第八話ー怠惰な猫、居場所を得る
梅雨の湿った空気が、肌に纏わりつき、ほんのりと蒸し暑さを感じさせる。
五年前の大震災の後、華やかで先進的な建物が立ち並ぶ様になった東京の街。
その中で最先端の流行の発信地であり、様々な文化人が集う銀座のビルの上、南天は軍都・東京の街を眺めていた。
大きく口を開けて欠伸をし、猫のように伸びをする。
先の震災の後、火災を意識して広く設けられて道路には、着飾った人々が行交い、昼間から賑やかだ。
昼時を過ぎたばかりだが、辺りから洋食屋のデミグラスソースの芳醇な薫りやライスカレーの刺激的な薫りが漂ってくる。
朝から東京府を歩き回り、既に太陽は中天を過ぎようとしている。
真澄に言われた昼過ぎももう直ぐだ。
(そろそろ大統領府に向かわないと...)
真澄の危惧とは裏腹に、南天は言われた事を忘れてはいなかった。
西側に視線を向け、ゆっくりと立ち上がる。
(それにしても...何処にいったんだろう...)
上着のポケットから小さな長方形の板を取り出し、自分の顔が映る鏡のように磨かれた真っ黒な表面に南天は視線を落した。
昨日、何度呼び掛けても共にこの地へ来た仲間との連絡が取れなかった。今もそれは変わらない。
やはり、自分達がいた場所と今いる地では文明に違いがあるせいか、通信機も役に立たないのかもしれない。
雲の流れて来る西側の空を見上げ、南天はふと、真澄の事を思い出した。
契約に対して頑なに拒んでいるようだった。
(会えば分かるという訳でもないらしい...)
家に泊めてもらった昨晩、真澄の事を観察してみたが、何かに気付いている様子はなかった。
だが、いずれは例の契約を果たさなくてはならない。
チラッと、視線を旧江戸城がある方角へと向ける。
今は結界で護られているが、あそこが今も怪夷を吐き出しているのは間違いない。
「......」
銀座に来る前に周囲を歩いて見たが、胸の奥がざわついて長居は出来なかった。
禍々しさに包まれたあの場所に、南天は嫌悪感を覚えた。
そう気長に構えてもいられないと思いながら、南天は身軽にビルから跳び降りると、屋根伝いに目的へ向かって走り出した。
詰め所に辿り着くと、南天はそっと建物の中に入った。
玄関を入った所で、丁度出て来た真澄と鉢合わせた。
「お、ちゃんと来たな」
懐中時計を見遣り、真澄は無事に辿り着いた南天に笑いかけた。
「こっちだ」
真澄に促され南天は無言でついて行く。
「皆、集まってくれ」
執務室に戻ってきた真澄に呼ばれ、各々事務仕事に勤しんでいた特夷隊の面々は手を止めて集まってきた。
「あ、そいつか隊長が言ってたのは」
部屋に入って来た南天を隼人は興味津々と覗き込む。
真澄同様高身長の隼人に覗き込まれ、南天は彼を見上げる形になる。
「女みたいな顔してるな。これで強いんだろ?」
「隼人...そんな不躾に見たら流石に失礼じゃない?」
ジロジロ南天を見ている隼人の様子に拓は困った様子でその肩を叩いて、僅かに距離を離した。
南天は気にしていない様子だが、あまり居心地良さそうにはしていない。
「ごめんね。こいつ、好奇心は強いから。僕は月代拓。特夷隊の隊員です。君が隊長が言っていた南天君、かな?」
穏やかに微笑まれ南天は小さく頷いた。
拓の雰囲気は人を落ち着かせる。それに南天も警戒を解いたのかもしれないと真澄は感じた。
だが、拓を見詰めた南天は彼の面影に懐かしさを覚えていた。
「そういう所は役得だよな。俺はこの特夷隊の副隊長、赤羽隼人だ。お前、一人で怪夷を倒したらしいな」
「はい。ボクは、怪夷討伐用に造られた殺戮人形ですから」
キッパリと言い切った南天に隼人は肩を揺らして笑いだす。
「ははは、隊長が言ってた通りだな、隊長が困惑した理由が分かったわ」
「マスターが皆さんにボクの事を話したんですか?」
「そうだ、お前の今後をどうするかにしても、昨日の事を話さないとならなかったからな」
南天の視線を受け、真澄は真っ直ぐにその目を見て答えた。
「勝手に話したのは悪かった。けど、お前に会ってない奴もいたからな」
「マスターの判断なら、仕方ありません。本来ならボク自身が話すべき事ですが。お手を煩わせました」
直立不動の姿勢で見事なお辞儀をして南天は絡繰り人形のような規則正しい動きをする。
「さて、それじゃあ、俺から全員に発表がある」
自身と南天の周りに集まった部下達を見渡し、真澄は咳払いをしてから言葉を紡いだ。
「南天、今日からお前をこの大統領直属特務怪夷討伐小隊の隊員に任命する」
真っ直ぐに背筋を伸ばし、軍人らしく真澄は南天に辞令を告げる。
「よろしいのですか?」
少し不安と訝しむ視線を真澄は真っ向から受け止める。
これは、自分だけの意見ではない。
部下達が背中を押してくれた結果だ。不安は残るが、真澄はこの決定に賭けた。
「お前の強さは戦力として欲しいしな。色々怪しいが、お前を信用してここに加える事にした。後日大統領にも謁見して貰うが、まずは俺達と一緒に怪夷討伐に尽力してくれ」
告げられた辞令に南天はそれまで驚いていた様子の表情を引き締め、感情を消した容貌で敬礼をした。
「マスターの手足となって怪夷討伐に尽力する事をお約束致します。この南天、どうぞ武器としてお使い下さい」
「待て待て、だからそういうんじゃねえって」
訓練された敬礼と歴戦の戦士のような顔つきの南天の発言に真澄は困惑した。
「いいか、小隊と言っても、俺達は仲間なんだ。誰かを武器とか駒とか、そういう考えは一切ない。お前もここの一員になるからには、仲間を大切にしろ」
溜息をついて頭を抱え真澄は、真顔で聞いている南天に言い聞かせた。
「...承知しました」
数秒考えてから南天は真澄の言葉を受け入れる。
(価値観の差...っていうのかこれは...)
幼少期から世界各国を旅して色々な文化に触れてきた真澄でも、南天のこの極端な考え方には困惑を隠せなかった。
「南天君、よろしくね。僕は宮陣大翔。昨日は助けてくれてありがとう。困った事や分からない事があったらなんでも聞いてね」
頭を抱えている真澄を助けるように、横から話の流れを変えたのは大翔だった。
「私は六条桜哉です。昨日はありがとうございました。南天さん、これからよろしくお願いしますね」
歳の近いであろう大翔と桜哉が南天を囲んだ事で場の空気が和らいだ。
南天も、この二人には警戒心が働いていないのか、静かに話を聞いている。
「よろしくな。南天。俺は昨日挨拶してるから割愛で」
大翔と桜哉の間から顔を出して朝月はニヤリと笑い掛ける。
「と、言うわけだ」
「オレを迎え入れてくれるのですか?」
大翔達の歓迎ぶりに驚いているのか、南天は僅かに声を震わせて真澄に訊ねた。
それに真澄は肩を竦めつつ頷く。
「だから、隊長がそう言ってるだろ。お前は俺達の仲間になったんだよ」
南天の肩を隼人は背後から叩いた。
「改めてよろしくね。南天君」
「よろしくお願いします...」
柔和な拓の笑みに促されるように、南天は隼人を始め、五人の特夷隊の面々を見渡した。
「さて。定時まで仕事したら、今夜は歓迎会も含めて俺の店に行くぞ」
パンパンと手を叩いて自分の方に全員を注目させ真澄はニヤリと笑う。
隊長の口から出た一言に、南天以外は口々に歓喜した。
「いいっすね!旦那の奢りで」
「しょうがねぇなぁ」
「やったぁ」
「朝月、少しは遠慮しろよ」
「分かってますって」
「それじゃ、溜まってる報告書とか頑張って仕上げないとね」
「はい、頑張ります」
ぞろぞろと隼人達は己のデスクへと戻って行く。
「南天、お前はこっち」
手招きをされ、南天は真澄の後ろをついて行く。
執務室を出て、廊下を歩き真澄が南天を連れて来たのは、医務室だった。
「入隊するに当たって、簡単な検査を受けてもらう。後は俺達の医療的サポートをしている三好にも紹介しないとな」
「昨夜言っていた怪夷の研究をされている方ですね?」
「そうだ」
頷いて真澄は、医務室の扉をノックする。
返事が返って来たのを合図に、扉を開けて中へと入った。
「お疲れ様です。先生」
「お疲れ様。待ってましたよ」
ニコリと微笑みながら出迎えてくれた白衣の男の前に、真澄は南天を引き出した。
「彼が昨夜言っていた南天君ですね。初めまして。私はここで軍医をしている三好と申します」
微笑んだまま、三好は親しげに両腕を広げる。
「南天です...」
ゆっくりと歩み寄ってくる三好を南天はじっと、探るように見据えた。
「そんな怖い顔しなくても大丈夫ですよ。検査といっても、ただの健康診断ですから」
無言で自分を見据えてくる南天が警戒していると感じたのか、三好はくすりと笑う。
「九頭竜隊長、彼と二人だけにしてくれますか?」
「ああ、構わないが」
三好の申し出頷く真澄を、南天は驚いた様子で振り返る。
「時間が掛かるので、貴方は業務に戻ってください。終ったら返しますから」
表情の乏しい中に、僅かに不安を覗かせた南天を見遣り、真澄はその肩を優しく叩いた。
「三好先生は信用できる。心配しなくても、怖い事はないぞ」
「...はい、マスターがそう言うなら...」
微かに硬い声音で南天は頷くと再び三好の方を振り向いた。
「それじゃ、よろしくお願いします」
「ええ」
首を傾けて穏やかに微笑み、三好は南天と共に医務室を出て行く真澄を見送った。
「さて...」
ぱたんと扉が閉まった後、三好は改めて南天と向かい合った。
「......」
「そんなに警戒しなくてもいいでしょう。それとも、貴方は私が何者か、気付いているのでしょうか?」
意味深な三好の言葉と視線を南天は無言で受け止める。
「貴方はボクの知り合いと同じ匂いがします...」
「ふふ、面白い事を言いますね。まあ、少なくとも私は敵ではない。どちらかと言えば貴方達側だという事だけは覚えておいて下さい」
南天に椅子に腰掛けるよう促して三好はデスクの前に腰掛けた。
「...そうか、彼は成功させたのですね...」
「彼?...貴方はドクターを知っているのですか?」
三好の口から出た言葉に南天は疑問を返す。
「ふふ、ただの知人です。さて、簡単に健康チェックをしましょうか。上着を脱いで下さい」
促されるまま、南天は狩衣のような上着を脱いで、三好の前に腰掛けた。
「貴方一人でここへ来た訳ではないでしょう?他の仲間はどうしました?」
南天の腕に注射器の針を刺しながら、三好は淡々と問いかけていく。
「今回送られたのは、ボクともう一人だけです。...一番親和性の高い者だけが選ばれましたから」
「そのもう一人とは、はぐれてしまった...けれど、貴方達の目的は九頭竜真澄との接触。任務を優先しましたか」
まるで見ていたとでもいうような三好の推測に南天は頷いて答えた。
「こちらと向こうの行き来の安全性の保証もない中送られて来たという事は、貴方は余程あれとの親和性が高いのですね。一体、どれをその身に宿しました?」
「...それについては教える訳にはいきません。ボクはドクターからの任務を果たすのみです」
「任務に忠実な狗。何処の兵科の出身かは敢えて聞きませんが。その態度は九頭竜隊長にいい印象を与えませんよ」
椅子から立ち上がり、三好は別の検査をする為に南天を医務室の奥へと通す。
「その様子では、例の契約は完全には済んでいないのでしょう?」
三好の問い掛けに南天は驚いて目を見張る。
そのまま、悄然と俯いた。
「南天君。九頭竜隊長はなかなか手強いですよ。気長に考える事も大切です。何かあれば私が相談に乗ります。...ここに飛ばされたあの日から、彼が貴方達を送り込んで来たら手を貸すつもりでいましたから」
「怪夷の研究もその一貫ですか?」
昨夜真澄から聞かされていた事を、南天は問いかける。
「ええ、敵を知るのは大事な事ですからね。私には貴方達のような浄化の力はなくとも、同胞を暴く事は出来ますので」
自身の片目を隠して意味深に笑い、三好は南天の身長や胴回りを巻き尺で計った。
「どうせ着ないと思いますけど、一応制服は用意しておきます」
三好の厚意に南天は首を縦に振った。
身体検査は思いの外時間が掛かり、南天が真澄達の執務室に戻る頃には、西に陽が傾いていた。
「お、戻ったな」
部屋に南天が戻って来ると、真澄達はすっかり仕事を終らせて、各々寛いでいた。
「さて、丁度定刻だし。行くか」
座っていた隊長席から腰を上げて真澄は部下達を促した。
「腹減ったあ~」
「定時に帰れるのは久し振りだな」
ぞろぞろと出入り口の方へ向かって来る特夷隊の面々に、南天はキョトンと目を円くした。
状況が掴めず突っ立っている南天の肩を、大翔が優しく叩く。
「これから隊長のお店に行くんだよ。南天君も一緒に行こう」
大翔に促され南天はチラッと真澄を見遣る。
「ほら、行くぞ」
伺うような視線に気付いた真澄にも促され南天は遅れて、特夷隊の後を歩き出した。
軍都東京の北東。上野山の麓にある御徒町の一角に、真澄が趣味で経営をする喫茶店『喫茶アンダルシア』が建っている。
店名は真澄の父親の故郷であり、真澄が生まれたスペインの地名に由来している。
御徒町に着く頃には、日はすっかり西の彼方に落ち、東から紺青のベールが空を覆い隠そうとしていた。
カランと、ドアベルが乾いた音を立てる。
店内に入ると振袖に袴、革のブーツにフリルのあしらわれたエプロンを身に着けた晴美が出迎えてくれた。
「おかえりなさい~」
「晴美さん、お邪魔するよ」
最初に店に入った隼人が軍帽を上げて会釈をする。
「どーぞ、どーそ。貸しきりにしといたんで」
ニコニコと特夷隊の面々を出迎えた晴美は、真澄以外の六人を座席へと促した。
昼間のうちに真澄から連絡を貰っていた晴美は、既にテーブルや椅子を宴会が出来る形に設置してくれていた。
テーブルには、ビール瓶やブランデー等の酒類、サイダーやオレンジジュース等の他、簡単なつまみや焼き菓子等が置かれている。
「俺は支度してくる」
晴美にその場を任せ真澄は一度、店の奥へと入っていった。
「ささ、皆さん適当に寛いでくださいね。そのうち店長がご飯作ってきてくれますから」
「晴美さん、今日はすみません。急だったでしょう?」
店内の内装がいつもと代わっているのを見て拓は晴美を労った。
「いえいえ、昨日からそんな予感してたんで。全然気にしてないですよ」
「そう言う訳だ」
奥から戻ってきた真澄に、全員の視線が向く。
いつもの軍服ではなく、シャツに腰にエプロンという格好の真澄に、隼人は苦笑した。
「その格好してると、普通にかふぇのマスターって感じだよな」
「まぁ、俺の趣味だけどな」
肩を竦めて真澄は苦笑する。
「隊長は、そちらも似合うと思います」
「そうか?それは嬉しいな」
桜哉からの褒めの一言に真澄は照れ臭そうに笑う。
「旦那ぁ、飯ー」
「あー分かったよ」
苦笑し真澄はカウンターの中にあるキッチンに入る。
朝月達は貸し切りとなった店内の晴美がセッティングしてくれた椅子に腰を下ろした。
「……」
目の前で繰り広げられる状況についていけず、一人南天はカウンターの側で立ち尽くし、キッチンの真澄の姿を追う。
じっと、無言で真澄を追っていると、晴美に後ろから声を掛けられた。
「南天君も座って。今日はキミが主役なんだから」
「ボクも?」
眉をひそめる南天を有無を言わさずに晴美はぐいぐいと背中を押してソファ席へ促す。
「キミが座らないと始まらないの」
「……」
「ほらほら」
「……」
ぐいぐいと押してくる晴美を肩越しに振り返り、南天は困惑する。
「歓迎会なんだよ。わかる?キミの」
「分かりません」
晴美に促されるまま南天は、ソファ席の一人掛けに仕方なく座った。
「あのね~ともかく~」
「姉さん、姉さん、怒らないでください」
晴美に詰め寄られている南天に助け舟を出したのは、大翔だった。
「だてぇ~」
自分と良く似た大翔に窘められ、晴美は頬を膨らませる。
そんな実の姉に大翔は溜息をついた。
「晴美。南天困らせるなよ」
カウンターの中にあるキッチンから真澄は大翔に加勢する。
「店長~いじめてないですよ~」
「ほんとにそうか?」
キッチンから両手に皿を持って出てきた真澄はそう言いながら、テーブルに料理を置いた。
大皿に載せられたナポリタンやオムライス、まだ日ノ本では珍しい真澄が生まれた場所の郷土料理であるパエリアなどが並べられていく。
「相変わらず美味そうだよな。隊長の料理」
「美味そうじゃなくて、美味いんだ。さて、適当に食ってくれ」
それぞれが取り皿と箸やスプーンを手に、特夷の面々は料理を取り分けていく。
「いただきます」
ほぼ同時に聞こえた挨拶を合図に、宴会が始まると、テーブルを囲んだ店内は更に賑やかになった。
すっかり減った胃袋にこの国を担う若者達は出来立ての料理を収めていく。
その様子を南天はぼんやりと見詰めた。
「南天」
不意に名前を呼ばれて振り向くと、コーヒーカップを手にした真澄横にいた。
「これは、俺からお近づきの印な」
そういって真澄は南天の前にコーヒーカップを置く。
「マスター?」
「新しい奴が俺の隊に入ってきたときの恒例だ。コーヒー飲めるか?」
「飲めます」
こくりと頷く南天の横から、朝月や隼人がテーブルに置かれたコーヒーカップを覗き込んでくる。
「お、来たな入隊お祝いコーヒー」
「どんな柄にしたんですか?店長~」
全員の視線が南天の前に置かれたコーヒーカップの中に注がれる。
そこには、三日月の上に寝転がる怠惰な猫のラテアートが描かれていた。
「ネコ…」
「にゃんこだ~」
「似てるだろ?南天に」
「確かに、雰囲気あるな」
「怠惰な猫ですね」
「そっくりです」
「…可愛い…」
カップを覗き込んでくる全員を尻目に、南天はカップを両手で持ち、呟いた。
「気に入ってくれたようだな。南天、お前も飯食えよ。足りなきゃ作るから」
南天の頭をポンポンと撫でると、真澄は再びキッチンに戻っていく。
その背中とカップの中のラテアートをチラチラ見つめた後、カップの縁に口を付けた。
カフェラテがゆっくりと口の中に注がれる。
すると、ほろ苦さの中にほんのりとした甘さとミルクのまろやかさが口の中を満たしていった。
その温もりに南天は、ホッと息をついた。
***************
第九話予告
刹那:さてさて、次回の『凍京怪夷事変』は?
三日月:南天の歓迎会を終えて家路に着く朝月は、家の前で倒れた少年と遭遇し…
刹那:第九話『鬼火が導く巡りに従いて』次回もよろしくな
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます