた。筋骨隆々で逞しいユピテルが怪我を負っている事に眉根を寄せてソルは、唇を噛み締めた。


「いや、貴殿はよくやってくれた。私の采配ミスだ。それより、早く市ヶ谷の陸軍省へ退避して傷の手当てをしてもらうといい」


 湧き上がる憤りはあるが、これは自分の不甲斐なさ故と己を律し、ソルは傷ついたユピテルへ労いの言葉を掛けた。


「アプロディーテもすまなかったな」


「あら、私は結構楽しかったわ。あのお嬢さんとまた交われる時を楽しみにしている」


 ユピテルとは対照的に、恍惚に頬を染めているアプロディーテにソルは眉間を押さえて溜息をついた後、コートの裾を翻した。


「司教様がお待ちだ。直ぐに戻れ」


 二人へと指示を出したソルは再び先頭車両の方へと戻り、鮫島と共に移動の手筈を整え始めた。


 東の空が白み始める頃。

 街道からは深夜にあった混乱が嘘であったかのように、トラックの隊列は消え、怪夷の残骸も何もかもが綺麗に片付けられていた。


 全てを隠すように、朝日はゆっくりと街道と日枝神社を照らして昇った。








**********************



暁月:次回の『凍京怪夷事変』は…


弦月:無事に南天奪還を果たした真澄達。新たに現れた鞘人がもたらすものとは!


暁月:第六十話「五人目の鞘人」次回もよろしくね!



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