第12話 祓いますか? 前編
この話はタカシの父親の住職のタカノリさんから聞いた物になります。
タカノリさんの初代の住職は関西にあるお寺で修行をしていたので、修行先はこのお寺と決まっているそうです。
そのお寺は変わっていて、お祓いに関する修行とお仕事があったそうです。
その日も先輩の僧侶と一緒に女性の家を訪れました。
その部屋は駅から歩いて15分くらいの場所にあるマンションで綺麗な外装で不思議な所がなかったそうです。
先輩の僧侶が聞いていた部屋の呼び鈴を押すと扉が少し開いて、50歳代の女性の顔が見えました。
「〇〇寺様からお越しになられた方ですか?
ミワの母です」
「はい。
お話を聞きに来ました」
先輩がそう言うと扉が開き、入って行きました。
入口から廊下で奥の8畳程の部屋につながっており、廊下の右手にキッチンとバス付きトイレがあった。
奥の部屋に20歳代の女性が座っていて、母親はその横に座った。
20歳代の女性はミワさんだと言う事は直ぐに分かった。
「幽霊に取り憑かれているとお聞きしましたが、詳しくお聞かせ下さい」
先輩が質問するとミワはテーブルの上のコーヒーカップを見つめたままこっちを見ないで話し始めた。
「毎晩、玄関が開く音がして、足音がするんです。
そこの扉が勝手に開き、知らない女性が私を見るんです。
何を言っても反応をしないし、見ているだけなんです」
「女性は見ていませんが、音と扉が開く所を見ました。
本当です」
ミワのお母さんが娘の言っている事を助ける様に付け足した。
「女性に見覚えはありますか?」
ミワは強めに首を何回か振った。
「女性に何か言われた事はありますか?」
ミワの視線がこっちを見るとはっきりとやつれた状態が分かった。
「何も言いません。
ドアの近くでこっちを見ているでけで私が悪い事でもしたのでしょか?
どうすればいんですか?」
ミワはテーブルに両手を着くと少し前屈みになって、興奮していた。
ボサボサになっている神が限界だと感じる。
「落ち着いて下さい。
この部屋以外でも同様な事が起きますか?」
「友達の家で起きませんが、他の場所でも起きる時もあります」
「そうですか。
家の中を見て歩いてもよろしいでしょうか?」
女性が頷くと私はお経を唱えながら入り口から一部屋一部屋見て歩きました。
霊的な者は感じますが彼女が言っている事は感じませんでした。
戻ると先輩の僧侶に首を振った。
「今日はお母さんとホテルにお泊まりになって、私達だけが部屋にいる事は可能でしょうか?」
2人は少し話すと了承をしてくれて、小さな荷物だけを持つと部屋を出ていきました。
「何も感じなかったのですが本当に幽霊がいるにでしょうか?」
「過去に同じ様な相談を何回か受けているので、問題はないでしょう。
今回は良い勉強になると思いますよ。
簡単な食事と飲み物を買って来るから部屋で待っていて」
そう言うと先輩はこっちを見て、部屋から出て行ってしまった。
やる事もないのでテレビを見ていると18時過ぎに先輩が帰って来た。
「悪いね。
息抜きしてきた」
あ、パチンコね。
先輩はパチンコが好きで時間があるとよくパチンコをしていた。
「大丈夫ですよ」
スーパーのお弁当とお茶を渡されて、夕食をとるとゴミを玄関に置いた。
修行の癖で2人とも食事中は無言で食べている。
「先輩は何が起こっているか分かっているんですか?」
「分かっているよ。
ミワさんが言っている現象は10時過ぎに起こるんじゃないかな」
答えが分かっている子供の様な顔をしていた。
少し雑談をすると漫画を見つけた先輩は読み耽っている。
先輩が言っていた様に11時少し前に玄関が開く音がして、玄関に置いてあるゴミのガサガサという音がした。
足音が近づいて来ると部屋の扉が開いた。
扉の奥に誰もいない。
「あなた、誰?」
先輩の顔の横に肩位の髪で綺麗に化粧がされていると思うくらいの女性の顔が横向きで見えた。
女性は先輩の顔を睨みつけており、助けないと思った。
お経を唱えようとして、数珠を手に持った自分の腕を先輩が掴んだ。
「貴方が探している人はここにいません。
帰りなさい」
先輩は冷静に受け答えをして、その答えを聞いた女性は先輩の正面に周りいる。
女性の二の腕から上がテーブルの上にあるとしか説明が出来なかった。
何かの映像の様な感じでテーブルの上に体の一部が見える。
「あの女は誰といるの」
叫び声が聞こえると女性に霊は消えていた。
先輩はこっちを見ると何事もない顔をしていた。
「思った通りでした。
彼女は生霊ですね」
この状態で先輩の行動と一言に言葉が出なかった。
「分かるんですか?」
「死んでいる人の霊と生きている人の霊には大きな違いがあります。
死んでいる人の霊はそこに留まっているか、人と一緒に行動を行っている事が多く、気配がなくなる事はありません。
生きている人の霊は多くの場合でその人が起きている時に霊の気配が存在する事はありません。
霊自体が本人と一体化しているから寝ている時や瞑想している時以外に現れる事は滅多にないかな」
読みかけの漫画を手に取るとまた読み始めた。
「いつから分かっていたんですか?」
「部屋に入って来た時にこの部屋や彼女に執着をしている霊がいなかった事と友達に家で現れない事を確認した時かな。
後は明日確認してみますか。」
「はい」
先輩は床の上で横になった。
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