第100掘:なんだこれ?
なんだこれ?
side:ユキ
喜ばしい事に、デリーユの家族が生きていた。
しかも俺と同じダンジョンマスターとして。
これならば、協力も得られる。
デリーユと同じぐらい生きているのであれば、それ相応のダンジョンの知識もあるはず。
これはかなり運がいいぞ。
とまあ、そんなわけで、さっさと制圧したダンジョン内に転移トラップをつけ、俺のダンジョンと接続し、デリーユをこっちに連れてきた。
「あ、姉上!!」
「っつ、ライエ……!!」
ひしっと抱き合って涙を流していたのが、つい10分前。
このデリーユの弟のダンジョンマスターはオードックスなダンジョンを作り。
奥には居住用でしっかりした、豪邸みたいな内装にしていた。
まあ、そこら辺はどこも同じか。
しかし、おかしいところが一点。
この状況だ。
「ふむ、リーリと言ったな。其方は何ができる?」
「え、えーと」
現在、デリーユとライエ君を中心にテーブルを囲み、リーリをなぜか質問攻めにしている。
小姑か。
「あ、姉上。リーリはとてもいい子なので……」
「ライエには聞いとらんわい。妾はリーリに聞いておる」
「あ、あの、一応冒険者ランク7です」
なんとか、反応して答える。
おお、冒険者ランク7か凄いじゃないか。
「そんな事は聞いておらん。そも、冒険者などはダンジョンマスターの敵ではないか、なんじゃ、ライエを討伐するつもりじゃったか?」
「そ、そんな事ありません!! 私は情報収集を……」
うんうん、その通り、大事だよな情報収集。
「……というか、デリーユ何が気に食わないんだ?」
「控えなさい!! 貴方が気安く声をかけてよいお方ではないのですよ!!」
すかさず、アンナさんが俺に叱責を飛ばしてくる。
「黙るのはアンナの方じゃよ。ユキは妾の夫じゃ」
「なっ!?」
アンナさんはデリーユの言葉で目を白黒させている。
まあ、ようやく出会えたお姫様が御手付きになってるんだもんな。
「ひ、姫様。も、もしや……」
「うむ、しっかり寝屋も共にしておる。子供も時間の問題じゃ」
「こ、この……!!」
「落ち着けい。好き合っての事じゃ。アンナにあれこれ言われる筋合いはないぞ」
「ぐっ」
デリーユはアンナが何か言いたそうなのをすかさず止める。
まあ、いずれ言わないといけない事だからいいけど、リーリの方はどうなったよ?
「あ、姉上。そこの兄上が言った通り、リーリの何処がいけないのでしょうか?」
「まず弱い。それではライエを守り切れん」
「そ、それは姉上が魔王だったからで!!」
「何いっとるか、妾が来たのはユキ達がここを制圧してからじゃ、ワラワの力は関係ない」
「し、仕方ないでしょう? 兄上たちは異常な戦力でした」
「そりゃ当然じゃろう。妾を無傷で捕縛して、落として見せた男じゃからのう。ま、ユキは殆ど動いてないみたいじゃが」
完全に小姑だなこりゃ。
リーリは目に涙溜めて、今にも泣きだしそうだわ。
セラリアも流石に不憫に思ったのか口をだす。
「デリーユ落ち着きなさい。貴方の弟は自分で好きな人を選んだのよ。アンナさんだって実力不足でしょう? デリーユの不満は、知らない子に弟が取られるのを嫌がってるだけよ」
「ぬっ、ぐぐぐっ」
「リーリさん、涙を拭いてくださいな。うちのデリーユがご迷惑をおかけしました」
ラッツがそう言ってすかさずフォローをする。
「ひぐっ、いいんですか? ライエ様の妻になっても?」
「構わないわよ。寧ろ私達に反対されたからって、嫌いになるのかしら?」
「いいえ!! 嫌いになんてなりません!!」
「ええ、そうよね。私もそうよ。デリーユも夫と離れろなんてできるわけがないわ。ねえデリーユ?」
「当然じゃろう!! 誰が離れてやるものか!!」
「で、リーリにはダメ出しするのかしら?」
「そ、それはのう……」
結局、姉の嫉妬という奴か。
完全に小姑じゃねえか。
「まあ、知らないっていうなら、今から仲良くなればいい。リーリも辛いとは思うが、この頑固者のデリーユをどうか嫌いにならないでくれるか?」
「はい、ライエ様のお姉様のお話はよく伺っています。優しく、聡明な人であったと。今この場でもライエ様を案じる優しさを見せてくれました。私は絶対にデリーユ様に認めてもらえるよう頑張ります!!」
リーリはハキハキとそう答える。
おう、かなりしっかりしてるじゃねぇか。
「気持ちのいい子ね。妻としては相応しいと思うけど? デリーユはどうかしら?」
「……まあ、認めてやらんでもない。でも、まだまだ見るべき点がある」
「……変な所でブラコンね」
「シスコンのセラリアに言われとうないわ」
おう、それに関しては同意だな。
アスリンは喜んでるが、フィーリアは目が回るから、抱っこしてごろごろはやめてほしいだそうだ。
「では、よいのですね姉上!! リーリが側室に入るのは!!」
「……よかろう」
「よかった。リーリよかったわ!!」
「ありがとうございます!! アンナさん!!」
見事な大団円だ。
これから小姑デリーユの苛めはあるだろう。
しかし、この3人ならきっと乗り越えていけるはずだ。
「さて、縁談もまとまったわね」
「いい話じゃないですか」
「そうですね。私と旦那様の時の話は及びませんが」
「……そろそろ帰る?」
「そうだな」
そうやって、俺達は席を立つ。
クアルは一応護衛ということでずっと入口で立ちっぱなしだ。
「みなさんありがとうございました。是非、式の時はお呼びしますので」
「ああ、頼むよ」
皆もそう頷いて、その部屋を……
「でるかーーーーー!!」
「「「!!?」」」
皆驚いている。
おいおい、目的を完全に忘れてねえか。
「おお、ユキは気が付いておったか!!」
「あ、デリーユは分かってたのか」
ふう、流石に全員が流れに乗っていたわけではないらしい。
デリーユもブラコンではあるが、こういう事はしっかりしてるんだな。
「あの女が相応しくないのだろう!!」
ズビシ!!
と、リーリに指をさすデリーユ。
あ、眩暈がした。
こいつはダメだ。
弟と一緒にしてたら思考ができないらしい。
「あほか!! さっさとダンジョンの話すすめるぞ!!」
「「「ああ」」」
駄目だ嫁さん達。
結婚のお話ってそんなに他の事忘れる程楽しい事ですかね!?
「そして、ライエ君!!」
「は、はい!!」
「制御が奪われているんだ。それを忘れてあっさり帰そうとするな」
「あ」
「……とりあえず。君がダンジョンマスターなのは聞いた。こっちも色々目的があって、ダンジョンマスターがいるかもしれないこのダンジョンにきた」
「はい」
「今から、その話をしたいんだが……いいかな?」
「……すいません」
……有益な情報あるよな?
あるよな? だって200年もダンジョンマスターだったんだぜ?
俺の今日の労働時間は無駄じゃないよな。
そう思いつつ、ようやく本題にはいるのであった。
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