第5話 リンゴのパイ
女の人はオレンジ色のお店のなかに、少女を招き入れてくれました。入り口でとまどう少女の背中を、女の人はあたたかくぶ厚い手のひらで、しっかりと押してくれたのです。その手のあたたかさと力づよさは、少女の胸のなかをさらにあたたかくしました。
「こんなに雪をかぶって、こんなに冷えて」
女の人は、少女をストーブにあたらせて、濡れた髪の毛と服をふいてくれました。そしてあたたかいお茶と、あつあつにしたリンゴのパイを出してくれました。
「お腹がぺこぺこでしょう?冬休みで給食がなくて、お腹がへってお腹がへってたまらないでしょう?」
なぜそんなことを知っているのだろう、と思いながら、少女は目の前のリンゴのパイに夢中で、ただ「うん、うん」とうなずくだけでした。
そのリンゴのパイは、少女が今まで食べたもののなかでいちばんおいしかったのです。香ばしいにおいがして、口の中で皮がパリパリとくずれたかと思うと、中からあつあつの甘いリンゴが出てくるのです。そのリンゴをかむと、じゅわっとリンゴの煮詰めた甘い汁が口の中にあふれるのでした。
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