第123掘:やっぱり面倒事はまとめてやってくる
やっぱり面倒事はまとめてやってくる
side:ユキ
世の中ってやっぱりこんなもんだよな。
いや、忙しい時に限ってってあるだろう?
タイキ君こと異世界勇者のランクス問題。
魔王の動向。
そして、純国産の勇者の保護?
OK、わかったお前等示し合わせてるな。
まだよかった、今のままだったら。
でもさー。
「今日からよろしくお願いします」
とリーアがなぜかノリノリで我が家に住むことになり。
『外から報告です。魔族と名乗る女性が面会を求めております』
とウィード外の村警備から連絡。
『あのー、思ったより、馬鹿クソ姫がお冠らしくて、現在すでにガルツ領内ぎりぎりに居ます』
とタイキ君から、騎馬隊だけでの編成と連絡が来た。
だから、頭に来た俺は悪くない。
「セラリア、軍の編成を頼む。迫撃砲で予定交戦地域の準備を開始。ゴブリン2個大隊、オーク1個大隊。装備は4式」
「は?」
「人はセラリアの部下直轄のみ動かして、生存者の救護。敵の総数は5千、キルゾーンで全て片が付く予定だ。残ったのは降伏勧告をして、従わないものは銃撃で手足撃ち抜け。その後捕縛」
「ちょ、ちょっと!?」
「進軍速度が騎馬のみなので異常に早い、直ぐに取り掛かってくれ」
「ええい、もうわかったわよ!!」
よし、これでランクス勢の対応はよし。
タイキ君には迫撃砲は伝えてあるから、勇者パワーで頑張ってもらおう。
もう忙しすぎて口上なんて聞いてやらねー。
「次、エリスは魔族の案内を。多分、話し合いに来たってことだ。情報収集を」
「はい」
「場所は総合庁舎の会議室。あそこならスキル、魔術封じがあるから、物理的な事しかできん。デリーユは護衛を頼む」
「任せておけ」
「トーリにリエル。きっと他に魔族がいるはずだ、そこ掘れわんわんを使って詳細に調べてくれ、そいつらを捕縛して、其方からも情報を聞く。合わせて、戦争が起ころうとしているから、治安が悪化する可能性がある、警察の巡回強化呼びかけを徹底してくれ」
「「わかりました」」
これで、魔族の関連は準備ができ次第向かえばいい。
「ミリー、カヤは住人達にランクスが攻めて来たと報告して、騒ぎ立てないようにしてくれ。隠す事も考えたが、軍の出動だ、隠すにしても無理がある。なら事前に報告しておく。尚、この街に敵が迫った時に徴兵をするから、それまで我慢しててくれと伝えてくれ。尚物資に関しては、貯蓄してある第1倉庫を開放しつかってくれ」
「「了解」」
これで、住人達への対応は良し。
「シェーラ、ルルア、ナールジアさんは、各国へランクス進軍及び、魔族の訪問を通達。直接王族へ伝えるように。三日後から交易の一時停止を宣言。ランクスへの圧力強化を伝えてくれ」
「「「はい」」」
3国への通達はこれでいいか。
あとは各々の判断でどうにかしてくれるだろう。
「アスリン、フィーリアは学校の皆にしばらく先生はこれないって言って宥めてくれ。あと、家の御飯を頼む。これから作れそうにないしな」
「「がんばります!!」」
まったく、久々に一日学校ですごしたと思ったらこれだ。
「ラッツ、ラビリスは総合庁舎で待機、問題が起きたら対応に回れるようにしてくれ。ラッツはさらに、戦争の情報を聞いて物資が変に枯渇する可能性がある。その分をDP貯蓄から補ってくれ、スーパーラッツは通常通り営業すると伝えて住人を安心させてやってくれ。物資の枯渇はないと」
「わかったわ」
「任せてくださいな」
さっさと対応策考えててよかったわ。
下手したらゴダゴダしてた所だ、3つ同時に来るなよな。
「え、え、え? ランクス? 戦争? 魔族? え?」
リーアは予想通り混乱してるな。
まあ、いきなり寛げる場所にきた途端、わけのわからない情報聞かされるんだからな。
実質この旅館がウィードの最高機関でも間違いないわけだが。
「あの、一体、何が?」
そして、俺は何をするのか?
決まっている、残っている問題はリーアの勇者の件。
ここまで聞かれた以上、リーアを放っておくわけにもいかない。
ならば……。
「聞いての通りだ。ランクスが建国祭に大々的にウィードに魔王がいてウィードと手を組んでると吠えた」
「うそ」
「ランクスの本音は戦争する物資が欲しいだけだがな。お蔭で、魔族の密偵がウィードに入り込んでるようだ。帰ったランクスがウィードの利権を欲してここに攻め込んできているというのが現在の状況だな」
「む、ちゃくちゃ」
「ああ、だから俺達はそれに対抗しないといけない。大丈夫、こういう事は考えて色々準備してたからな。そして問題は君だ」
「わ、たし?」
「そう、リーアはここでウィードの機密を知ってしまった事になるんだ」
「え?」
「リーアに何かをしようとは思わないが、外の誰かがリーアに変な価値を見出す可能性がある。だから、俺と嫁さん達は全会一致でリーアを保護したいと思う。どうだろう?」
「な、んで、私を守ってくれるんですか? わ、たしに、時間と、労力を割くのは、非効率です。この、事態なら、とくに」
リーアは、差し伸べられた手を取るのを怖がっているように見える。
彼女が一体どれだけの目にあって、こうなったかもまだ知らない。
なにせ彼女と会ってまだ二日目だ。
お互いわからない事だらけだ。
唯一信じられる点は、俺がウィードの代表という事だろう。
リーアの主人でもあるが、そこは基本無しで。
「まだ来たばかりだからな、そこら辺は分からないと思うが、リーアみたいな人達を守って育んでいくのが、このウィードのあり方なんだ。だから、俺について来いなんて言わない。だけど、ここにいれば安全だから、アスリン達と待っててくれないか?」
「リーアお姉ちゃんも一緒にお留守番ですか?」
「御飯作るんですか?」
二人が小首を傾げながらリーアを見つめる。
リーアもアスリン達を見つめて考えている。
「俺と来ても、問題にさらに突っ込むことになるからな。おすすめはしない。と、そろそろ行くわ。魔族の事情聴取をしないといけないから」
そう言って、俺は玄関へと向かう。
他の嫁さん達はすでに各所に散らばっている。
ランクスの馬鹿姫が戻ったのは祭りの初日。
あれから2週間弱、早馬で連絡入れて、そのまま取って返した感じか。
いい具合に、タイキ君の予定通りだな。
魔族の方は、まさか、会議して一日後に引っかかるとか、馬鹿だろ。
いや、表から堂々と来たのならまた理由が違うか。
「じゃあ、家は頼んだよ」
そう言って、振り返ると、リーアもいそいそと靴を履いていた。
「わた、しも、いきます。また、自分だけ、なにも、しないなんて、できない」
リーアの目にはしっかり力がこもっていた。
いや、俺の目から見ればね。
そんな事わかる程、天才じゃねーし。
「わかった。でも、俺の傍から離れるな。一応リーアは俺の傍付きって事になるから。いいな」
「はい」
さーて、リーアの決心もよくわからんが、これで一緒にいることには問題が無くなったわけだ。
昨日みたいな、焦った攻勢は仕掛けなくていい。
彼女と仲良くなるのは、面倒事を済ませてからにするか。
よし、決めた。
もう決めたぞ。
のんびりさせてくれないなら、一気に来るつもりなら……。
「こっちも畳みかけてやる」
実力でのんびりになってやる。
いいか、特に面倒事もってきたランクス。
予定通りだとはいえ、許さん。
こうやって、ランクスの落日は始まった。
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