第7話 憑きもの①

 大学時代に経験をした話です。


 サークル内で霊感がある事を知られていた自分はサークルの女性のサトミから頼まれた話をします。


 近所に住む幼馴染のルカが2週間前位から体調を崩して学校に行けていないと幼馴染のお母さんから相談を受けたそうです。

 会う事を嫌っていたので、電話をすると声がすごく疲れていて別人の様に感じたと言っていました。

 その話を住職の息子にタカシに相談すると家を見に行こうと言う事になりました。


 サトミに連れられて行った家は2階建ての屋根が平らの濃い茶色の外壁をしていました。

 外からは嫌な感じが全くしないし、外見も周りの家と同様に普通の家でした。


「クラ、今日はルカさんに会わない方がいい。

 親父を連れてくるから」


 タカシは難しそうな顔をしながら家を見ています。

 首を2、3回傾げると、腕を組み始めました。


「どうした、タカシ?」


「会って、逃げられると助けられなくなるかも。

 親父なら大丈夫だと思う。


 お母さんを呼んできて下さい。

 それとお塩を持ってきて下さい」


 タカシは難しそうな顔をするとサトミにルカのお母さんを呼んできてもらった。

 ルカのお母さんは慌てた様子で玄関から出て来るとケースに入った塩を持っていました。

 そのまま、家の外で立ち話が始まりました。


「初めまして、寺の住職の息子をしているタカシと言います。

 お聞きしたい事とご了承頂きたい事が有りますのでよろしいでしょうか?」


 タカシの問いかけは手慣れている。

 父親と一緒によく仕事をしているのだろうか。


「はい、何でしょうか?」


「娘さんが部屋から出て来なくなった前日と当日の事を出来るだけ思い出して下さい」


「部屋から出なくなった日は月曜日で朝から具合が悪く、学校を休みました。

 時々、体調が悪くなるから時間が経てば良くなると思っていましたが良くなりませんでした。

 日曜日は朝から彼氏とデートをしていて、帰ってきたのが9時を過ぎていたと思います。」


 ルカの母親は途切れ途切れで思い出す様に話していました。


「彼氏とデートの時に何かあったと言っていませんでしたか?」


「特に言っていませんでした。

 花束を持って帰って来たくらいです」


「部屋に閉じこもってからは見ていますか?

 食事はされていますか?」


「何回か部屋に入っています。

 いつも鏡の前に座っていて、ぼーっと顔を見たり、髪をとかしています。


 食事は夕食を少し食べていて、凄く痩せてきました」


 タカシは淡々と話していたが、組んだ腕は解かなかった。


「部屋から出そうとしましたか?」


「主人と病院に連れて行こうと思い、ルカに触れた主人が押し飛ばされました。

 そして、大きな声で叫ばれました」


 タカシは沈黙をしていた。

 サトミはルカの母親の近くで手を握っている。


「今、親父を呼んでもいいですか?」


 タカシは優しく言っていたが、何か確証を見つけた様だった。


「ルカに何かあったのですか?」


 ルカの母親とサトミはより近くに寄り添っていた。


「確実ではないのですが、ルカさんは何かに憑かれていると思います。

 何も対応しないままでルカさんに会うと自殺したり、逃げて見つからなく可能性があります。

 早めに親父を呼びたい」


 タカシの嘘のない言葉にルカの母親は主人に電話をしたいと家に入っていった。

 こんな顔のタカシは初めてで少し恐ろしかった。

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