落とし穴12掘:夏の日に

夏の日に



side:トーリ



「……暑い」

「あついね~。なんでわざわざ、ダンジョンまで外の気候に合わせてるんだか…」

「……あまり、クーラーとか、ダンジョンの快適空間になれると、外での生活に支障をきたすっていってたわ」

「わかってるけど……。外回りの僕達はつらいよ…、トーリ見てよ耳が垂れてる……」

「…大丈夫ですよ」

「うそだー」


そんな事をしながら、ダンジョンの警備として住宅街を歩いてるのですが……。

リエルの言う通り暑いです。

この大陸には四季があります。

ユキさんの住んでいたところにも四季があったようで、混乱なくいるようです。

まあ、大陸の北端、南端近くは、気候が一定した地域もありますが…。


と、話がずれましたが、このダンジョンはユキさんの意向で外の気候…温度に合わせています。

理由はカヤが言った通り、ダンジョンの施設内はエアコンがあるので、空調は完璧に整えてあります。

それで、子供達とかが特に外に出たがらないようになっているのです。

というか、大人たちも、用事がなければ室内にこもりきりなので、全体的に、夜以外のエアコン禁止令がでています。

ユキさんが言ったように、室内で快適な温度で過ごしていて、体力が落ちている自覚も多々あったようで、この禁止令に反発はでていません。

まあ、喫茶店や飲食店、その他快適に過ごすための場所にはエアコンが付いていますが。

むろん、病院とか、仕事場で必要以上に暑くなる鍛冶場にもエアコンがあります。

しかし、鍛冶場に至っては、ナールジアさんとドワーフの大旦那さんが「「生ぬるい、エアコンでのんびり槌を奮うこたぁ許さん!!」」と鍛冶魂でほとんど使わせてもらってないらしいとか…可哀想に。


「ねぇ、トーリ。僕達は書類整理で部屋に籠ろうよ…。仕事場のエアコンはOKだしさー」

「だめ、私達がそんな事したら、部下に示しがつかないよ」

「……リエル。私と一緒に農地開拓してみる? 暑さになれる」

「いやー」


今日は珍しく、この3人で見回りをしています。

ですが、この暑さでリエルは少し疲れているようです。

私も多少きつくはありますが、この時期はこんなものなので、あまりですね。

カヤも農業関連で日々外回りですからあまり気になっていないようです。


「そうだ、アイスでも買って休憩する?」

「うん!!」

「…現金」

「仕方ないじゃん!!」



ということで、住宅街、最大の商店スーパーラッツへ。

ここ最近の人口の増加で、スーパーラッツ2号店・3号店と増えています。

まあ、一店舗で1万人強を人達に商品を販売するのは大変ですからね。

いくら、多少家族がいるとはいえ、半数以上は一人暮らし。

5000人は下手したら毎日買い物に来るわけです。

3店舗でようやく一店舗1800人程度になるわけです。

ラッツは当初余りの忙しさに、倒れてしまいそうだったのですが、ユキさんや、最初からいた店員さんの協力の元、無事に今にこぎつけました。

今ではその店員さん達が、各店舗の店長や、副店長を務めて、ラッツは在庫管理や、商品受注など完全に裏方に回っています。

簡単そうにみえますが、かなりのデスクワークなので、それはそれで辛いんです。


「おや、3人一緒とは珍しい」


ラッツは店舗に入ると、入口でなにか作業をしていました。


「やっほー」

「…暑いからアイス買いに来た」

「というわけです」

「あー、なるほど。外回りは大変ですね」


ラッツは作業を他の店員に任せこちらに寄ってきます。


「いいの?」

「まあ、大した作業でもないですし。代表で少し会議と行きましょう。アイスでも食べながらね」


そうやってラッツを先頭にアイス売り場へ向かいます。


「でもさ、スーパーの中は涼しいよねー。はー癒される」

「…うん、涼しい」

「そうだね」

「そうですね~。お客さんは涼しいかもしれないですが、働いてるこっちは極端なんですよね」

「どういう事?」

「いや、じっとレジにいる店員は動かないので、余程の買い物量のお客さんじゃないと寒いので長袖です」

「あ、ほんとだ」

「でも、品出しとかで、倉庫から出入りしてる人はかなり動き回って外に出たりもしますから、汗だくになったりもします」

「…お店もお店で大変」

「そういう事ですね」


そんな事を言いつつ、冷蔵庫の中のアイスを漁る。


「ねえ、どれがおすすめ?」

「何言ってるんですか、いつもブラックモンブラ○買っていくのに?」

「いやさ、たまには他のもいいかなーって」


そうやってリエルがラッツにおすすめアイスを聞いているとカヤがずいっとある物を渡します。


「…雪見だいふ○」

「それも美味しいね。トーリどう?」

「うーん、それはこの前食べたしな~」


リエルは結構スーパーに足を運んでは自室の冷蔵庫に色々お菓子やアイスをストックしている。


「そうですね~。それなら小豆○ーとかどうですか?」

「なにそれ?」

「昨日仕入れたんですよ。ほらお餅の中の餡子って知ってますよね」

「うん、甘いよね~」

「その餡子を凍らせてバーにした奴です。無論小豆だけではなく、バニラアイスベースですが、ほらこんな感じで」

「へー、綺麗な色のアイスだね。僕これにするよ」

「まいどあり」


私達もさっさとアイスを選んで支払いをして、店舗の店長室に行きます。


「ふわー、甘い!! でも小豆の甘さだ、なんていうか、お茶が欲しい!!」

「はいはい、どうぞ」

「ありがとうラッツ」


ラッツは甲斐甲斐しくリエルの世話をします。


「…雪見だいふ○は相変わらず美味しい」


カヤはパクパクと上品に雪見だいふ○を食べています。


「しかし、トーリはバニラの棒アイスなんですね」

「これ、すきなんです」


白くて甘い棒を口の中に入れて、ペロペロする。


「うん、美味しい」

「定番の安定って所ですね」


そういってラッツは、カップアイスの蓋をあけて食べ始める。


「あれ、ラッツそのアイスお店に出てなかったよね?」

「おや、気が付きましたか。これはナールジアの希望の品ですよ」

「ああ、またハーゲンダッ○の新作?」

「ですね。抹茶です」

「好きだね~。ナールジアさんも」


ナールジアさんもアイスが大好き…いえ大好きすぎて、アイス専用の冷凍庫が自室に置いてありました。

ハーゲンダッ○の今店舗で売っている全種類3個づつストックして……。


「でもさー、ハーゲンダッ○って高いじゃん? そんなの沢山仕入れて売れるの?」


リエルが小豆○ーを食べながらラッツに聞きます。


「高いと言っても、2倍程度ですからね。2銅貨が4銅貨ぐらいの物です。普通に収入が安定しているここの住人なら、毎日食べてもさほど懐は痛まないですからね。実際売れ行きはいいですよ」

「へぇ、そうなんだ」

「これだけ種類があって、普通のアイスよりも味わい深いですからね。何というか、固定の客がいます。ハーゲンダッ○しか食べないという」

「ナールジアさんみたいな人がいるんだ」

「ええ、でも少し贅沢をってことで買っていく人も多いですからね。賞味期限もアイスはあって無いようなものですから」


なんとなくわかるかな。

ハーゲンダッ○は確かに美味しい。

でも、私はたまに甘い物をたべるタイプなので、あんまりね。


「そういえば、皆の好きなアイスは聞いた事なかったね」

「あ、ほんとだ。今日僕達で皆にきいてみようよ」

「…面白い。きっと雪見だいふ○が一番人気」

「ほほう。それは面白そうですね」


そうやって、食べ終わって少し雑談をする。


「さて、皆とその話をする前に、ちゃんとお仕事終わらせようね」

「えっ? 今日はこのまま終わりじゃないの?」

「…サボりはダメ」

「はいはい、頑張ってください。また家で」


リエルを引きずって、店舗の裏口から出ていく。


「いやだぁぁあぁぁあ!! 暑いよーーー!!」



さあ、お仕事お仕事。

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