第2話 質問の答え

 カラオケに行く時にテルの友達に言われた“分かっていたんですね”の言葉が自分の中に残っていた。

 テルの友達に会いたいが、テルに何て言えばいいのだろう。

 そんな事を悩んでいた。

 

 あの日から2週間くらい過ぎた時にバスを待っているテルと会った。

 テルは日焼けの色がさらに黒くなっていて、綺麗な丸刈りになっていた。


「クラ、今日は一緒だね」


 テルは嬉しそうに笑っていた。


「テルにお願いしたい事があるんだ。

 この前のカラオケに来ていた友達に会いたい。

 大丈夫かな?」


 少し嬉しそうなテルは直ぐに答えた。


「タカシでしょ。

 タカシも会いたいって言っていたよ。

 同じ野球部で練習があるから、休みが分かったら電話するね」


 テルはいつもニコニコしていて、バスの中で同級生の話をしたと思う。



 連絡があったのは夏休みに入ってから、野球部の対抗試合が終ってから会う事になった。

 この間行ったカラオケボックスの近くにあるハンバーガーショップで待ち合わせになった。


 先に着いて、2階の飲食スペースで本を読んでいた。


 着いてから2時間は過ぎていたと思う。

 テルとタカシ、野球のユニホームを着た数人が上がって来た。


「ハンバーガー行くって言ったら、大人数になった。

 話の邪魔をしないからいいよな」


 テルはタカシと一緒に目の前に座った。


「大丈夫だよ、テル。


 タカシさん、クラと言います。

 この間の“分かっていたんですね”の意味が知りたい」


 ストレートに聞く方がいいと思った。

 何となく答えが分かっていたから、答え合わせをしたかった。


「クラさんは幽霊が見えているんじゃないかなって、思ったんです。

 あの時の前に一緒にカラオケした帰りにクラさんは幽霊がいる方を見ていました。

 でも、幽霊だと気付いていないですよね」


 タカシは嘘を言っている様に感じていないし、心当たりがあった。


 母親から聞いた話で幼稚園の時に部屋で話し声が聞こえるから“誰と話しているの?”と聞くと、“おじいちゃんと話しているんだよ”と答えた。

 おじいちゃんは3歳の時に死んでいた。

 母親はおじいちゃんだから大丈夫だと思って、“そうなの”と返したと笑って話していた。

 母親の家系はそういう事が多くあると聞いたので、遺伝なのかと思っていた。


「親父と話したんだけど、幽霊を見づらくするか、幽霊を判別する方がいいと思うんだ。

 クラさんは霊感が強いから悪い事をする幽霊に付き纏われるかもしれない」


「どうしたらいい?」


 タカシの言葉の意味が少し分かった。

 自分の中に誰にも言えなかった事があった。


「自分は何も出来ないから親父と会って話して欲しい。

 親父に話しておくから、ここに来て」


 タカシはA寺の住所と電話番号が書かれたメモ用紙を渡した。


「タカシさんのお父さんは住職さんだったんだ。


 ありがとう」


 タカシもテルもニコニコしていた。

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