第171掘:自ら出た理由

自ら出た理由



side:ラビリス



ユキは今、旅館の宴会場で1人正座をしている。

取り囲んでいるのは、ユキの妻。

無論私を含む。


「ユキ、私はすごく怒っているの」


私がそう言うと、他の妻たちもうなずく。


「そもそも、お兄さんはなんで今回に限って自ら最前線にでたのですか?」

「そうです。旦那様がそんな行動にでたと聞いたときは、流産するかと思いました」

「あー、その、すまん」


待機の妊娠組は勿論、あの戦場で一緒にいたメンバーも何も聞かされていないのだから、本当に心臓に悪い。

いつものように相手をからかってすぐに戻ってくるかと思いきや、そのまま戦闘しだすんだから。


「ラビリス、ユキに触って。なんであんなことをしたのか尋問するわ。流石に、私も予想外よ。夫が前線に立つなんてね」

「わかったわ」


私はセラリアの要請に応えて、ユキの頭にいつものようによじ登る。

おっぱいを沢山押し付けてやるわ。おっぱい好きでしょ、知ってるんだから。

目線とかはすぐ誤魔化すけど、大好きなのよね。私が沢山触らせてあげるわ!!


「で、どうしてあんな行動をとったのかしら?」

「まあ、そりゃ色々理由がありまして……」

「それはそうでしょうとも、これで考えなしでしたなんて言うなら、首輪つけるわよ」

「俺は犬じゃねーよ」

「さっさと喋りなさい」


うん、セラリアの言う通りさっさと喋るのよ。

ユキってば、本当に自分に首輪をつけられて鎖につながれているイメージするの。

飼ってみたいわ。毎日遊んであげるわ。うふふふ……。

と、いけないいけない。ユキってば恐ろしい子!! 私の対策にこんな素敵な想像するなんて!!


「うーん。どこから説明したものか……」

「なに? そんなに難しい話なのかしら?」

「難しいと言えば難しいし、簡単と言えば簡単なんだが、その時の状況を説明しないと俺の気持ちがわからんだろう?」

「ああ、そういうことね。流れってことかしら?」

「そうそう。俺だって自分から前線に出ようとは思わなかったけどな、あの姉妹がちょいと俺の琴線に触れたんで」

「あら、ようやく女を孕ませるつもりになったかしら? いいわよ。いい加減、あなたは欲に溺れなさすぎだから、一度は堕落したほうがいいのよ。あなたの琴線に触れたなら器量よしだろうし、魔力枯渇の原因を調べながら、その姉妹でも肉奴隷にしてみなさい。横に裸で侍られて、何時でも相手できるように」

「なにそのエロ設定!?」

「そのエロを中々しないユキさんには丁度いいかと思います。だって、向こうで全然押し倒してくれないんですもん」

「いや。ドッペルだしね。他所だからね? 俺そんなオープンな変態じゃないよ。つか毎日夜は相手してるじゃん!!」

「ちっちっち、そんなんじゃ足りないんですよお兄さん。見ての通り若いですから私たち」

「まあ、俺は毎日だけど皆はローテーションだしな……そう言われると、すまん。頑張ります」


そうよ。頑張って。

大丈夫、ユキならできるわ。


「さて、夫が今後ベッドで頑張ってくれる約束は取り付けたし、本題に戻りましょうか。あの姉妹が変なこと言ったのね?」

「ああ」

「リーア覚えているかしら?」

「ええっと、普通の口上だったと思うんですが……」

「それなら私が覚えています」

「じゃ、ジェシカ言ってみてくれるかしら」

「はい、では失礼ながら……」


そうして、ジェシカが戦いで姉妹が言った口上を述べていくと、ユキの心が乱れるセリフが存在した。


「セラリア、ユキが反応したのがあるわ。多分これが琴線に触れた言葉ね」

「どれかしら?」

「えーと。『私たちはこの魔剣に勝利を誓い。そして、ジルバ帝国400万ともいえる民の未来を預かっております!! 貴方がたが勝てる通りなど1つもありません!!』ってところよ」

「なるほど……」

「そして、ユキは『お前たちが400万の未来を背負うなら、俺は60億の一片だ』と言ってました。あれは事実なのですか?」

「ん? 嘘は言っていないぞ、俺の故郷、地球には60億から70億近くの人が生きている」

「一片ね。ふふっ、あなたらしいわね」

「セラリア様は一片の意味がお分かりになったのですか? 私はなぜ背負うや守ると言わなかったのか不思議なのですが」


ジェシカはまだまだユキを知らないのね。

このユキが、人を縛り付けるようなことを言うわけないわ。


「夫は、王や将軍などといった特別な立場ではないと宣言したのよ」

「よく、意味が解らないのですが?」

「ふふっ、ジェシカは今まで国のため、民のために戦っていたから想像ができないかもしれないわね。それなら、国は王が滅べば無くなるのかしら?」

「はい、当然です。跡を継ぐ者がいなくなれば国は無くなります」

「それは国の名前が変わるだけなのよ。国が無くなったからと言って、民が全て死に絶えるわけではないわ。民はそれぞれ生きる道を探す、民にとって私たち王族や貴族なんかは、民からすればそんなものよ」

「……つまり、私たちが民を背負っているというのは傲慢だと?」

「間違いではないけど、正しくもないわ。ジェシカも民を守る兵士である前に1人の人であるのよ。ジェシカだって、いきなり、上の役職からお前を守ってやっているのだ。なんて言われても実感ないでしょう? 自分が最前線で戦ってるぶん特に」

「確かに……」

「民だって同じなのよ。彼等は必死に自分たちの環境を守っている。家族も稼ぎ頭の夫が家族を守っているとはいわないわ。家のことを任せられる妻がいるし、未来を担う子供もいる。その1人1人が背負っているし、守ってもいるのよ」

「なら、私たちに意味はないのでしょうか?」

「いいえ、国として形を持っているのであれば、敵としてやってきた相手を何とかしないとそこに住んでいる民は被害を受けるわ。だけど、意味はあっても、それだけではないの。ウィードを見たでしょう?」

「はい、ここの民は自由に生きていますね」

「そう、本来の人の姿と言うべきかしら。というか、国だって人が集まってできた物よ。王がいるから国になるんじゃないわ。王1人だけの国なんて聞いたことがないでしょう?」

「それはそうです。……そういう事ですか、ユキはそれで姉妹に対して1人ででたわけですか」

「そうよ。姉妹は自らの軍の士気を上げるため、また、こちらの士気を下げるために言ったのでしょうけど、それはユキを動かしてしまったわ」

「背負うなんて、大言壮語をした挙句さらに自分の出世、軍の強化が今回の目的なんだから。夫は軍の長としてではなく、故郷の60億の1人として、相対したってわけよ。ジェシカは知っているでしょう。人は集まれば、手を取り合えば、ウィードの様な素晴らしい街を作れることを」

「はい」

「夫としては、400万なんて大層な数をあげて、戦いを正当化しようとしたんだから、60億の1人に完敗させたかったんでしょう?」


セラリアはそう言ってユキのほうを向く。


「どうだろうな。色々な気持ちがあったしな。ま、セラリアの言ったことは外れてないと思う。俺は、あの時は地球の1人として戦ったわけだ。あれは卑怯やズルなどではなく、俺たちの積み重ねの結果だってな。そのために姉妹に俺たちが不利だと言質をとらせたからな」


ユキの考えが頭に入ってくる。

うん、確かにその通りだ。

あの姉妹はユキに対して、負けると宣言している。その数では無理だと。

だからユキはそれを覆した。

ただの人の積み重ねに敗北したのだと、彼女たち知らしめた。

しかもお得意の魔剣まで封殺して。

素敵よ。素敵すぎるわ。


「ふむ。誰か、その時の映像録画してる?」

「はい、勿論!!」

「流石リーアね。夫の素敵な頑張りの鑑賞会でもしましょう」

「「「はーい」」」


私たちは喜んでセラリアの提案を受け入れる。

だって、ユキが少し頑張った姿なんてめったにないもの!!


「やめてー!! その鑑賞会だけはやめてくれ、なんかすげー恥ずかしい!!」

「「「絶対見る」」」

「いやーーー!?」


ユキがここまで嫌がるのも珍しいわ。

うん、なにか素敵。

あ、そう言えば思い出したわ。


「ねえユキ、あの姉妹はどうするの?」

「あー、少しやりすぎた感じはあるんだよな。ま、実験に付き合わせるのは確定だし、そのあとは姉妹と話あってからだな」

「私はセラリアの言う通り、肉奴隷にした方がいいと思うの」

「なんでだよ……」

「だって完全なお嬢様よ? 私たちとはタイプが違うからユキもきっと楽しめるわ」

「そんな理由で嫁さん増やすなよ」


ユキはやっぱりそう言う方面では、故郷の習慣が強いのかどうも嫌がる。

もう私たちに手を出しているんだから、少しははしゃいでいいと思うのだけれど。

ま、私たちの御眼鏡に叶った相手じゃないとだめだけど。

その点、あの姉妹なら器量よし、おっぱいよし、性格よし? ま、そこは、今度話してみてからね。

腕も立つし、ユキを守る四天王なんてどうかしら? 魔王の所といっしょよ?


「四天王は負けフラグな気がするんだ」

「あ、声に出してた?」


でも、なんで四天王は負けフラグなのかしら?

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