第18話 顔のない幽霊

 中学校の時に見た幽霊です。


 友達の家で遊んでいると友達のお母さんが“夜に花火をするからおいで”と言われました。

 家に戻り、食事を済ませると母親と一緒に団地の中にある公園へ行きました。

 公園に着くと友達は集まって来ており、花火の用意をしてありました。

 30分位すると完全に暗くなり、手持ち花火が終わると打ち上げ花火が始まりました。


 打ち上げ花火の明かりで正面の団地の右側に男性の様な人が立っているのに気が付きました。

 よく見ると顎付近から上が無く、無い部分に黒いモヤがかかっていました。

 

「クラ、どうしたん?」


 花火に誘ってくれた友達のサトルが声をかけてきた。


「何でもないよ」


 小学校の時に幽霊が見える話をしたら、嫌な眼で見られた事があったので霊感がある事はなるべく知られたくありませんでした。


「あの団地で飛び降り事故があって、男性が死んだんだ」


 自分が見えていた者は自殺をした男性の幽霊だと分かりましたが、怖さや嫌な感じは受けませんでした。

 打ち上げ花火の明かりで見える幽霊は地面の一点を俯いて見ており、全く動いていませんでした。

 自殺した事を後悔しているかの様に感じていました。


 お寺の住職さんにこの話をした事があります。

 同じ様に自殺や事故死した幽霊に接した事があり、自殺した人は幽霊となって部屋にその場所に留まる事が多いそうです。

 何をするにでもなく、その場所で生きていればどうなっていたんだろうと後悔や未練を持っているみたいです。

 住職さんは話しても成仏する事がない事を分かっているけれど、悟りを解いてから成仏させるそうです。


 怖い話ではないのですが、殺人事件の報道を見ると思い出す事の1つです。

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