第96掘:大臣達の反応と暇つぶし

大臣達の反応と暇つぶし



side:セラリア



『そんなのはみとめられません!!』

『その通りです!! 王よお気を確かに!!』


くくっ、シェーラを今回の大臣達への説明会に行かせたかいがある。

現在、ガルツ王とその息子たちは、大臣達への我がダンジョンへの交流、交易…、そしてガルツ王都地下のダンジョン建設。


ま、どれが一番揉めているかといえば「王都地下のダンジョン建設」だ。

当然と言えば当然ね。

得体がしれない物を王都地下に置くなんて普通はあり得ないわ。

そこら辺も色々今朝話あっているから想定済みではあるのだけど……。


『セラリア様の治めるダンジョンとの交流、交易は御止めいたしません。寧ろ、見せていただいた交易品は素晴らし物です。縁ができるのはこちらも賛成です』

『ならば……』

『ですが、王都の地下にダンジョンを作るなど、喉元のナイフを突き付けられているようなものです!! 安全やその他諸々の観点から賛成できませぬ!!』


予想通りの答えね。

ガルツ王や、王子、王女の話から、大臣達の謀反や敵意は目に留まる程でもない。

寧ろ、忠誠心厚いそうだ。


……ったく、ロワールのクソ野郎め。


そういう情報から、予想される反応を纏めていたのだ。


「ふふっ、何というか手の平ね」

『ええ、流石ユキ様ですわ』


そう、このダンジョンを王都地下反対を一番最初に読んだのは我が夫。


「次は、ダンジョンを何処ならいいかという話になるわね」

「さて、私の隣町が当たるといいですが」

「どうですかね? リリーシュ、リテア教会下を押しますが」


現在私達の部屋に集まって、全員でのんびりしながらコールの状況を聞いている。

結局、夫のダンジョン敷設の場所を当てるゲームになっている。


『では、ダンジョンの敷設を王都以外でなら問題はないというのだな?』

『はい。王や王子、王女様方のお話は信用できますし、現物という交易品もあります。他の皆もこれで安心するのではないのでしょうか?』


一人の大臣があたりを見回す。

視線の先の大臣達はうんうんと頷く。


『ふむ、その件は理解した。して、どこが良いのか? こればかりは、わし一人の判断とはいかぬ。が、時間をかけて会議を長々としてるわけにもいかん。セラリア殿達は各国に直通の通路を作る予定で、そこまでガルツにとどまってはおれん』

『父の、王の言う通りです。王都の下が反対という意見は大臣達の不安もわかりますし、否はありません。しかし、すでにリテアは聖都の大聖堂地下、ロシュール王都にもダンジョンは配備済。この事を考えて、王都とはいかなくても、なるべく近くに置かなければ、交易品の安全確保の面、情報の速さなどで各国に劣ることになることを踏まえて、考えていただきたい。安全が分かったからといって、セラリア殿にまた御足労を願い、ダンジョンをまた作ってほしい……そんな我儘は通らないでしょう』


ティークが今回の判断で、異論が出ないように釘を刺す。

簡単に設置はできるのだが、そう簡単にホイホイ作っては、軽んじられるし、私も面倒だわ。


『セラリア殿の滞在期間はあと5日だ。それまでに、決めておかねばならん』

『5日ですか……』

『先ほども言ったが、セラリア殿達は冒険者ギルドのガルツ支部にも用事があるのでな、実際動ける時間はもっと少ないと思った方がよかろう』


そうやって、何処にダンジョンを作るかの会議が始まる。

これはすぐに決まるわけでもないし、見る意味はないわね。


「やっぱり、今日は決まりませんか」

「まあ、そうですよね」

『じっくり考えたいですからね。誰の予想が当たるかは、結果をお楽しみにということで……と、私は会議を抜けて、其方に戻りますね』

「ええ、シェーラありがとう」


そう言って、シェーラとのコールが切れる。


「さて、あとはガルツの答えが出るまではのんびりだな。といってもギルドの件や、市場調査とか、シャール王女を通じて、交易品の話も進めていかないといけないんだがな」


ユキは転がっていたベットから起き上がって、こちらに歩いてくる。


「そうね。でも、ガルツ王や王子たちが、私達の狙いに気が付いてるとは思わなかったわ」

「別に俺でも思いつくんだから、誰が思いついてもおかしくねーよ。寧ろ説明が省けて楽じゃねーか」


そう、ダンジョンという情報網、通路、での戦争の鎮静化が目的と、ガルツの王族は最初の会談で答えにたどり着いた。

そして、今回のガルツへの個人的な交流はダンジョンの独立支援だと、あっさり言い当てた。

ま、私はそんな事で動揺はしないのだが、カヤは目を丸くしていた。

カヤは少し、そういう練習をしないと情報がばれそうね。


「俺も話は聞いたが、ダンジョンを戦争沈静化に使うとはな…。冒険者ギルドとしては支援する話になっているが、まあ凄いよな。グランドマスターも諸手を上げて応援してるし。と、冒険者ギルドの件は俺に任せとけ、今日にでも行ってさっさと話し通してくるわ」

「おう、たのむわ。……と、まってくれ」


ロックはそのまま部屋を出ようとしたのを、夫が止める。


「なんだ?」

「暇つぶしになるような事はなにか思いつくか? ここには足を運んだことがあるんだろう?」

「暇つぶしねー。というか、ユキは一応大事な客人だろ? 城で大人しくしてるほうがいいんじゃねえか? ほれ、シェーラ様と何か約束してたじゃねーか」

「そりゃ、丸5日も使うことじゃねーよ。城で大人しくしてるのも却下だ。……そうだな、近場にダンジョンはないのか? 他のダンジョンは見てみたい気がする」

「あら、それはいいわね。車もあるし、大抵の場所なら日帰りができるわね」


私は夫の意見に思い切り賛成。

だって体は偽物だし、それでも強いし、退屈もつぶせるし、他のダンジョンなんて興味あるわ。


「おいおい、攻略する気か? 万が一そこに他のダンジョンマスターがいればまずいんじゃないか?」

「それも目的だよ。他のダンジョンに潜って、ダンジョンマスターを探したいし、敵対しないなら関係を持ちたいだろ? セラリアが万が一死亡すれば、制御が怪しくなるんだ。次善策はラビリスに全権委譲だが、他があればなおいいだろう?」

「まあ…な。しかしなー、近場ねぇ。車の移動距離考えれば、2か所ぐらいダンジョンがあるぞ」

「なんだ、ダンジョンって結構点在するのか?」

「いんや、このガルツの国土はもともと、ダンジョンが多いんだ。というより、ダンジョンの仕組みを考えると、この土地にダンジョンマスターがいたんだろうな、国内には7か所はダンジョンがあるしな」

「そうね。ロシュールは精々3か所よ」

「リテアは5か所ですが、全て攻略済みですね。ダンジョンコアを奪取してるのは3か所ですが」

「そりゃ、グランドマスターのおひざ元だからな。リテアのダンジョンは階層詳細、魔物の分布まで全て情報収集が完了している」


確かに、ダンジョンの数を考えると、夫がこの大陸に来る以前からあるのだから、ガルツにダンジョンマスターがいる可能性が高いわね。


「俺達がいける2か所のダンジョンの情報は知ってるか?」

「そりゃ、ガルツの町のギルドマスターだったからな。そこら辺は……」

「ロック教えてくれないかしら?」

「……おいおい、セラリア様までいくつもりですか?」

「無論、夫だけ面白そうな事はさせないわ」

「あれだ、用事で出るって言えば問題ないだろ。で、ダンジョンの情報は?」

「こりゃ、止めても無駄だな。簡単に言うぞ、攻略済みと未攻略が…」


「「「未攻略で」」」



さて、私達の滞在期間の暇つぶしは出来たようね。



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