第3話 タカシの親父
日曜日にタカシからもらった住所へ行った。
思っていたほど大きくなく、本堂の2階に骨堂があるお寺だった。
お寺に入ると入口横の部屋で女性が座っていた。
「クラさん、ですね」
その女性は一目見ただけで、名前を言い当てた。
「タカシから聞いていたから分かったのよ。
別に特別な能力はないから」
そう言うと、入口横の部屋に招き入れてくれた。
「主人は30分しないで帰ってくると思いますよ。
クラさんはコーヒーとお茶のどちらがよろしいですか?」
「お茶でお願いします」
女性は手慣れた動きでお茶を持って来た。
「タカシは変わっているでしょう。
主人もそのお義父さんも霊感が強くて色々な話をされるけど、私には…」
女性は笑っている。
「怖くないですか?」
「怖くないですよ。
私には分からないし、危ない時は主人が守ってくれますから」
それからタカシやタカシのお父さんの話を聞いた。
入口が開くと袈裟姿の体格のいい中年男性がはいってきた。
こちらを見ると足先からゆっくりと見直した。
「タカシの言う通りで霊感が強そうですね。
ミサト、本堂にお連れして」
そう言うと、男性は本堂へ入って行った。
本堂に入ると奥から木箱を持ったタカシのお父さんが歩いて来た。
「タカシから聞いとるよ。
タカシの親父のタカノリって言います。
早速、話を始めようか。
見て欲しい物があるから、感じた事を教えてね」
そう言うと、木箱から小さなぬいぐるみを出した。
黒ずんで汚れた耳がないけどクマのぬいぐるみの様な物を出すと皮膚を触っていく風を感じた。
その瞬間、左手の指が痺れて奥に子供、それも少女がいる感じがした。
「少女が奥にいる」
タカノリさんは無表情のままで自分を見ている。
「風が吹いて、左手の指が痺れています」
タカノリさんはぬいぐるみを木箱にしまった。
ぬいぐるみを木箱にしまうと少し疲れを感じた。
「これは修行したお寺で行っていた霊感の質を確認するテストです。
クラさんは霊感が強い方で守護されている方の力が今は強い状態です。
過去の経験から気持ちが弱ったり、霊と接する時間が長くなると影響が出てくる可能性が高い。
身を守る勉強をされた方がいいと思いますがいかがなされますか?」
「勉強って何をしますか?」
勉強と聞いて、不思議だった。
お守りみたいな物を身に付けると思っていたから、変な気がした。
「身を守るだけなので簡易的な物になります。
木箱に入った影響が少ない霊気を封じてあるお札をお渡しします。
蓋を開けて、霊気の存在を感じて下さい。
霊気の存在を感じる事が出来れば、霊害の危険を感じる事ができる。
同じ感じを感じる場所や人は長い間接しないか、近寄らない様にして下さい。
それ以上の事は専門家に任せて下さい。」
タカノリは奥の部屋から小さな木箱と木札を持って来た。
「クラさん、この木札は身代わりの札でいつも身に付けて下さい。
木札が割れて身を守ってくれますので、割れた時はその場所から離れて下さい。
木箱を開けさせて頂きます」
木箱に茶色味を帯びたお札が入っており、黒い字の横に赤い字が書かれている。
このお札の周りから生ごみの匂いがして、少し周りの空気が重たく感覚がある。
「気分は大丈夫?」
タカノリが心配そうに聞いて来たが、大きな違いはなかった。
「大丈夫みたいです。」
木箱を閉めるとそのまま渡された。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます