落とし穴外伝:2024年明けスペシャル  年明けの午後

落とし穴外伝:2024年明けスペシャル  年明けの午後



Side:ユキ



気が付けば、新年になり夕方を迎えていた。

もう、本当にあっという間だった。


「あー、新年早々色々回らないといけないのは大変だなー」


そう、俺たちは新年そうそう、お参りやら、福袋やら、子供たちについて屋台を回ったりしたのだ。

もう、どこもここも人がわんさか。

あー、大変というか疲れた。


「仕方ないでしょ。私たちはウィードのトップなのよ。新年のあいさつは3日になっているとはいえ、関係各所の視察はしないといけないし。買い物もあったでしょ」


セラリアも一緒に行動していて、女王としてウィードの新年を見回っていたという名目で、福袋の回収に移っていた。

俺はちなみにその間、暇になった子供たちの相手だ。

もちろん、本当に遊んでいたわけでもないんだがな。

各所を回って民衆の慰撫ってやつだ。

王と民衆は近いってな。

分かってはいるが、年明け早々やることかよーという話だ。

おかげで、子供たちは家に戻ったとたん爆睡。

徹夜明けだからな。

エンジン全開で家に帰ったら燃料が切れたってやつだ。

その後はキルエ、サーサリ、そして魔物たちが世話をしてくれている。


「ま、妾たちはマシじゃろ。何せルルアを筆頭にセナル、エノラ、ハイレンは各教会で仕事じゃからな」

「そういえば鈴彦姫も宮司兼巫女ってことで頑張っているよなー。神道をこちらにもってさ」


今現在、ウィードには多くの宗教が存在している。

とはいえ、他宗派を攻撃するようなことはなく、多くの御利益を得ようというぐらいのものだ。

なので、メインはリテア教、エナーリア教、ハイレ教という3つの教会が存在している。

これに付け加ええて、日本の神社ってやつだな。

寺はない。

ちなみにズラブル地方の最大宗派であるセラフィーナ教会は建設予定ではあるが、誰をどうするのかという話になっている。

まあ、結論としてはセナルが来る予定にはなっているんだが、建前の話し合いは必要というやつだ。


ということで、そこの教会関係者のトップに近い立場である嫁さんやメンバーはそこにかかり切りというわけだ。

新年のお祈りなんて、世界が違ってもみんなやりたがるようだしな。


「神様にお祈りねー。いやー、若いころの俺はよくやってたが、今はなー」

「「「あはは……」」」


俺のコメントに側付きでもある、プロフ、オレリア、ホービス、ヤユイ、そしてリュシは笑うしかないだろう。

何せその女神どもと面識がある上に、大抵性格破綻者ときたもんだ。

下手にお祈りでもして聞き届けられれば、新たなるトラブルしか呼ばないのは目に見えている。


「それはそうと、年末年始俺に付き合わせて悪かったな。5人とも」


ちなみに、ニーナは聖剣メンバーと年越し。

なので、この5人は俺や嫁さんたちと一緒に年越しをしてしまったわけだ。

何が悲しくて職場の同僚はともかく、上司とその奥さんや子供と過ごすのかと。

普通は罰ゲームのような状態なのだが……。


「謝ることは何もございませんが? 好きにお風呂に入れましたし、美味しい食事も出てきました。むしろ快適ですね。というか、最近ではこちらにお世話になっていますし、今更ですよ」

「プロフさんの仰る通りです。ユキ様の護衛としての立場もありますから、何も問題はありませんし、休暇も十分にいただいています」

「そ~ですよ~。むしろユキ様たちとこちらに住んでいることの方が楽なくらいですし~。ゲームとかもできますから~」

「はい、その通りです。洗濯も簡単だし、本とか趣味とかもできますから、こちらに住んでいる方がいいです」


プロフを筆頭に、オレリア、ホービス、ヤユイは俺と一緒の生活に特に不満はないという。

本音であることを祈ろう。

確かに、仕事外の時間は特に縛ることもしていないし、自由にするようには言っているから、負担は無いと思いたい。

そして、最後はリュシだが……。


「私はユキ様の側付きですからね。ずっと一緒ですよ。別のところで暮らすとかおかしくないですか? むしろ個室が与えられているのがびっくりですよ。村でも家では家族と雑魚寝って感じでしたし。贅沢すぎです。正直ユキ様は私の立場をわかっているのかと思うぐらいですし」


なんか、俺の常識がおかしいと言っている気がする。

そして、その言葉にデリーユやセラリアも一緒に頷いている。


「普通はありえん。まあ、ユキの元となる常識は知っておるから、そのように扱うというのはわかる」

「わかるけど、こっちの世界の人が納得できるかは別なのよ。むしろリュシたちの反応が普通。あ、リュシ、みかん食べる? ちょっと多いのよ」

「はい。いただきます」


そんなことを言って、みかんのやり取りをするセラリアとリュシ。

うん、こりゃ馴染んでいるな。

そして、よくよく見れば、全員が各々こたつに入りながらテーブルの上のお菓子やみかん、飲み物を飲んでいる。

この状況で快適かどうかと聞く意味はなかったか。


「そういえば、昨日オセロの大会してたわよね? あれ結局誰が優勝してたの?」


セラリアが思い出したように聞いてくる。

そういえば、昨日の夜はオセロ大会で盛り上がったな。

とはいえ……。


「いや~、参加者が増えてうやむやになっていたな。今日の夜改めて試合をし直すって感じになった。ほら、リュシとかルールも知らなかったしな」


そう、最初は俺やリュシ、そしてラビリスたちだけでやっていたのだが、仕事が終わってきたみんながこぞって参加してきて、誰が勝者かっていうのがうやむやになったわけだ。

まあ、楽しむのが目的だったから俺としてはよかったが、誰が言い出したのかチャンピオンを決めようとなって、今日の夜にまた試合となっている。


「初めてでしたけど楽しかったです。覚えて多少は強くなったと思いますから、今日の夜は負けませんよ」

「うむうむ。リュシが楽しそうで何よりじゃな」

「あれ? デリーユ様は参加しないんですか?」

「そうじゃな。普通に食べて飲んでのんびりする側じゃな。見ている方がよい」


どうやら、デリーユはのんびりしたいようだ。

無理な参加でもないし、ほかの嫁さんたちも参加しないメンバーもいるから別に珍しいというわけでもない。

ミリーとかは特に飲みたい派だしな。


「そうなんですかー。対戦してみたかったんですけど……」

「ん? ああ、大会はともかくオセロをするのはよいぞ。大会となると全力が基本じゃからな。酒を飲んで試合にはならんからな、そういう意味での辞退じゃ」

「なるほど」

「ま、そうよね。お酒を飲んで戦略タイプのゲームって難しいもの」

「ということはセラリアも不参加か?」

「ええ。ほかのみんなで楽しんで頂戴。まあ、大会外での飲みながらならやるけど」

「なら、妾とやるか?」

「そうね」


こっちはこっちで遊びでやるようだ。

まあ大会も遊びのようなものなんだが、感覚の問題だろうな。


「ユキ様は?」

「ああ、俺は参加するぞ。あとはルールの制定というか、制限時間は砂時計でいいか」

「いいかと思います。無限に考える人もいますからね。昨日はその制限時間を取りすぎました」

「ですね。プロフさんの言う通り10分は長かったので3分でいいと思います」

「そうじゃないと今日中に終わらないですからね~」


そうそう、昨日のミスはそこだった。

俺はオセロでそこまで複雑に考えることはしなかったのだが、参加したメンバーは考える人もいたわけだ。

それで終わらなかった。

だから今日は短めの制限時間をつけるわけだ。


「お菓子とか飲み物とかどうしますか?」

「そうだなー。お腹とかどうだ? おせちの残りとかはあるけど?」

「私は正直お腹いっぱいです。ご飯は……、せいぜいお菓子ぐらいです」


ヤユイは体が小さいからなー。

プロフの次に体が小さい。

昨日の夜から山ほど食べてきているからなー。

年越しそばに、お雑煮、おせちと。

そりゃ腹はいっぱいになるだろう。


「ま、そこはキルエやサーサリに任るか。胃袋の感じはエキスパートだしな」

「はい。お任せください」

「そこはばっちりですよー。ま、アイテムボックスがありますから、残しても大丈夫ですしー」


とまあ、こんな感じで年明けの午後は過ぎていくのであった。


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