序章
序
目の前に立ちふさがるのは、既に見慣れた旧時代の異形。
だが、
「はあ、はあ、たく…こんなのと遣り合ってたって話、今でも信じられないよなあ」
蜘蛛のような形状の身体に、紅いぎらついた二つの点を並べた目が、自分を見下ろしてくる。
「旦那!」
「隊長!」
振り下ろされた鈎爪状の前脚が、真澄の頭上へ襲い掛かる。
部下達の警告の声が後方から響き、こちらに駆け付けようと軍靴の疾走音が聞こえてくるが、間に合わない。
かつて、この異形と日夜渡り合っていた者達がいた。
大災厄という名の世界を混沌と混乱へ陥れた異形の怪物は、ある人物達によって封じられた筈だった。
それが、あるきっかけを経て、今こうして再び地上を
その討伐部隊の隊長を日ノ本共和国の大統領より任じられたのが、真澄だった。
軍刀を手に真澄は、振り下ろされた鈎爪状の前脚を受け止めようと上段の構えを取る。
この異形と渡り合ってきた人物達に及ばずとも、自分には護るものがある。
歯を食いしばり、軍靴の裏に力を込めて踏ん張ると、真澄は鎌状の脚を迎え撃つ。
「隊長っ!」
部下の一人の悲痛な声が、廃墟の闇に響き渡る。
振り下ろされた鈎爪の先端が、真澄の首を刎ねる寸前。
白銀の閃光が、火花を散らし、黒い異形が真澄の眼前でよろめいた。
「…遅くなりました、マスター」
凛と、鈴を鳴らしたような、少女とも少年ともとれる中性的な声音が、真澄の鼓膜を優しく震わせる。
「お前…」
眼前に立ち、鎌状の脚をすっぱりと切り裂いたのは、右手に鉤爪、左手にナイフを逆さに手にした白銀の髪を持つ少年だった。
首筋を緩く、すっぽりと覆う襟に、両肩から袖が半分離れた、狩衣に似たこげ茶色の衣服を纏うその少年は、肩越しに真澄を振り返った。
「こいつは…
左側の前髪を編み込み、尻尾のように伸びた銀糸の髪を揺らした髪型の少年は、袖の中に隠すように持つ鉤爪とナイフを手に、異形の怪物―怪夷へと向かっていく。
「
真澄の制止の声を無視して、少年は怪夷の前へと飛び上がった。
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次回予告「聖剣あにまる劇場」
弦月:おや、これは失礼。
ええ、皆様お初に御目に掛かります。わたくし弦月と申しますしがない狸でございます。
今作凍京怪夷事変は、新たな試みと題しまして、次回予告なんてものをやろうと意気込んだ作者に頼まれて、この物語の前日譚である『逢坂怪夷奇譚』より出張して参りました。
刹那:オレは刹那。前日譚って言っても、この『凍京怪夷事変』は独立した物語なので、前作読んでなくても楽しめるので、そこは安心してくれ。まあ、読んでくれたら作者が泣いて喜ぶけどな…
三日月:初めまして、ボクは三日月というハリネズミです。この『聖剣あにまる劇場』はさっき弦月お兄ちゃんが説明した通り、次回予告をするオマケコーナーです。あ、刹那は猫です。
朔月:初めまして。俺は朔月。五匹の兄弟の長男だ。姿は鷹だよ。この『聖剣あにまる劇場』は、前作と今作を微妙に繋ぐ役割もあるのでよろしく。
暁月:暁月だよ。キュートでラブリーなペンギンで次男です。ちなみに、刹那が四男で三日月が末っ子ね。次回予告の他に、ちょっとした小話も考えてるから、ただの後書きだと思って気を抜いちゃだめだよ!本編と僕等も関係あるから、忘れないでね!
弦月:賑やかな面々でございますが、以後、よろしゅうお頼み申します。
刹那:まあ、ある意味ただの次回予告だから、気軽に読んでくれていいぜ
三日月:今回は『序』という事で、いっぱい喋ってるけど…次回からは真面目に次回予告するから安心してください…
朔月:いづれ俺達も本編に関わるかも知れないけど、今はまだ秘密かな
暁月:これから毎回お当番で僕等が次回予告をエスコートするから、楽しんでくれたら嬉しいな!
弦月:そんな訳で、次回『凍京怪夷事変』第一話『暗雲は烈震と共に訪れる』乞うご期待!
刹那:直ぐ更新なんだけどな…
三日月:ふふ…次回からよろしくね
※聖剣あにまるとは…前作、逢坂怪夷奇譚において、怪夷を倒す為の重要アイテムだった刀剣に宿っていた核が、実体化した動物達の総称です。
今作においても関りがある為、次回予告という形で登場しております。
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