第131掘:配置発表
配置発表
side:ユキ
さて、あらかたの作戦概要は説明したし、残るは誰を何処に配置するかだ。
配分をミスれば手痛い被害に繋がるだろう。
まあ、レベル的には全員最強クラスだからそこまで心配はいらないけど。
なるべく死人は減らしたいしな。
嫁さんの誰かが死ぬとか絶対避けたいし。
「さてと、これからの予定を話す。いいかな?」
皆が頷く。
「とりあえず、今の所反対意見は出ていないから、私の作戦を軸に動くと言う事になります。それでは、詳細を詰めていきましょう」
そういって、まずウィードを指す。
「まずは出発の布陣です。3国の精鋭とウィードの精鋭がウィードを発ちます。ここの指揮官及び、付き添いにリリアーナさん、ザーギス、レーイア、セラリア、俺、エリスで行きます。そして、大将はエルジュだ」
エルジュ以上の大将は今回あり得ない。
自軍の士気、そしてエルジュがいると更に大義名分の効力が増す。
それほど真剣なのだと、兵士に伝えることができる。
ホワイトボードに書き込んでいく。
「この内、セラリア、俺、エリスはリリアーナさんと一緒に、先んじて工作や魔王城攻略をするので、代官をクアル。リリアーナさんの代わりをザーギス、レーイアで勤めてくれ」
言われた5人は頷く。
「各国の精鋭は、知っての通り。ロシュールからはアレス・レスター。ガルツからはローエル、ヒギル。リテアからはクラック、デスト。全員が全員それなりの指揮官だ。こっちの裏事情も知っているから、合わせてくれる」
これで、連合軍の進軍には何も問題がない。
「ちなみに、なるべくこちら側の戦死者を減らす為、ナールジアさんお手製の武具をウィードから供給している。これを返却してもらうか、そのまま譲渡か販売かは結果次第で考えよう。これでウィード製の武具の宣伝にもなるわけだ」
「……抜け目ないですね、お兄さん」
「そりゃ、軍事行動でお金を各所へもっていかれてるんだ。どこかで採算合わせないとな」
「そうね。今回の精鋭出兵はこちらから願い出たものだし、支度金でかなりもっていかれてるわ。その分は何とかしないとね」
「ラッツだって、この兵士が集まる期間に合わせて、武具関連と携帯食料系の仕入れをかなりやってるだろう?」
「それはそうですよ。商売時は逃がしませんから」
そう、今回の素早い精鋭の派遣は各国の慈悲でも自費でもない、こっちが持つから速やかに実行できたのだ。
呼んだ側がお金をとりあえず支払うという形で。
いずれ、支援という援助もありえるだろうが、今はこっちがお金を持たないと、相手の国の王はともかく、臣下が納得しないだろう。
ある意味、すぐさま連合を組めるという、ゲートの実用性を証明したことになる。
「軍隊の行動は二日後から進軍を開始。俺達はその前に進軍ルートをダンジョンで掌握しつつ、スライム、ゴブリンの部隊をスラきちさんに任せて、野生の魔物を排除させる」
進軍路の途中を丸で囲む。
この地点にスラきちさんを配備する。
「魔王城攻略は先ほど待機と言われた人以外全員で臨む。といっても、移動手段はマローダーだし、運転手を残して、通常通りダンジョンの運営についててもらって構わない。が、招集には最速で応じること。ちなみに、これは俺達が魔王を倒すなどの噂が流れた際の保険でもある」
「ああ、そういう事ね。無理に仕事しなくて待機でもいいじゃないのかしらと思ったけど」
「そうすれば、万が一、私達が魔王を倒したとうわさが広がっても、実際にウィードにいたのですから、問題ありませんね」
「そういうことだ。ダミーであるドッペルを置いてはいるが、ドッペルだと情報の交換が完璧じゃない。というより、ウィードの皆は俺達が本物か偽物かは見分けつくからな」
そう、今まで影武者としてドッペルを立てていたが、情報の交換が完璧ではない。
仕事などの引継ぎは問題ないのだが、誰かとこんな話をしたって関連で、行き違いがあった。
それ以降、ドッペルだと分かりやすいように、ウィードの上層部にはある違いを教えている。
「距離から考えて、マローダーで4日だ。運転は俺が行軍で無理だから、ラッツとカヤを中心に頼む」
「「わかりました」」
この二人はガルツへ行くとき問題なく運転してたしいいだろう。
「魔王城の手前一キロ地点で停止してダンジョン機能で転送を設置してくれ。それで一気に魔王城を攻略する」
そうやって魔王城を指す。
ここでようやく半分だ。
「リリアーナさん、ザーギス、レーイアに魔王城内部の地図を書いてもらっている。万に一つだが、俺達が出る可能性もあるので、これは頭に入れておいてくれ」
皆は俺が取り出した、魔王城内部の地図を食い入るように見ている。
「コピーは後でまわすから。魔王城攻略後、リリアーナさんを守りながら、関の相手と交渉して内応させる。これが俺達の行動だ」
「そこまでいって漸く一息ですね」
「そうだな。それから連合軍が関に到着して、最初従軍しているメンバーは一緒に関を攻め落して、魔王城も同様だ。残りのメンバーに関してはランクスの勇者関連の事が済んでいるだろうからキユから話を聞いて対応しよう。俺がいないが、コールもできるしそこら辺はあまり心配いらないだろう」
俺がそう言って皆を見つめる。
言いたいことは伝わったかな?
「あーあ、そういえばそうでしたね」
とラッツ。
「ありましたね」
とミリー。
他の皆も驚いた顔をして、頷いている。
「どうしたんだ?」
俺がそう聞くと、皆が一旦顔を合わせて、同時にこちらを向いて言う。
「「「ランクスの問題すっかり忘れてました」」」
その返事でずっこける。
「おいおい」
「いや、何というかインパクトが無いというか」
「そうよねぇ」
「…影が薄い」
「やってる事内乱だし」
そんな軽口を言って笑いだす。
おう、ランクス残念だな。
嫁さん達はもうこぞってランクスはどうでもいいやになってるぞ。
そうやっていると、一人が疑問の声を上げる。
「あの、すみま、せん。わ、たしが、一緒でいいのでしょうか?」
それは俺の付き人を勤めているリーアだ。
まだ彼女には自分が勇者だということは伝えていないが、既にダンジョンでの強制レベリングを行っている。
既にレベル120まで届いて、それなりに戦える。
が、彼女的にはなぜ魔王城攻略などという大仕事に参加していいのだろうか、と思うはずだ。
「勿論だ。リーアがいないとダメだ」
「わ、たしが?」
「ええ、何かあった時は多分あなたが切り札よ」
俺とセラリアがそう言って、他の皆もうなずく。
「どう、いう事でしょうか?」
リーアは首を傾げる。
だけど、皆は分かっている。
万が一、魔王が手におえないのなら、リーアという勇者を頼るしかないと。
神頼みなようで気持ちはわるいが、魔王は確実に殺さないとまずい。
だから、危険を冒して、リーアを戦場に連れていくことになった。
そう、俺には魔王城攻略までにもう一つ仕事があるのだ。
勇者リーアを覚醒させよ。
無理ゲー、正直ほっときたい。
あとでゆっくり行きたいが、嫁さん達が、万が一勝てなかった場合に備えるのは当然だという。
許可も下りてるから、さっさとリーアとにゃんにゃんしろとお達しだ。
何処の世界に、旦那に他の女を抱けって言うところがあるかね?
しかも、しっかり愛し合えとお達しです。
制限時間は約6日。
俺が吹き飛ぶか、リーアと仲良くなるか、デスマッチが始まろうとしていた。
魔王より、こっちが怖いわ!!
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