第95掘:重鎮達への対策
重鎮達への対策
side:ティーク ガルツ第一王子
大まかな方針は決まった。
だが、まだこれだけでは重鎮、我が国を支えてくれる臣下たちを納得させることはできないだろう。
私達がセラリア殿を信じただけであって、彼女以外の何者かが、要らぬ事を考えていないとは言い切れない。
いや、それはこの国も同じか。
しかし、どうしても不安は出る。
その不安を抑える為、なんとか好条件を取り付けたり、有利な状況でやらないと臣下の不安や不満がたまる。
そもそも、ヒギルの言う通りであれば、断るのは得策ではない。
本当にガルツが諸国から置いて行かれる。
悪意があるのならば、それを飲み込んで対処する必要があるだろう。
「さて、前向きにセラリア殿の提案を受けるとして、それでも反発は出てこよう」
「はい、得体のしれないダンジョンをこの王都の下に作るというのです。確実に反対派がでてきます」
「当然ですわね。しかし、リテア、冒険者ギルドからの公認。これで押し通せるのでは?」
「押し通すことは可能です。ですが、それでは要らぬ反発を生み、後々に問題になっては困ると思いますが?」
「そうじゃのう。そこら辺も抑えられるように希望を聞いてみるか。それをセラリア殿と相談して、すり合わせていくしかないのう」
「それが一番妥当ですね」
やはりこういう事になるか。
どうやっても反発はでる。
それを限りなく少なくするため、反対派の意見を取りこみ、安定化を図る。
「しかし、万が一よからぬ事を考えているとしたらどうしますか?」
私は失礼と思いながらも、最大の不安を言う。
「ふむ。それを排除して考えるのは得策ではない……が」
「兄さん。セラリア殿、それに連なるダンジョンを制御できる人物が悪意も持っているのであれば、どうしようもありません。というか、話し合う意味すらありません。見たでしょう? あのドッペルゲンガーを。区別のつかない偽物を。本気になればいつでもガルツなど潰せるし、成り代われるのです」
「それは分かっている。だが他の要因も考えなくてはいけないということだ。例えば、我が国とダンジョンの友好を望まない者の工作など」
「……なるほど。間違っても敵に回したくない相手を第三者のせいで敵に回すことになるのは避けないといけませんね」
そう、まかり間違っても決してセラリア殿が治めるダンジョンと敵対することは避けたい。
しかし、友好を快く思わない者は必ず出てくる。
それは、必ずダンジョンと我が国の友好を切り裂いてくるはずだ。
それだけは、何としても阻止しなければならない。
「うむ。その所もしっかりと、セラリア殿と話し合う必要があるな」
「はい、では今決まったことを、セラリア殿と話して、了承をもらい。重鎮達に話して説得という流れがよいかと」
「ですね。一度セラリア様に話しを通しておいた方がやりやすいでしょう」
「では、明日改めて。セラリア殿と会談を行おう」
「「「はっ」」」
side:セラリア
「どうなると思うかしら?」
私達はあてがわれた部屋に戻り、コールで全員と会議をしている。
私達に卓上など不要。
この連絡機能がどれほど便利か、ガルツの面々には教えてないが、これを聞けば驚くだろう。
『そうですね。得体がしれませんから、信頼は出来ても、周り…臣下を抑える為に、色々条件を付けてくるのではないでしょうか?』
「そうですね。私もお父様やお兄様はそう考えると思います」
「ですね。リテアの時と違って完全に最初から交渉ですからね。向こうの要求も当然でてくると思います」
シェーラやルルアも同じ意見か……。
「あなたはどう思うかしら?」
私が一番に信頼している我が夫、そして私が知りうる限り最高の頭脳の持ち主。(乙女補正)
「そうだな。概ね皆と同じ意見だ」
「概ね、ね? あなたが差異があると思うところは何処かしら?」
「うーん、下手したら俺達がガルツの臣下の前に出されるかもしれないな」
「それは当然だと思うけど?」
「いや、俺達全員な」
「……ああ、そういう事」
なるほどね。
そうなれば、色々面倒な事が起こりそうね。
「あの、申し訳ありません。我が臣下達の前に出るのがなにか問題でも?」
「いえ、それ自体は問題ではないわ。だけど、万が一反対派が私達を魔物として襲い掛かってきた場合、私達はどう対応しようかしら?」
「そ、それは!?」
あらあら、シェーラが目を白黒させている。
『それは、私達が偽物とはいえやられる筋合いはないですからね』
『…抵抗する。というか殲滅する』
『ですね。私はカヤ様に同意です。いくら偽物とはいえ本人と違いない使者です。それに危害を加えるなど、斬って当然かと』
『ま、俺も死にたかねーからな。伊達にギルドマスターやってねえよ。自分の身ぐらい守ってみせる』
「ですね。旦那様に偽物とはいえ危害を加えるなら、全力でお相手しましょう」
「そこは当然ね。夫や私達に危害を加えるなら手加減なんてしないわ」
「私も、襲われるのは嫌ですからね。妖精族の力をお見せしましょう」
全員が迎撃に賛成する。
当然よね。
「いや、そこじゃねーよ。身を守るのは当然として、そんな事があればガルツとの交渉をどうするかだ。継続するのか? 帰るのか? それとも因縁…でもないか、丁度いいからケンカ吹っかけるか?」
ああ、そっちね。
でも……どうしようかしら?
『あー、私は帰る方向で。ま、脅しですね。諸国に今回の対応を喧伝すると』
『…私も帰るに一票。皆を守るのが私の仕事』
『私も帰るに賛成ですね。護衛としては、そんな事態が起きた国には居たくありません』
『うーん、ガルツのギルドにも用事があるから帰るのは無しで交渉を継続してほしいんだが』
ラッツ、カヤ、クアルは帰るか。
ロックはギルド関連で用事か、これはこれで当然か。
「あ、あの、私は…そんな事は起こるとは思えないのですが……。その時は、どうにか交渉を継続していただきたく思います!!」
「そうですね。リテアもあんな事をして尚、交渉していただきましたし、どうか継続を」
「私は……助けていただきましたし、ガルツもその程度の荒事で見捨てては欲しくないですね」
シェーラは当然として、ルルアも継続に賛成か。
ナールジアも継続と。
「あなたは?」
「俺が意見を言えば、嫁さん達が一気に意見を変えそうだからノーコメント」
「それもそうね」
私もユキが意見を言えばなにか深い理由があるとおもって、ユキに傾くわね。
「と、セラリアで引き分け、会議延長、継続勝利かわかれるが、どうする?」
「そうね……」
私達の目的は、ガルツからのダンジョン独立支援。
それが無いと色々面倒な事になる。
被害が少ないと分かっているし、帰る選択肢は余り美味しくないわね。
「私は交渉継続に一票ね。でも、そんな事態が起これば、それなりに強気で押し込んでいくわよ?」
「は、はい!! 当然です!!」
シェーラとしては、あまり心臓に良くない話だからね。
今日はこの辺で終わって明日の対応をみますか。
「さて、詳しい話は明日にでもしましょう。今日は疲れているし、もう寝ましょうか?」
そういうと皆から同意の答えが返ってきて、そのままコールを切って、私達は夫を抱き枕にベットへ沈み込んだ。
さあ、ガルツはどうするつもりかしら?
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