第97掘:非常識
非常識
side:クアル
私達は今、ガルツ王国のダンジョンがある町に来ております。
いえ、正確にはダンジョンの中。
47階層といったところです。
と、その前に、この未攻略ダンジョンがある場所になぜ町があるのかを説明いたしましょう。
ご存じのとおり、ダンジョンは天災ともいわれる魔王やドラゴンを超える危険な物なのです。
ですが、なぜそこに町ができるのか?
それは、ある意味守る為でもあるのです。
ダンジョンの対応は国々で違いますが、ことガルツに至ってはダンジョンを収入源として使い、冒険者ギルドと連携し、支部を作り、町を作り、監視と財源確保の為に使っております。
ダンジョンからいつ強力な魔物が湧きだすかが分からないというリスクはありますが、結局すぐに対応できるほうがよいという判断と、国庫を潤すためによいということでこういうダンジョンを中心にした町ができるのです。
あ、私達のダンジョンは論外です。
比較対象にすらなりません。
制御をセラリア様を筆頭に代表の方々が完全に握っているのですから。
因みにリテアは冒険者ギルドの総本山がありますので、それをたよりガルツと同じように町でダンジョンを囲み、冒険者や騎士で完全に監視する方法を取っております。
我らロシュールはダンジョンが少なく、ここ数十年でできたダンジョンが3つ、近いもので8年前です。
ですので、近場の町や村に冒険者支部と騎士団の施設を作り監視しております。
昔はロシュールは全くダンジョンが無かったのです。
ある意味財源ができていますので、ロシュールの国庫にはありがたいですが、その分危険も増していますので、色々悩ましい所です。
「なにボーっとしてるのよ? クアル、しっかりしなさい。一応警護役でしょ」
「あ、ああ。すいません」
私が、ちょっとダンジョンの歴史を振り返り、物思いにふけっている所を私の警護対象のセラリア様がオーガシュナイドを斬り捨ててこちらに来ます。
オーガシュナイド、オーガの中でも比較的強いと分類される種族です。
本来であれば、LV50…つまり、軍団を率いることのできる将軍クラスが数人でやっとの魔物なのですが……。
「ふむふむ、ここらへんでようやく、一撃で倒れなくなってきましたね」
「…うん。もうちょっと手こずると思ってたのに」
「そうですねー。後衛職の私でもちょいちょいですからね」
……最初がラッツ様。槍を使う冒険者だったとの事ですが、偽物の体でなんなくオーガたちを屠っていきます。
……次にカヤ様。彼女は村の自警団で頑張っていたらしいのですが、こっちも問題なく、剣と魔術を使って簡単に敵を屠ります。
……最後にルルア様。元リテアの聖女様でセラリア様程ではないとはいえ、高レベルではあったはずですが…それでもオーガを杖で撲殺するなんてのは酷いです。
『ユキ様!? ご無事ですか!? オーガシュナイドが映った気がするのですが!!』
「ああ、大丈夫。セラリア達が一掃したよ」
『何かいい金属とかでましたか?』
「あー、そうだな。なんかオリハルコンとかでてきたぞ」
『おー、それはそれは。DPで呼び出そうにも価格が高いですし、呼べない価格でもないですけど、無暗に呼べば価格破壊しますからね。そこで集めてくれません?』
「そうだな、ここから得たってことで少量づつ仕入れてみるか?」
『あー、ありですね。これから鍛冶の輸出も始まりますし、DPで幾らでも代用できるとはいえ、安易にやっては他所の採掘場を枯渇させますからね』
「そうですね。あくまでも私達ダンジョンは品物の完成品の輸出でいかないと、他から輸入して買わないのはそれはそれで問題ですからね~」
……そしてこのダンジョンの奥深くで今後の政策を考えているのは、セラリア様の夫、ユキ様。
本人は一切戦っていませんが、実力はセラリア様が絶賛するほどの人物。
私もユキ様の実力は存じていますが、このダンジョン奥深くでのんびり会話する根性は私にはありません。
『しかし、口惜しいです!! 私もユキ様について行きたかった!!』
『まーまー、シェーラ様はユキさん達との連絡役もありますし…』
『ナールジアさんがやってください~!! なんで妻である私が離れ離れに……』
『そう言われましても、シェーラ様が一番適任だとユキさんも仰っていたじゃないですか』
『うう~!!』
というわけで、シェーラ様はガルツの動向を知る為にお留守番。
まあ、元、いえ現在もガルツの王族であるのには変わりないので、一番適任なのです。
あとは、ナールジア様。
ナールジア様はガルツの武具に興味があるようで、王都に残り、一応視察にでた私達の代わりの居残り組です。
ロックさんは現在王都ギルドで会談中。
「ごめんなシェーラ。お土産買って帰るからさ。少し我慢してくれ、な?」
『……お土産よりも、熱い抱擁と眠らない夜が欲しいです』
……ここ最近頭桃色な話ばかりでてます。
セラリア様も普通にこんなこと言いますからね。
世の中わからない物です。
「しかし、セラリア様。まだ進むのですか? もう47階ですよ? ギルドの報告では34階が最高との事です。これ以上は危険だと思いますが……」
私はそう言って、これ以上のダンジョン探索を止めようとする。
そう、情報通りだと、もうギルドの所持している情報を大きく超えた階層まで潜っている。
本来ダンジョン攻略は一階一階をじっくり攻略していくものです。
一階層深く潜れば、その分魔物も強力になり、罠も凶悪になります。
例え、その階層の魔物を簡単に一掃できたとしても、次が大丈夫だとは限らないのです。
「そもそも…5時間で47階層ってのがおかしいんです!! オーバーワークです!! 真面目に戻るべきです!!」
そう……47階層を僅か5時間…。
一階層に約7分ちょいです。
馬鹿です。
あり得ない速度です。
「んー、それもそうね。ねえあなた? 5時間も潜りっぱなしなのは流石にアレだとおもうわ?」
「ああ、それもそうだな~。普通ならハイペースだよな」
ハイペースどころじゃないですよ!!
「どうなの? あなたが言ってたことは?」
「んー半々って所かな」
「おや、半々もできたんですか?」
「…ということは」
「おう、今まで降りてきた階層の掌握は済んだ。…なんと言うかモノ○リーなんだよな……より多くのDPをつぎ込めば階層を掌握、上層部に置いたダンジョンコアを起点に、他のダンジョンを掌握できるなんてな」
そう、ユキ様はこのダンジョンを掌握しながら進んできているのだ……。
ここに他のダンジョンマスターがいるのなら今頃泣いているのではないでしょうか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます