落とし穴外伝:2023年末スペシャル クリスマスに欲しいモノ
2023年末スペシャル クリスマスに欲しいモノ
Side:ユキ
「ふぅ……」
そんなため息をつきながら、寒い縁側に座る。
未だに後ろの宴会場では、クリスマスのどんちゃん騒ぎだ。
本日は25日。
子供たちはプレゼントを喜び、それを母親たちが微笑ましく見守っている。
そして、その母親にもマグネットピアスが付けられている。
そう、そのマグネットピアスをプレゼントしたのは、もちろん俺だ。
奥さんと子供たち、そして世話になっているみんなにプレゼントを決めて配るという難行を今年も無事に終えたわけだ。
「毎年毎年、ネタが無くなってくるよなー。もう、来年が怖い」
俺は嫁さんが多いこともあり、同一の物にしないと価値的にも、相手の立場的にもかなり問題があるので本当に選ぶのが大変だったりする。
もうそろそろ手を抜いても、と思うのだが、それも怖くてできない。
いやー、逆に一度話すべきか?
ネタが尽きてきたって。
夫婦なんだし、子供たちにはリクエスト聞いているしな。
そういうのもありか?
そんなことを考えていると……。
「ユキさん。こんなところでどうしたんですか?」
不意に声をかけられて振り返るとそこにはクリスマス会に参加しているタイキ君が立っていた。
「あー、なんというか休憩?」
「なんで疑問形なんですか。まあ、気持ちは分かりますけど」
タイキ君はそう言いながら、隣に座りながら、お茶を差し出す。
「温かいですよ」
「ありがとう」
素直に受け取り、温かいお茶で喉を潤し体を温める。
あー、熱いお茶はいいねー。
そして、少し間が空いたあとに。
「毎年、みんな楽しんでくれてなによりだが、俺にとってはそろそろ飽きてきたっていうと違うんだが、なんだかな」
「あはは、まだまだ皆さんには珍しい行事ですからね。本来はもっと違いますけど、年末の節目でしかないですからね」
「ああ、宗教に沿っているクリスマスは地球に任せるとして、こっちは子供たちや恋人たち、そして家族と過ごすそういう日で良いさ」
宗教とか混ぜるとほんと面倒しかないからな。
ただ、家族で、又は一人でも少し贅沢に過ごす日みたいでいい。
とはいえ、俺も流石に疲れているわけだが。
「そういえば、ユキさんってプレゼントは上げてますけど、もらうっていうのはどうなっているんですか?」
「いや、タイキ君とかタイゾウさんから普通にもらっているが?」
何を言っているんだか、タイキ君からは面白そうなおすすめの漫画と、タイゾウさんからは気に入っていた小説を貰った。
有名どころではないが、それなりに印刷されている物だ。
とはいえ、現代、俺がいた時代にはその作家の名前はそこまで残っていない。
そういうレベルのモノだ。
まあ、だからと言ってつまらないかというとそうでもないというのが、面白い所だな。
面白いからといって売れるわけでもない。
何が切っ掛けなんだろうと思ってしまう。
と、そこはいいとして、クリスマスプレゼントの話だったか。
「あー、いや、そうなんですけど。俺が言いたいのは、もらってあそこまで喜んではないですよねーって話で」
そう言って視線を向けると、未だにプレゼントのことで盛り上がっている嫁さんや子供、そしてプロフたち。
それを見ると微笑ましくはなる。
そして、タイキ君の言うこともわかってくる。
「まあ、はしゃいではいないな。なんというか、この年でプレゼントをもらうのはっていうのがあるんだろう」
「なるほど、そっちですか」
「大人は、プレゼントを上げる側だしな。それに俺はどう転んだかはよくわからんが、為政者の方だから、なおのことな。そして着替えはもういい」
そう、嫁さんたちの気持ちはもちろん嬉しい。
子供たちと選んだって言って渡してくれるのもな。
とはいえ、プレゼントをもらってはしゃぐかというとまた違う。
今年は嫁さんたちや子供たちが揃って服を数種類くれたのだが、俺がその場で着替えて、ファンションショーになったからな。
「あはは。大変そうでしたよね」
「服で楽しめる女性は凄いと思う。俺はやっぱり無理だわ」
俺がこうして縁側に座っているのは、そういう疲労もあるだろうな。
服を着替えるっていうのは疲れるんだ。
嫁さんと子供たちはワイワイやっていたが、俺は服にそこまで執着はない。
「まだ、ゲームとかの方がいいんだが……」
「ゲームは子供たちがやっていますし、大人の俺たちが会話に入らずっていうのは難しいですね~」
「だよな~」
ゲーム大会の集まりでもないのに、一人ゲームとかしていれば大人の対応としてはよろしくないとハンコを押される。
いや、理不尽だとは思いつつも、何のためのパーティーなんだと言われるとその通りでもある。
「まあ、そこはいいとして、ユキさんに聞きたいことがあったんですよ」
「ん? なんだ?」
「ほら、今日も、いや今年もクリスマスは無事に終わったんですけど、実際欲しかったプレゼントってあります? って思いまして」
「欲しいものな~。幸いこっちに来てから金銭的に困窮することはなくなったしな。欲しい物自体は大抵手に入るよな」
「そうなんですよね~。俺もそんな感じです。だから、不意にクリスマス会が終わって昔の、アレ欲しい、これ欲しいっていうのがあったんですけど、今はそこまでっていうか。やっぱりお金を持っているからですかね?」
「多分な。お金が無ければ、おもちゃ屋にかよって指でもくわえているんじゃないか?」
「あはは、それは流石に無いと思いますけど、アレですよね。むこう、日本にでもいれば、車とかバイクとかいい時計が欲しいとかになるのかなーって」
ああ、大人の趣味みたいなやつな。
「まあ、それも人それぞれだしな。維持、手入れが大変な物は俺は苦手だなー」
そう、車もバイクも点検整備が大変だし、時計とかの宝飾品も同じだ。
その知識が無ければだめになるから、そこらへんも勉強がいる。
そっちの趣味があればいいのだろうが、そっちに力を割り振る気にはなれない。
「ゲームやプラモでちょうどいいな」
「ですよね。まあ、宝飾品とかは財産にはなりそうですけど、売り払うことや財産を作るために買っているわけでもないですし……」
「だよな。でも、そこら辺を考えると俺たちは物欲はそこまでないってことになる。何せ自分の給料でどうにでもなるからな」
「生活できてますからねー。となると、欲しいのは物ではなく、別のってことですかね?」
「そうだな。そうなるな」
物、物質はいらないとなると、欲しいモノは別になるのは通りだ。
「まあ、ネタとして戦闘機とかはあるけどな」
「いやー、浪漫なのは分かりますけど、それこそ維持費どころか空港も抑えないといけないですし、とんでもない額ですよ」
「ああ、その通り。そして、俺の場合、飛行機、戦闘機事故の場合の生存率を考えると嫁さんたちが大反対するしな」
「無理ですね」
そう、無理な話だ。
「すまん、で、物以外となると、休みっていうのが第一候補かな。本当に護衛とか監視もなく。こうぶらりできる日々が欲しい」
「それは分かります。今じゃ出歩くのも簡単じゃないですからね~。ま、ウィードが出来てから随分楽なんですけど」
「そりゃ、ここを作ったかいがあるってものだ。とはいえ、そうなんだよなー。現実的じゃないんだよ。いや、現実的じゃないことを求めるのがクリスマスだったか?」
「そこは奇跡は起きたって話ですけど、僕たちに来ると思います?」
「いやー、頼めばやりかねないからしない」
俺は宴会場で子供たちと一緒に戯れている、ルナにハイレンを見てぞっとする。
「曲解して、ものすごいことになりそうですね。……女神様がいるってわかっていると怖いです」
「だろ?」
クリスマスが一気にホラー回になりかねない。
「ま、そうなると望むなら。今日の疲れが明日に残らないことかな」
「それいいですね。何時まで起きてても明日になれば全快! でも、何か変な薬ってことになりません?」
「まあ、効果的には栄養剤だよな。とはいえ、疲れが無いっていうのはいいだろう? ほれ、他のことにも使えそうだし」
戦闘とか、山ほどの書類仕事の後に飲んで日付が変われば全快とか。
そんな感じで雑談をして、宴会場に戻ったら、嫁さんたちが疲れない栄養ドリンクの話を聞いていたようで、作ってみようかという話になった。
まあ、悪い話じゃないし、少し付き合ってみるかと思うのであった。
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