第124掘:事情聴取でさらに噴く

事情聴取でさらに噴く



side:ユキ



「さてと、リーアが付いてくるのはいい。だけど守って貰わないといけないことがある」

「はい、離れない事ですね」

「そうだ。だが、それだけじゃ心も元ない。この指輪と、この短剣を身に着けてるように」

「えーと、どんな意味があるのですか?」


まあ、只の指輪と只の短剣にしか見えないからな。

嫁さん達のもそう。

ダミーで豪華な指輪と短剣を持たせてるけどな。

本命はこっちで、だーいぶ前に渡した転送の指輪だ、転移、危険時には自動転移。

短剣は、持ってるだけでステータスUPの超絶品。

ナールジアの趣味の極みである。

と、渡した品の説明を歩きながらする。


「す、すごいんですね」


リーアはステータスを確認して引いている。

そりゃな、装備するだけで基礎ステータスが200UPだからな。

全部よ。


素材はオルハリコンを高純度で抽出して、さらにマジックメタル、精霊鉱石も、同じように抽出して合成。

刀の質の違う金属を重ねる方法に、幾重にも折って叩いてを繰り替えす鍛造技術。

DPで取り寄せた、こちらも高純度のエリクサーを冷却用に使うという。

馬鹿の極みの末の武器だ。

一万人を超える住人がいるからこそできる、荒業と言えよう。

それでも材料費だけで30日分のDPがふっとんだと言えば、どれだけの無駄使いかわかるだろう。

それを作るぐらいなら、現代火器を揃えたほうが安いし。

でも、色々可能性を調べたいこともあるから、俺からもエリスやラッツに頼み込んでDP使用を許可してもらったりする。

まあ、今までの話から想像つくかかと思うが、現在の嫁さん達の装備品はナールジアさんの一品で大体毎月更新されている。

ラビリスは俺から譲り受けた刀を大事にしているが、もうあれも時代遅れの性能と化している。

技術革新って怖いよね。

パソコンだって半年もすれば新型出るし。


「これで驚くなよ。代表の俺と一緒にいることになると、色々危険もあるから、専用の装備を作ってもらう事になるから」

「専用!?」

「ああ、一応俺の付き人だから、護衛も兼ねるんだよな。今は逆だけど、将来的には頑張らないと、他から文句が出る可能性がある」

「……がん、ばります」

「言ってなんだが、そこまで気にしなくてもいいけどな」


強制レベルアップ祭りするし。

さて、あとは指定保護をかけるか。


「最後に、俺達代表や、それなりの地位にいる人はいつでも連絡ができるように、ダンジョンの加護を与えることになっている。その加護で連絡できるコールスキルが手に入る。見たことがあるからわかると思うが」

「はい」

「条件は、加護を受け入れること。心の底からね。今まで何人か弾かれたりしたから、そこら辺は気を付けて」

「だい、じょうぶです」


あっさり、指定保護は効いた。

因みに、はじかれた奴は、厳重に取調べてあっさり横領しようとしていたことがバレた。

実際やっていなかったので、御咎めはないが、こちらを欺こうとした事実は残っているので、重要職への昇格は無し。


「準備は整ったな。歩いていくには遠いから、指輪を使って飛ぶぞ。使い方は行きたい場所を言って『転送』と言う事。とりあえずは『総合庁舎へ転送』っていってくれ」

「はい。総合庁舎へ転送」


言うなり、消えた。

よし、個人認証も上手くいったか。

勿論この手の指輪とか短剣は個人の魔力に合わせて鍵を作っているので、奪われても相手は使用できない。

厳密にいえば魔力と指紋の科学と魔術の合わせ技だから、そうそう使える様にならない。

俺みたいに、どっちの知識も活用していない限り。


俺も追いかけますか。


「あ、よかった」

「ユキ参謀お待ちしておりました」


転送場所の護衛がこちらへ敬礼してくる。

リーアは俺がいつ来るかと心配してたみたいだな。


「お疲れさん。指輪と短剣で重役と言うのはわかるだろうが、紹介しておく。俺専属の付き人リーアだ。色々よろしくしてやってくれ」

「はっ!! リーア様、宜しくお願い致します」

「ひゃ、ひゃい」

「ようやく、護衛を決めたのですね。ユキ参謀の奥様方は皆多忙。我々兵が護衛をしてもプライベートまではできません。どうかユキ参謀をお願いいたします」


そうやって、リーアに転送の護衛兵達が一斉に頭を下げる。

って、おい、俺の護衛問題なんでお前等が知ってるんだよ。


「我々の警護関連で常々問題になっているのです。奥様達は相手を孕ませることなどできませんが、ユキ参謀が変な女にかどわかされないかと、前から相談を受け、どうしようか悩んでいたところです。一つ間違えば、ウィードが混乱の渦中になりますから」

「うおい、まだ何も言ってないぞ」

「では、普段からふらふらするのをやめていただきたい」

「ぐっ」


流石に迷惑をかけておいてふんぞり返る根性はない。


「まあ、参謀が色々我々の為に骨を折ってるのは知っていますからね。こちらも止めにくいんですよ。ですが、奥様達の不安。ウィードの不安定化の可能性。どちらもわかります。だからリーア様、どうかユキ参謀をお願いします」

「はい、任せてください!!」


なんで元気よく返事するかね。

……ん? ちょっとまて、今の話からすると、リーアは四六時中一緒ってことになるのかね?

あれ、リーアを任されたのは勇者の関係でだよな。

勇者を永久護衛兼監視にするつもりじゃねえよな?


まさかな。

そんな無駄使いするわけがない。

……人族の魔王は、特務でのんびりしてるけど、これは無駄遣いじゃねえよな?


「と、話が長引きましたね。魔族の面会の件は第三会議室で行っております。エリス代表とデリーユ特務が対応されています」

「なにか、情報は聞いたか?」

「いえ、まだ聴取を始めたばかりでして」

「そうか、ありがとう。引き続き転送場所の護衛を頼む。各国の王にも報告してるから、集まってくるはずだ、対応を間違えないように」

「はっ!! 参謀もお気をつけて!!」


リーアを引き連れて、会議室へ歩いて行く。

第三会議室前で横の扉へ、入っていく。


「よう」

「これは参謀」

「どうだ?」

「いえ、今はとりあえずお茶を飲んで落ち着いてもらっている所です」


勿論事情聴取してるのだから、マジックミラー完備の場所だ。

監視側に入って聞いてみるが進展なしね。


「と、この子リーアな」

「はい、奥様方から聞きおよんでおります。どうかユキ参謀をよろしくおねがいします」

「はい、任せてください」


なんだ、俺は子供か。


「で、落ち着いてもらってるって言うのは?」

「はい、来た時の状態は息もかなり上がって、体も傷だらけでした。致命傷は無いものの骨折している場所もあり、危ない状態でした」

「は? ちょいまて、その状態で今事情聴取してるのか? 休ませた方がいいだろう?」

「それも、私達も、エリス様、デリーユ様、共に提案しましたが、軽い治療だけして、直ぐに話さないといけない事があると」

「そこまで、重要な案件か」

「本人にとっておそらくそうでしょう。なので、ポーションを混ぜたお茶で回復しながらですね」

「ああ、ルルアやエルジュは出払ってるからな」

「はい、ランクスがガルツ領に侵入したのでしょう? なれば其方の対応の方が先ですね。人命がかかっているならともかく、死ぬ様な傷ではなく、私達で対応できるレベルですから」


因みにエルジュは今回の話を聞いて、病院の勤務体制と医療品の発注に忙しい。

ルルアが外交で出なければいけない分、エルジュの仕事はかなり多い。

このウィードで最大の回復術士は俺を除けばルルアとエルジュだけ。

下手に動けないので、ルルアとエルジュは病院で24時間勤務を交代で勤めている。

指輪の機能で簡単に行き来できるが、本人達はなるべく素早く対応したいといってその体制になっている。

今のところは、重傷者はそうそういないので、病院で仮眠をとれるからお肌の心配はないらしい。

そのせいか知らないが、ルルアは俺に合うと抱き付きたがる癖がある。

他の皆よりは確実に一緒にいる時間は少ないからな。

それを皆もわかっているのか、文句はいわない。

出来た嫁さん達と言うべきか、連携が恐ろしいというべきか。


「それなら、俺が行って治してこよう。リーアはここで留守番な」

「え、でも」

「心配するな。というか、俺がやられるなら、ここはどうにもならん。逃げろ」

「そ、んな」

「はぁー。参謀なにおっそろしい事言ってるんですか。いいですか、リーアさん。あの魔族の方はお話があって来てるのです。害をなすことはほぼありません。というか、力技でどうにかなるなら。お話すらしないでしょう。だから心配はいりません」

「よ、かった」

「あのなー、俺は万が一を思って……」

「それは分かりますが、リーアさんはまだ二日目と聞いています。ユキ参謀の実力もご存じではないのです。怖がらせるような事はやめていただきたい」

「ごめんなさい」


そう言われるとどうしようもない。


「強い、んですか?」

「ええ、ウィードでは最強でしょう。奥様の中で随一と言われるデリーユ特務にも勝ったと聞きます。が、これは内密に。わざと情報を秘匿されているのです。表向きには、強い事は強いですが、中間ということになっております」

「わかり、ました」


なんか、リーアの目がキラキラして、眩しいモノを見るように見つめている。

なにかと勘違いしてないか?

俺はヒーローじゃないからね。

表をほっつき歩きにくくなるから、情報を隠してるのよ?


気になるが、今はそこに時間をかけてるわけにはいかない。

直ぐに会議室に入る。


「お、ユキきたか」

「あ、ユキさん」


デリーユとエリスがこちらに振り返る。

魔族の女性はゆっくりエリスにコップを支えられながら、ポーション入りのお茶を飲んでいる。


「どうだ?」

「どうもこうも、強情な奴じゃよ。死にはしないと言っても、顎にも強烈な一撃をもらっておっての、顎が砕けておる。それでも筆談で治療をそこそこにと言ってきおった」

「そこまで、急ぎか」

「じゃろうな。敵対意思は認められん。エリスもあのように手厚く治療の助けをしておるしのう」

「そうか、なら。エリス少し離れてろ。エクストラヒールをかける」

「はい、お願いします」


エリスが離れると、無詠唱で素早くかける。

普通なら隠すところだが、向こうの急ぎようが気になる。

エクストラヒール特有の派手なエフェクトが入る。

今思ったが、攻撃はともかく、回復にこの演出効果いらなくね。

こんど、エフェクトなくす方法考えよう。


それはともかく、その魔族の女性は体を確かめるように動かす。


「すごい、このレベルのエクストラヒールを無詠唱で……。あ、顎も治ってる」


自分が喋れたことで顎も治った事に気が付いたのか、顔に手を当てて確かめている。


「お体の方に問題はありませんか?」

「あ、はい。完全に治ったようです」

「いえ、流した血は戻りませんし、体力もなくしている。普通ならすぐにご飯を食べて寝てもらう方がいいのですが」

「そんな時間はないのです!!」

「ええ、そのようですね。とりあえず、お茶を飲んでください。聞いたと思いますが、ポーション入りですから、回復もしてくれますし、落ち着いて順序立ててお話していただかないと、私達も混乱します」

「あ、はい」


そういって、大人しく席につく。

こういう時はいくら急ぎであろうが、最初から説明してもらうしかない。

魔物の大群が向かってると言われれば、対応するが、それは外の見張りが勝手に見て報告してくれる。

だから、俺達がするべきは情報を正しく聞いて判断を誤らないためだ。


「とりあえず、急いでほしいのはこのウィードへ、私に暴行を働いた者たちが来ているのです。どうにかして対策をたてていただかなければ、住人に被害が出ます」

「わかりました。デリーユ、連絡を」

「わかった」


と言っても、トーリとリエルに話しているからな。

こっちの話で確定しただけ。


エリスが俺の分のお茶を煎れてくれて、横に座る。

俺はお茶を飲みながら彼女に話の続きをうながす。

まずは自己紹介が必要だな。


「まずは自己紹介からいきましょう。私はこのダンジョンの街、ウィードで軍の参謀を勤めていますユキと申します」

「私は先ほど言いましたが、改めて、このウィードで娯楽区の代表を務めているエリスといいます」

「ご丁寧な挨拶をありがとうございます。私はリリアーナ・レストンといいます」


ん?

リリアーナ・レストン?

なんか聞き覚えがあるぞ?

隣のエリスも首を傾げている。


「ラスト国の、いえわかりませんね。魔族の国で魔王を勤めておりました」



二人して、盛大に噴いた。



大物どころか、ラスボス来ましたよ!?

勇者はどこだ!!


あ、隣の部屋にいたね!!

でも弱いね。


でもさ、この魔王、デリーユより弱いのよ。

エリスでも戦える。


あれ、ふっしぎー!!



俺大混乱。

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