4月10日の日記


 ボクは少し、人よりも精神が不安定だ。たぶん病気なんだと思う。病名は無い。ボクだけが抱える病気だから。

ボクが好きなキミは、君のことが好きで。キミに好かれている君は、ボクなんかのことが好きで。ボクらは三角形の頂点みたいだ。それぞれの気持ちが重なることはない。だから、この三角形は永遠に消えない。

 大昔に三角形についてのある定理を発見したえらい人がいる。二辺の距離は分かれば、残りの辺の長さが分かるという定理。直角でなければならいけれど。かの有名なピタゴラスの定理だ。

ボクらがもし、誰かとの距離を最短にしたとする。そうすれば、誰かとの距離が一番遠くなる。残酷な定理だ。三人が同距離にはならない定理なのだから。ボクら三人が幸福になれないことを暗喩しているみたいだ。

 きっとピタゴラスは恋に悩んだことがない。少なくとも三角関係の頂点には。だって、その渦中にあればこんな残酷な定理を思いつくわけがないから。

 今思いついた。ボクはこの病気の名前を「ピタゴラス症候群シンドローム」と名付けよう。ピタゴラスへの嫌味も込めて。そんなのボクの意見でしかないのだけれどね。

うん、いい病名だ。数学的で素晴らしい。

 恋とか愛とかも数字に出来ればもっと楽なんだろうな。そんなのは百年経っても、千年経っても無理なんだろうけど。

数字で処理される恋や愛なんて何も美しくないじゃないか。

苦しくても美しい方がボクは好きだね。

あくまでボクはね。

君やキミがどうかは知らないよ。







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