第11話 情報屋と楽士
魔獣が押し寄せてから二日が経過し、ポートタットの町は戦後処理に追われていた。町の周囲に集まった魔獣の群れは衛兵達によって大半掃討され、残りは森に帰っていった。現在は、入り口付近の整備が続けられている。館の方でも、シャルトの執務室は、プーフェと突如現れた、仮面の男との戦闘でところどころ破壊されていた。
館でも工事が進む中、食堂にてハル、ルテア、アウル、シャルト、アンリの五人が事の整理をしていた。シャルト達にアウルの紹介をし、魔獣戦や仮面の男について話し合っていた。
現在の話題は、仮面の男に関してだった。
「そういや、ハル。あの仮面の男がいたとき、随分本気だったが、奴とはどこかで会ったことがあるのか?」
シャルトは、ハルが仮面の男と対峙した時のハルの反応を疑問に思い訊ねた。
「同じ人物か分からないが昔、宮殿を追われるようになった事件の日に襲われたことがあったんだ」
ハルは、忘れもしない過去の事を思い出し、シャルトに答えた。
「あの仮面の男について、何か知っていることは無いのですか?」
ルテアの質問に、ハルは思い出しながら答える。
「あれは俺の予測だが、元老院長ジョン=ヴァイスという奴の能力の一部だと思う。なぜ奴が干渉してきたのかはわからないだけどね」
「それについてあの楽士が笛を貰った経緯で、あの白ローブを着た老人が出てきたとか言っていたな」
シャルトがプーフェから笛を入手した経緯など話をハル達に話す。
その話を聞いたハルは、これからのことに心配になりながら呟いた。
「そうか、奴が介入してくるとなると、これから厄介なことになりそうだな……」
「笛について何かわかったことはあるのか?」
アウルは、笛についてどうなったのか質問する。それに答えたシャルトは首を横に振った。
「まだ詳しいことは何も。こっちで色々調べてはいるのだがね」
その返事に、アウルは提案する。
「武器職人の多いベルクタットの職人にも、あたいが聞いて来るよ」
「お手数かけます。アウルさん」
シャルトが頭を下げ、礼を言う。
「いやいや、これがあたいの本業だからね」
笑いながら、アウルは言葉を返した。
「たくさん色んな事ありましたが、皆さん無事でなによりです」
ルテアが、席に座っている面々を見て言った。
「そうだな。これからなにが起こるか分からないが、また皆協力してくれると助かるな」
そう言って、ハルはカップに入っていた紅茶を飲み干す。
全員ハルの言葉に頷き、シャルトが言葉を返す。
「もちろんだ。まあ、今は町の復旧を進めようか」
その言葉と共に、シャルトは席を立つ。それと同時に残りも席を立ち、それぞれ復旧の手伝いをするため別れた。
時刻は昼下がり、館の中庭では、一本の大きな木が生えている。その根元には抜身の短刀が地に刺さっている。太陽の日差しが短刀に当たり輝いていた。
楽士篇 終
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