第176掘:魔剣の秘密 終章?

魔剣の秘密 終章?



side:リエル



ユキさんの話と資料をみて、魔剣にダンジョンコアが使われているのはわかったけど、その意味はどこにあるんだろう?

ミストとは手合わせしたけど、僕の魔術で十分に相殺できるし、大規模魔術は隙が大きすぎるから乱戦では使えないし、僕たちみたいな高レベルには通用しない。

武器としてはまあまあぐらいで、魔力をDPに変換しないから貯蔵量が沢山あるってことぐらいかな?

あれ? なにか引っかかるような……。


「ねえ、ユキさん。なんでダンジョンに置いていないダンジョンコアに魔力が蓄積されてるの?」


ポロッとでた言葉だった。

特に考えなく、不思議だなーって感じで。


「よく気が付いたな。それが不思議だったから俺たちも同じような物を作ってみた」


そう言って、ダンジョンコアがくっついた剣をユキさんが取り出す。


「これはナールジアさんがここ一週間でつくってくれた魔剣のレプリカ? だ」

「レプリカなんて失礼な。あんな欠陥品と一緒にしなでください。まあ、発想は面白かったですね。ダンジョンコアを魔力収集道具として使い、魔力を溜め使用者の負担を減らす。完全に盲点でした。誰でも使える魔道具の開発をしていなければ理解できませんでしたね。リーアさんの武具は自身から魔力を供給して動くタイプですし、発想がまったく違いました」


ナールジアさんが自信満々に説明するが半分も理解できない。

とりあえず、魔力を沢山溜められるから便利だってことだと思う。


「まあ簡潔にまとめると、ダンジョンコアに魔力が沢山溜められてすげーってことだ」

「あー、略さないでくださいよ」

「すみません。今は魔剣の説明ですので、ナールジアさんの作った剣の詳細はまたあとでお願いします」

「むー、仕方ないですね」


ナールジアさんは不満ながらトコトコと自分の席に戻っていく。


「話はずれたな、どうやって魔力が溜まるかと言う質問だが、敵を斬れば、そのままある程度魔力を溜められる。殺せばそのまま相手の魔力をごっそりもらえる。ダンジョンみたいな全体と言うわけにはいかないみたいだが、ある意味武器にするのは間違っていない。これで外でも魔力が溜められるということだな」

「なるほどね。でも、それはなぜ作られたのかしら? そして何で幾振りも魔剣が作られているのかしら?」

「そこまではわからん。長い戦乱でダンジョンコアの流用を思いついたのか、果てはダンジョンマスターがまだ生きていてなにか行動しているのか……。そういえば、この大陸ではダンジョンコアはどういう風に扱ってるんだ?」

「武器の転用は聞いたことが無いわね。魔力の貯蔵量が多いのはわかっていたから、ほら、王城で魔術が使いにくくするような結界道具として使っていたわね。攻撃より、守りに使用していたわね」

「あー、認識は魔物が落とす魔石の凄いバージョンみたいなものだっけか。それならダンジョンコアを武器に使ってもおかしくなかったな。よく防衛道具にしか使われなかったもんだ」

「それはダンジョンコアが希少だからよ。もし、武器にして奪われたら厄介でしょう? というか、成功するかわからないのに希少なコアを使えないわよ」

「そっちの関係か。でも向こうの大陸は武器に使っているな。と言うか向こうの大陸のほうがさらに希少なんじゃないか?」

「そうね。ダンジョンは既に遺跡と呼ばれているみたいだし」

「そういうことか……」


ユキさんはセラリアと話してなにかに気が付いたみたい。


「おいルナ、ちょっとこい」


ユキさんはコールでルナを呼びつける。

なんでまたあの駄女神を呼ぶんだろう?


「なによ、今ドラマいいところだったのよ」


現れたルナは、ジャージで片手にポテトチップスの袋を持っていた……。

うわぁ、絶世の美女でもこうなるとダメだなぁ。

僕はああならないように日々注意しよう。


「聞きたいことがある。あの大陸のダンジョンマスターは当時1人だけだったのか?」

「ん? それは言ったじゃない。当時1人よ、そして随分前に死んじゃったわよ。他の奴らはその前に死んでたしー」

「弟子とか、部下みたいなのはいなかったのか?」

「さあ? そこまで詳しくはしらないけど、DPの交換要請が来なくなったから、様子見に行ったら死んでたのよ」

「死にざまは?」

「背中からバッサリ。まあ、ユキみたいにダンジョンで過ごしてたわけじゃないし、ここまで堅牢な防御もしてなかったから、普通にやられたと思ってるけど。裏切りかは知らないけどね」

「なるほどな。それで死ぬ前のDP交換でダンジョンコアを大量に集めてなかったか?」

「いえー、そもそも1人であの大陸切り盛りしてたからね。ダンジョンはいたるところに作る為に、毎回結構な数のコアを頼んでたわよ。稼ぎ頭だったんだけどねー」


あ、それじゃないかな?

普通ならユキさんみたいに支配地域広げていく方が効率いいし、コアを沢山注文する意味もない。


「……とりあえず、大まかな原因はわかったな」

「そう言えばなんでそんな質問するのよ?」

「……本当にお前は適当だな」

「そりゃ細かいことをしていたら、他の星の面倒見れないじゃない。どこも一緒でしょう? 立場が上になればなるほど些事にはかかわってられないのよ」

「正論ではあるが、そのだらけきった格好をどうにかしてから言うべきだな」

「なに言っているのよ、休憩中に呼び出したのはそっちでしょうに」


ルナの言っていることはわかるけど、納得はしたくない。


「魔剣が作られた経緯はわからないけど、材料は沢山あったみたいね」


セラリアがとりあえずルナを無視して話を続ける。


「でもさ、魔力枯渇はそれ以前からあったんだよね? それなら魔剣はやっぱり関係ないと思うけど」

「リエルの言うとおりね。ユキさんはそこはどう考えているのですか?」


僕の考えにエリスも賛成してくれる。

というか、エリス、会議ではじめてしゃべたよね? 今日は悪阻が酷いとか言ってなかったっけ?

大丈夫かな?


「直接的な関係はないだろうけど、魔剣の作られた経緯を調べれば枯渇の原因に近づけそうだと思う」

「……なるほど。当時のダンジョンマスターがなにを目的に魔剣を作ったのかを調べるのですね?」

「ああ、これでようやく分かりやすい目標ができたな。この大陸にいたダンジョンマスターの足跡をしらべて、魔剣も何本あるのかを調べよう。そうすれば自ずと見えてくるものがあるだろうよ」

「それはよかったです。ですが、ジルバ帝国の動きや、亜人との関係は……うおぇぇえぇ」

「え、エリス!? ど、どうしたんだ!? い、医者!? お医者さんを!?」


あ、やっぱり無理してたんだ。

皆がエリスの周りに集まる。


「はいはい、ユキさんはもうすぐお父さんになんですから落ち着いてくださいね~」


いきなりリリーシュ様が現れて、エリスの様子を見てくれる。


「うん、悪阻ね。こればっかりはどうしようもないから我慢してね」

「……はい、問題ありません。子供がいる証拠なのですから……うっぷ……」

「はいはい、ちょっと横になりましょうね~」


結局その日、会議はそれで終了してエリスの回復を待って終わってしまった。

でもとりあえず目標は、ダンジョンと魔剣だね。

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