第8話 憑き者②
ルカの父親よりも先にタカシの父親のタカノリがやってきた
タカノリは白の布衣と袈裟を身に付け、真っ白だった。
着くとすぐに家の方を睨み付けた。
「タカシ、間違いないな。
服の上からでいいから着替えてして。
クラさんも手伝ってもらわないといけないので、着替えて」
滝行で着ている様な白い浴衣の様な物を着さられた。
着替え中をしている途中でタクシーでルカの父親が帰って来た。
「どうしたんですか?」
ルカの父親が白装束の集団を見て、戸惑っている。
「寺で住職をしているタカノリと言います。
簡単に言いますと娘さんは何かに取り憑かれております。
除霊作業の許可と除霊作業代として五万円以上のご寄付をお願いします。」
「行っている事が分からん。
除霊作業なんてしなくても、娘はただの病気なんだ」
妻に呼ばれて、帰ってくるとこの状態なら理解は難しいだろう。
でも、タカシの父親は冷静だった。
声を聞いて、ルカの母親も出てきた。
「気付いていますよね。
娘さんに押された時の違和感を…
最後にします。
除霊作業をしますか?」
ルカの母親が答えた。
「お願いします。
してみましょう」
妻の必死な顔にルカの父親は身体が固まっていた。
それでもルカの父親は認めたくない様子だったが、妻の姿を見て首を縦に振った。
「これを服の上からきて下さい。
娘さんの横で体の一部を触りながら、名前を呼び続けて下さい。
お母さんはここにいて下さい」
タカシに渡された木箱を持って、タカシの後に入って行った。
玄関にタカシが持っていた木箱から取り出した簡易の祭壇を作るとタカノリはお経を上げ始めた。
終わるとタカシと自分に白い瓶に入ったお酒と藁縄を渡された。
「お父さんはルカさんの部屋を普通通りに開けて下さい。
タカシとクラさんは藁縄で女性を縛って下さい。
よろしくお願いします。」
ルカの父親を先頭に2階に上がるとそんなに嫌な感じはしなかった。
右手にある扉の前で止まるとルカの父親は扉をノックした。
「ルカ、入るね」
ルカのお父さんが扉を開けた。
1番早くタカノリが入るとルカの頭に経典の様な物を載せお経を唱え始めた。
タカシは持っていた藁縄をルカに巻き付けて、それを真似する様に藁縄を巻き付けた。
ルカを知らないがルカが凄く痩せていて、ワンピースがぶかぶかだった。
それ以上にご飯を食べていないせいなのか肌が青白かった。
それよりもルカの身体に寄り添う様に肩の上に髪の毛が見える。
その部分から嫌な感じがして、霊的な者がいるとすぐに分かった。
「ルカ、ルカ。
お父さんだよ。
分かるか」
ルカはタカノリを睨み付けている。
「お父さん、やめて。
助けて」
ルカのお父さんがタカノリを見て、戸惑っている顔をしている。
「娘さんは何て呼んでいますか?
お父さんのお名前が言えますか?」
タカノリは一旦お経をやめて、ルカの父親を見た。
「お父さん、やめて。
私、苦しい」
ルカのお父さんは我に帰った様にルカを睨みつけた。
「お前は誰だ。
ルカはパパと呼ぶんだ。
ルカは私と言わない。
ルカは自分の事をルカと言う」
ルカの顔が少し優しくなった様な気がした。
タカノリは持っていた塩をルカの右手に振り、タカシから受け取ったお酒をかけた。
そのまま、右手にしていた指輪を外すとルカは眠った様に前に倒れた。
「タカシ、木箱とを持ってきてくれ。
お父さん、もう大丈夫ですよ。
今から指輪を封じます。」
木箱からお札と鏡、小さな木箱を取り出すとお経を上げ始めた。
終わるとお札に指輪を包んで、小さな木箱に入れた。
「ここにある悪い物は指輪に封じました。
衰弱がひどいので病院へ連れて行きましょう?」
「お願いします。」
ルカの父親は現状が理解できている様で泣いていた。
タカノリの車にルカを運ぶとタカノリとルカの両親は病院へ行った。
サトミは怖いらしく、家の外にいる。
残ったタカシと自分はルカの部屋の掃除と木箱から出した物を片付けていた。
「タカシ、なんだったの?」
ルカは霊的な物に憑かれていた事は理解できた。
でも、指輪を外しただけで良くなる事は理解できなかった。
「説明が下手だから、分からないと思うけどな。
最初に家に来た時に家や周辺に悪い感じが無くて、2階の部屋だけに悪い感じがあった。
部屋に入ってみるとルカさん自体に霊的な物はいなくて、ルカさんの横に霊がいるのが見えた。
親父はそれを辿ったんだと思うよ」
そこまでは感じていたから分かった。
なぜ、指輪だったのかが知りたい。
「もっと分かりやすく言って」
「指輪が中古品で前の持ち主が亡くなられていたか、強い思いがあった可能性が高い。
前の持ち主が叶えたい事とルカさんの現状が同じだったのかもしれないし、ルカさん自体が憑かれやすい体質なのかもしれない。
だから、指輪に憑いていた者に心を奪われた。
普通はないから心配しないで、そんなに強い思いが憑いた物なんてないよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます