十二話 紙袋(下着)と写真
はあ、なんだか、今日は色濃い一日だった気がする。
そんなことを思いながら、
時間的にはまだ、おやつぐらいの時間。
正直、気持ちの面ではもう夕方な気がしてならない。
「ねえ、みーちゃん。今日、どうだった?」
「う~ん、楽しかったかな」
なんとなくしんみりとした気持ちになる。
こういうのは、時間帯じゃないんだなと思う。
「私も、とっても楽しかった。今日はありがとね、みーちゃん」
「それは、私も同じだよ~! 今日、誘ってくれてありがとう。女の子と一緒に来たらこんな感じなのかなって、とっても勉強になった」
「勉強になったのかはわからないけど、私も普通に女の子と来てるときと変わらなかったかな。それに、ときどき本当に女の子なんじゃないかって思わされるときあったし」
「そっか。それじゃ、ちゃんと私、女の子できてたんだ」
本当の女の子である
バレないという点ではいいけど、普段の生活でそういうボロが出ないようにしなくては。
「あっ、その、少し寄りたいところがあるんだけどいいかな?」
と、
乗らなきゃいけない電車が来るまで少し余裕があった。
「えっと、その、コンビニに寄りたいんだけど……」
「いいけど、なにかあったの?」
「その、えっと…………」
そう言うと、顔を真っ赤にさせ、もじもじしだす
一体、なんだというのだろうか?
なんとなく、少し顔が
「あの、聞こえても、その、聞こえてない振りをして、ね?」
「えっと、と、トイレに、行きたくて……」
ああ、だから。
俺は、見た目だけは女子であるが、その中身は男子である。
つまり、男である俺にトイレに行きたいということを言うのが恥ずかしかったと。
「
「あっ、あああぁぁぁぁ………………っっっ!!!」
俺がそう言うと、プシューと湯気でも出てきそうな勢いで顔を真っ赤にさせ、
ふっ、これが今日何度か俺が味わった苦しみだ。
それがわかったら、今後は少し、てか、もうやらないように。
と、俺はそんなあくどい顔を浮かべながら
「もう、みーちゃんのバカっ」
そんな、少しの抵抗すらも、今の俺にはかわいく映った。
それから、近くのコンビニを見つけ、寄ることにする。
適当になにか買ってから
「えっと、お待たせ」
「もう、
「だって、私はそのときちゃんと謝ったけど、みーちゃんにはまだ謝ってもらってないもん」
「か、かわいい」
「も、もうー! 私は本当に怒ってるんだからね」
そうは言うものの、
いや、もしかしてあのときの
確かに、それなら苛めたくなるのもわかる気がする。
わかったら負けな気がするけど。
「でも、そうだよね。うん、ごめんね」
「うん……」
それでも、とりあえず仲直りはしておく。
喧嘩ってわけじゃないけど。
「それで、その、みーちゃん」
駅に向かって歩き出してすぐ、
けど、そんなことはつゆも知らない
「……って、なんで止まってるの?」
すぐに気づかれた。
正直、自分でもなんで止まったのかはわからない。
なんとなく、
「えっと、みーちゃんに渡したいものがあるんだけど、歩きながらでも大丈夫だよ? えっと、どっちかと言ったら歩きながらの方がいいかも」
そう言われ、なにかがおかしいことに気づいた。
けど、それがなにかはわからない。
いや、もしかしたらこれがソフィーの言っていた
もし、そうだとするなら、使われたらわかると言われた理由がわかった気がする。
けど、これは
そんな近くじゃない。
「えっと、大丈夫、みーちゃん?」
「えっ、あっ、うん。えっと、それで渡したいものがあるんだよね?」
そう言って、なにごともなかったかのように
とりあえず、今は
駅までだって、もうそんなに遠くない。
「そうそう。その、今日一緒に遊んでみて、本当に楽しかったから、そのお礼というか、えっと、ご褒美っ! そう、ご褒美をあげようと思って。その、これ、はい……」
そう言うと、
なんというか触った感じ、よくわからない感じの形状をしてることだけはわかる。
「えっと、今開けてみてもいいかな?」
「う、うん……」
陽葵は少し赤面し、もじもじとしながらそう言う。
なんだろう、その反応。
そうは思ったものの、とりあえず紙袋の中身を確認してみることにする。
そこに入っていたのは、下着だった。
もちろん、それは新品のもの。タグまでついてるから、たぶん確実。
だから、きっと
「えっと、これは…………」
「その、さっきショッピングモールで、私が下着を買いに行ったタイミングがあったでしょ? そのときに買いに行ったの、私のじゃなくて、みーちゃんのを買いに行ってて」
「それは、うん。とりあえずいいとして、その……サイズとかはどうしたの?」
「ほら、試着室に入ったときに……」
なるほど、これは計画的犯行だったわけか。
とりあえず、これが
そうして、俺は自分の鞄に
だれが写真なんかと思って顔をあげると、
「みーちゃん、この写真撮ったからね」
それは
そして、こう言ったのだった。
「また、遊ぼうね。ちゃんと約束を守ってくれたら、私もこれを
どうやら、まだこの奇妙な関係は続くらしい。
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