第13話 祓いますか? 後編
あれから朝まで女性の生霊が来る事はなかった。
先輩は何事もない様に起きるとコンビニに買い物へ行った。
コンビニへ行く途中でお寺に報告も行っているみたいだ。
10時が過ぎて、11時前にミワとお母さんが出て行った格好のままで部屋に戻って来た。
「どうでしたか?」
最初に質問をしてきたのはミワの母親だった。
「お話を聞いていた通りに女性の霊が現れました。
ここから先はミワさんに色々と聞きたいのですが、お母さんに居てもらってもよろしいですか?」
下を見ていたミワは小さく頭を振った。
「ミワは私の娘です。
一緒に話を聞いては問題があるんですか?」
ミワの母親は先輩にすごい剣幕で詰め寄っている。
小さく揺れていた頭が止まった。
「ごめん、お母さん。
少し外に居て」
ミワが小さいけどしっかりした口調で話をした。
お母さんはミワの手を握ったがミワが手を解いた。
そのまま、お母さんは外に出て行った。
「話をします。
霊は生霊でした。
お付き合いされている男性に妻子があるか、複数の女性とお付き合いされている男性がいますね」
また、ミワの頭が小さく揺れている。
「結婚をしている男性と付き合ってしまいます。
最初は結婚をしている事を話していなくて、独身だと思っていました。
幽霊が見える少し前に切手の貼っていない手紙が入っていました。
彼の奥さんで2歳の子供がいる事と遊びだから別れる気がないと書いてありました。
知らなかったんです。
本当に知らなかったんです」
先輩を見る事もなく、顔を伏したままの小さく揺れている頭は変わらずに動いている。
「彼に確認はしましたか?」
先輩は優しい口調でミワに問いかける。
「嫌われたくなくて、確認はしていません」
小さな声がより小さくなっている。
「霊は毎日の様に現れますか?」
「現れない時もあります」
先輩は天井を仰ぎ見ると目を閉じてからミワを見た。
「除霊はしておりません。
生霊ですので除霊をしてしまうと生霊の元となる本人に問題が出てしまう事があります。
それでも除霊を望みますか?」
ミワはいきなり上げた顔に感情は少なく、口元だけが上がっている。
笑っているとしか見えなかった。
「除霊して下さい。
私は悪くないんです。
彼と居ると幸せで、その幸せを奪われたくないんです」
ミワは先輩の手を掴み、前のめりになってきた。
ゆっくりとミワの手を解くと変わらずにゆっくりとした口調で返した。
「分かりました。
除霊に必要な物がありませんので、日にちを決めて除霊をさせて頂きます」
ミワは嬉しそうに笑っている顔を見られない様に顔をテーブルに近づけた。
これ以上は言う事がなかったのか、先輩はゆっくりと立ち上がると自分の肩を叩いた。
一緒に部屋を出るとミワのお母さんに一礼された。
「心配はありません。
除霊を行うので、日にちが決まりましたらご連絡を差し上げます」
そう言うと先輩と一緒にマンションを後にした。
帰りの電車の中で先輩が話しかけてきた。
「人間って、怖いよな。
不倫をしていた旦那さんの奥さんは霊的な力が強くて、不倫相手の部屋を知ってしまった事で生霊として現れた。
だから、奥さんが寝ている時間しか霊が出てこなかった。
それよりも除霊をしてしまったら、奥さんの精神か、体力的な物に異常が出る事を説明した時のミワさんの顔が鬼の様で般若に見えた」
先輩が時間を言い当てた事と生霊だと思った事は納得がいった。
でも、先輩の顔は晴れていないきがしている。
「どうすれば良かったのですか?」
先輩はこっちを見て、微笑んだ。
「除霊をしないと言ったら、不倫を止めるか、引っ越しをすれば生霊から逃れられるかな。
今回は人に付いていないし、知っている部屋にしか出ていないから…
それよりも問題なのは旦那さんの方だと思うな。
奥さんが生霊として出てくる条件が家に旦那さんがいない時だとしたら、昨日は家に帰っていないかも…」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます