星 太一

 以下にお示し致しますは、現在行方の分からなくなった狂人の付けていた備忘録の一部です。――ええ、そうです。ちょっと前に話題になった反抗的な態度のアレです。

 それが本当に日記なのか、それとも唯の物語なのかは依然として知れません。

 しかし彼女が狂人だったとはいえ、それを野放しにしておく訳にはいかない、というのは周知の事実かと思います。

 彼女も立派な社会の一員。我々には彼女を守り育てていく義務がある。

 この備忘録を繰り返し検証、推察・考察を繰り返し彼女のアルゴリズムを生成します。それから彼女の頭脳をこちらで復元し、行方を追いましょう。


 我々の戦いはこれからです。


 では皆さん。一頁を開いてください。

 彼女を助けましょう。

 

* * *

 いつからだろう。何もかも変わってしまったのは。

 いつからだろう。雲の向こうを考えなくなったのは。

 あなたは全てを持っていると言ってに、と笑うけれど。

 あなたはどこまで本物でどこまでが偽物なの。

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